原題は「悪魔のヴァイオリニスト」。「愛と狂気のヴァイオリニ
スト」という、サブタイトルが付けられている。

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西洋音楽に携わるひとなら、ニコロ・パガニーニの名を知らない
者はいないだろう。その天才ヴァイオリニストを描く作品をドイ
ツで作ったというので、観ようかどうしようか非常に迷った一本
だ。

しかし心配は無用な憂慮に終わる。なにしろヴァイオリンが本職の
デイヴィッド・ギャレットが、パガニーニを研究し編曲し演出まで
手掛けたうえで、情感たっぷりに弾きまくっているからだ。

映画というものは、2時間なり3時間なり時間的条件があるなか
でストーリーを展開しなければならない制約があるわけで、その
制約からくる詰め込みすぎは見られるとして、その無理無理感を
押しのけて説得するに十分なライヴ演奏をみせており、映画だの
演技だの脚本だの演出だのを差し引いて、パガニーニ・ライヴ
として観ても楽しめる。

そういう杞憂を払しょくして楽しめる作品だったし、そのような
映画作品を大変失礼ながらドイツから生まれてきたことに対し、
ステレオタイプな見方をしてはいけないと大いに反省した作品
でもあった。

なにはともあれ、音楽ファンなら全員劇場で観るといいと思う。
それだけで「愛と狂気のヴァイオリニスト」だとかいう、低俗な
売り文句を振り払う大ヒットになるだろう。

内容としてはそれに値する充実度だと思うし、映画会社さんが
大衆受けを狙ったおかしなタイトルをつけることを再考する
きっかけになるといいと思われる。

感謝!