岐路に立つ日本 進路を問う
分断深まる国際社会
排外的な勢力に屈せず、欧州などと連携強化を/東京大学大学院 遠藤乾教授
2025/08/28 1面
ポピュリズムの台頭や進む社会の分断、インフレ時代への突入など国内外で変革期を迎える中、国民の安全・安心を守り、平和な社会の構築を進めるには、どうあるべきか。岐路に立つ日本が進むべき針路を識者に聞いた。(随時掲載)
――現下の国際情勢をどう見るか。
遠藤乾・東京大学大学院教授 ロシアのウクライナ侵攻やガザでの紛争に象徴されるように「法の支配」や「自由で開かれた国際秩序」がなし崩しになる中、先進民主国においては国内で反自由主義的な勢力の脅威に晒されるという二つの挑戦を同時に受けている。国内の政治状況は外交政策に連動し、影響を与える。ポピュリズムの波にのまれた英国のEU離脱(ブレグジット)や、米国のトランプ大統領による中東政策などは典型だ。
――ポピュリズム勢力が台頭する背景は。
遠藤 経済と文化の二つの要因があり、経済面では、実質賃金の伸び悩みや雇用の不安定化が進み、親世代のように家の購入や結婚ができなくなっていること。文化面では、身の回りに外国人が増えて「このままでは自分たちの国ではなくなる」という不安があり、人々は焦燥感や、いら立ちを募らせている。
こうした人々が政治エリートや既得権益、既存政党に対する反乱を引き起こし、「上下」の対立を生み出す。西洋諸国では、下の部分が「左右」に分かれ、極右、極左の両方が勢力を伸ばしてきた。こうした「上下」「左右」の力学の中で政党が断片化し、穏健な政党が沈んでいる。安定した政治勢力もつくられにくくなっている。
■下層中産階級に配慮が必要
――こうした傾向に歯止めをかけるには。
遠藤 グローバル化や能力主義が広がり、自分の力で自由に国境を越えて稼ぐことができる人はいいが、例えば、郊外など「そこにとどめ置かれる人たち」がいる。そうした、定職はあって納税はしているが実質賃金が上がらない「ロウアーミドル」(下層中産階級)がポピュリズムの“マグマ”を形成している。
ロウアーミドル層は、税金を納めない貧困層や外国人への支援に自分たちが納めた税金が使われることに不満を持つ。貧困層と外国人だけでなく、ロウアーミドルを加えた三つどもえで政策を講じることが必要だ。
――分断が進む国際社会の中で、日本が取るべき針路は。
遠藤 魔法のような解決策はない。同盟国の米国が不安定な状況にあるからといって、米国との関係を諦めるべきではない。自国のダメージを最小化しながら、日米同盟のクレディビリティ(信頼性)を守りつつ、オーストラリアや欧州、韓国などとの連携を強化し、経済、安全保障の面でリスク分散を図っていくことが求められる。中国とも戦争が起こらないように外交的努力を続けていくべきだ。
針路に迷ったときには原則に立ち戻ることだ。日本の領土・領海・領空を守り、自由と民主主義の価値を維持し、国民の安寧が保たれるように経済を運営して繁栄を築く。原則に根差し、排外的な反自由主義的勢力に屈せず、自分たちの庭を荒れ放題にしないことが大事だ。
