実話の段階から有名だった、オペラ歌手ポール・ポッツの
ストーリー。


ポール・ポッツ/ワン・チャンス

どこにでもいるような、小さいころから冴えない男が、携帯販売
店員となり不遇の日々を送っていて、TV番組での注目からプロ
デビューし成功を掴んでいく話ですが、観るべきはストーリーで
はなく、本作の映画としての品質の高さです。

例えば、LIFE!は典型的なハリウッド作品で、アメリカ特有の
外向的というか、画面としても明るい印象の映像が続くわけですが、
こちらは英国特有の曇り空下から繰り広げられる、内向的というか、
画面が狭くて小さくてほのかに薄暗い印象の映像が続きます。

がしかし、本作はアメリカ人が監督をしており、流れるような画
面割りは見事の一言としか言いようがありません。途中から完全
な典型的イギリス映画だと思って銀幕を眺めていたこちらが、
もちろんいい意味でコテンパンに期待を裏切られました。あっぱ
れです。

映画としては、あるいは脚本としては、いかにも「らしさ」が数
多く散見されるのに、「らしくない」ところは完全に裏側に隠さ
れて姿を表さないのです。これを評して「あっぱれ」以外の言葉
はあるでしょうか。

この抑制の効いた制作ぶりは、おそらくは実話であることと、その
主人公のポール・ポッツ氏が現存の現役歌手であることを差し引
いてなお、尊敬の念があったからであろうと推測します。

久しぶりに、心が洗われるような出来事でした。
素晴らしかったです。

感謝!