個人の立場で、札幌市内のいくつかの学童保育所の支援に入っている。
市内の学童保育所は、ほとんどが人材不足。
安心安全な放課後の場を作るのが学童保育所の大目的なので、活動の時間は午後2時から午後7時くらいまで。
その中で、一番多いところの子どもの数は、52人。
その中には、発達障がいの特性を持っている子、ダウン症という個性のある子、そして、一人ひとりの個性という多様性が存在している。
それを、1人の正職員所長と、5名のパート支援員が支えている。
学童保育所は、学校のクラスとは違い1年生から6年生までが在籍する。
学校のように、画一的な活動に意義があるのではなく、一人ひとりの多様性を認め、それぞれが、それぞれの気持ちに従って集団で生活をする。
午後4時前後には、手作りの「おやつ」も提供する。
それを、実質5名の大人が支援する。
すでに、崩壊寸前である。
多くの学童保育所は、「共同学童保育所」という、保護者と支援員が一緒に保育の場を作っていくという団体運営の手法をとっている。
この手法は、とても意義深い。
「子どもに楽しい思い出を」という思いで、保護者主催のバザーで資金を集め、先日、子どもたち50人で劇団四季のリトルマーメイドを観劇した学童保育所があり、僕も引率させてもらった。
こういう活動は、予算でかんじがらめになる公的な機関ではできることではなく、身軽に活動ができる民間学童保育所ならではの活動である。
しかし一方で、民間学童保育所は、常に資金面では困難さを抱える。
正職員である所長の給料は、十数万円の固定給。
昇給もなく、ボーナスは年に1回1ヶ月分。
パート職員は、どれだけ経験を積んでも時給900円。
これでは、学童保育所に希望をもって就職したい、と考える人が少ないのも仕方がない。
先々月だったか、北海道新聞に、「地方に配慮し、職員1名体制の学童保育所の運営を認める規制緩和がはじまる」、という記事が載った。
学童保育所が抱える困難さの本質が、全くわかっていない行政の動きに、またまた落胆である。
職員1人体制の学童保育所で、安心安全な放課後の提供ができるのか。
職員1人体制の学童保育所で、子どものための時間を作り出そうという職員の意識が育つと考えているのか。
では一体なにが、学童保育所の困難さの根源なのか。
一体なにが、学童保育所の人材不足の根源なのか。
それは、言うまでもなく安定した財源の確保である。
今の制度は、子ども1人に対して助成金が出る。
そして、それでは補えない部分を、保護者が月々の保育料として支払う。
学童保育所は、この2つの財源で人件費、施設の家賃、消耗品費、おやつの食費、その他活動にかかる費用を賄う。
常にギリギリである。
この仕組を根幹から変えねば、いつまで経っても問題は解決しない。
施設の家賃や活動費は保育料で賄う。
子ども1人に対して算出する助成をやめ、定員数に対して雇用すべき職員の人件費を行政が助成する。
そうすれば、少しは支援員の待遇は良くなり、学童保育所に希望をもって就職する人も増える。
それがダメだというなら、保育料を3倍にしなければ成り立たない。
学童保育所で働く支援員は、お金のためではなく、子どものためという気持ちで仕事をしている人ばかりだ。
しかし、お金がもらえなければ、仕事を続けることもできない。
何かの犠牲の上に成り立つものは、長続きはしない。
子育て環境の確立こそ、もう「何かの犠牲」の上に成り立つ仕組みを変えなければならない。
僕は、9年間、行政にいた。
それも、教育委員会の専門職として、地域全体の教育課程を把握し、その工夫改善のための仕事をしていた。
行政にいるときに、できることがもっとあったのだ。