天皇が列車で国内を移動する場合、現代では電車になってしまい
ましたが、その前は専用の電気機関車が牽引する列車で、その列車を
お召し列車と称しました。

そのお召し専用の電気機関車が登場する前は、蒸気機関車を使用
していたわけですので、各地の機関区毎にお召し列車運転の連絡が
あると、牽引する機関車を選定して入念に整備をしたうえ、用い
られたそうです。その蒸気機関車が最後にお召し列車を牽引した
のが、このC57 117号機です。

お召し牽引機というのは、上記のような経緯を持つため、機関区
のなかでも花形機であり、蒸気機関車の時代が終わろうとするとき
には、真っ先に保存の対象としてリストアップされるものですが、
残念ながら当機は保存されず解体されてしまい、主動輪だけが東京・
祐天寺に保存されています。

C57 117-01.jpg

主動輪とは、C型蒸気機関車では3対ある動輪のうち2番目のもの
であり、シリンダーからの往復運動を主連棒を介して、動力に転換
して回転運動させる重要な役目をもつものです。このある意味で
蒸気機関車の足ともいえる部分が、21世紀となった現在でも
ギアオイルの匂いを漂わせて鋳鉄の存在感を表しています。

C57 117-02.jpg

近づいてボックスのなかを覗き込むと、中子で抜いたボックスと
機械でC面加工を施した輪芯を観察することができます。

このように、本来ならばお召し牽引機として現代なら復元を求める
声すら上がりそうな気さえする当機ですが、廃車解体時に払下げを
求めると既に車籍を抹消した後だからか、当時の鉄材相場×目方と
運搬費用で東京までやってきたとのことでした。

東京にいらっしゃる場合には、静態保存機も結構ですけれども、
手の届く範囲で最高の保存をされている、このような機体にも
ぜひご興味を持っていただけることを期待いたします。

C57 117-03.jpg

感謝!