歯が燃えるように痛い。
これが虫歯というヤツかと気づくまで時間がかかったのは、初めての虫歯だったからだ。
大人になってから初めて歯医者に行く緊張。
皆はとっくに歯医者デビューしているのに、
私はかなり遅れてデビューしたものだから、
何もかもが初めて見るものなのです。
歯医者デビューから2回目の話。
今日は治療ということで、
緊張しつつ待合室にいたら、
治療室から女の子が出てきました。
小学生くらいの女の子です。
私より随分と早くデビューしたわけです。
女の子と目が合いました。
「あら、見ない顔ね。新人さん?」
とは言いませんでしたが、
そんな風に見下されたんじゃないかと
悔しさを感じている時に、
「宗理さん、どうぞぉ」と
歯科衛生士の女性がにこやかな笑顔で私の名を呼び、
学校や就職の面接前と同じ緊張感で治療室に入りました。
「そちらのお席へどうぞぉ」
と指定された席に座って、
私は違和感を覚えた。
席の前にモニターがある。
全席、椅子の前にモニターが設置されているのだが、
私のモニターだけ映像が流れていたのだ。
その映像が歯医者とはまったく関係ない
アニメだった。
しかもそのアニメ、
アイドルのアニメで5、6人の美少女たちが
舞台で踊りながら歌っているものだった。
ライブはものすごく盛り上がっている。
観客がサイリウム振りまくりだ。
なぜ俺にこんなものを用意した?
この歯科衛生士の女、2回目で俺をそういうタイプだと判断したのか?
目のやりどころに困り、
正面では美少女アイドルアニメが流れているのに
視線をはずしている方がかえって不自然な感じもするし、
「別に美少女アニメ興味ねぇし」的に強がるオタクとも思われたくないので、
仕方なく、無表情でながめていた。
長い。いつまで待たせるんだ先生。
こっちは2曲目に入ってるぞ。
そんな時だ。
「○○さん、どうぞぉ」
という別の歯科衛生士の女性の声。
呼ばれて入ってきたのは20代男性だ。
男性はすぐさま私を「2度見」した。
あからさまに「なにこの人・・・」って顔で
俺を「2度見」したのだ。
2度見される屈辱。
俺が見たくて見てると思うか?
という視線を向けたが、ますますヤバいヤツだと思ったらしく、
彼は私のすぐ隣の席に座って
私と目を合わさぬよう下を向いたままだ。
正面ではアイドルたちが入り乱れて
とびきりのパフォーマンスを繰り広げている。
やめてくれ、そんなパフォーマンスやめてくれ!
そんなメンバーそれぞれの笑顔のアップはやめろ!
その演出が一番恥ずかしい!
奥の部屋から先生が出てきた。
私の横に腰かけると、
「こんにちはぁ、あ、モニター消しますねぇ」
と、やっとはずかしめから解放されると思ったら
「消していいですか?」
と俺に対して再確認。
「はい」とは言ったものの、2回聞くか?
消していいに決まってるだろ。
隣の客は会話だけ聞いたら
(1回目拒否したのかよ、コイツものすげぇカブリ付きじゃん)って思うだろうが。
治療されながらずっと考えていたのだが、
俺が治療室に入る前に、女の子が出ていった。
おそらく、あの女の子が見ていたに違いない。
俺はその続きを見せられていたのだ。
そんな分析どうでもいい。
何のフォローもなく終えて、
俺は隣の客に、歯医者でアイドルアニメをかじりついて見ていたヤツのままだ。
ちくしょう。
隣の男のモニターにはプリキュアを流してくれ。