1976年のF1グランプリ選手権の物語。


RUSH プライドと友情

1976年と書いてみて気づくのは、かれこれもう40年近くも
前のことになるということです。富士にF1が来るとか来たとか
雨がすごかったとか事故がすごかったとか、私の周囲で騒ぎが
あったことだけはボンヤリと憶えています。

"映画"と同じく現代の視点から看れば、私自身の経験値は当然
当時より上がっているわけですから、なるほど合点がいくストー
リーでもありますし、激しいチャンピオンシップ争いというのは
現代のF1でも同様です。

ただ、F1レースをモチーフとした作品として考えると、他にも
似たような関係というのはあるもので、チャンピオンシップとし
てはレベルが低いもののドライヴァーが事故でなくなっている
ものとしてはジル・ヴィルニューヴとディディエ・ピローニが、
事故としてはレベルがひくいもののチャンピオンシップとして
激しいものにはアラン・プロストとアイルトン・セナの例が容易
に挙がるでしょう。

とはいえ、激しいチャンピオンシップ争いと事故の衝撃と復活
劇としては、このニキ・ラウダとジェームス・ハントの例ほどの
ものは他にありません。約40年前という時代感も、歴史を感じ
させる映画の企画として良かったのだと思います。

本作は、F1ファンを中心に告知が始まった昨年より話題となっ
ていましたので、クルマやレースが好きな方がご覧になってい
らっしゃるかと思いますが、映画のプロモーションで用いられ
ている「あなたの生涯の1本を塗り替える。壮大なヒューマン
ドラマ」という映画ファン視点からみると、それは別の問題
でしょう。

なぜなら、本作の最後に登場するニキ・ラウダのインタビュー
映像のリアリティの方が、それまで2時間に亘った制作された
演技のリアリティを、遥かに凌駕しているからです。

そして、ドラマの一方の主役であるジェームス・ハントが既に
鬼籍に入っていることからすると、この作品はよくできたフィ
クションのドラマであるといえます。

だからこそ、毎年テレビで放映されるF1サーカスのレースより
も、レースらしい映像が楽しい作品でした。

個人的には「やっぱりF1にはマールボロがなくちゃ雰囲気が
出ないね」と感じましたよ。

きっと古くからのレースファンの方は、そういう雰囲気のなかに
男とレースの汗と熱気を感じていただけるのではないかな、と
思います。

感謝!