春は年度切換えの季節です。事業や行政等は本日から
新年度スタートになりますが、2週間ほど前には鉄道の
ダイヤ改正があり、東急東横線の渋谷駅が地下化した
ことはご記憶に新しいと思います。
東横線の地下駅化によって東京メトロの副都心線と相互
乗り入れを行なうようになり、先に相互乗り入れを
行なっていた西武池袋線・東武東上線とも相互乗り入れ
となりましたので、北は森林公園・飯能から、南は元町
中華街まで1本で行かれるようになりました。
運営各鉄道事業者は、この相互乗り入れによる利便性
向上をメリットとしてアピールし、各地方自治体も
相互に観光振興の契機として地域振興に注力することが
アナウンスされ、報道も同じ趣旨で行なわれました。
一方で、春の鉄道ダイヤ改正でおなじみの別れの
儀式として、東横線渋谷駅がターミナルでなくなる
ことへの惜別人気も高まり、地下新駅は乗換面で
利便性が低下するという声もありました。
いざ蓋を開けてみると、東武線森林公園から東横線に
直通する本数はごくわずか、西武線飯能から同じく
東横線に直通する本数も日中毎時に1本で、その他の
終点は池袋止まりです。
一方、南の元町・中華街から北へ直通するのは、
東京メトロ副都心線の終点和光市が大多数となって
いますから、宣伝文句の通りに埼玉から神奈川まで
1本で行かれるというのは、ダイヤベースでみる
限り、1割程度ということになりました。
これの意味することは何を言いたいかと申しますと、
「線から面になったとは言えない」ということです。
鉄道の相互乗り入れは、現代では珍しいことでは
なくなっていますが、実施主体の鉄道会社にとっての
メリットは、双方の路線の利便性が向上することに
よって流動性が向上し、市場規模が拡大することです。
つまり、二本の線が交わることによる面展開が
最大のメリットです。それを今回は5社でやろう
という企画でした。
これを鉄道ダイヤから見ると、中央を担当する東京
メトロの副都心線をいわばハブとして、北や南に
相互運行するエリアを拡大した、というのが実態上の
真実であることが浮き上がってきます。
するとどうなるか?
一般的に、鉄道が開通すると、より大きな起終点が
極としてのパワーを発揮し、経済的な集積が強まり
ます。新幹線を例にたとえれば、東京と他の地域とで
新幹線が開業すれば、人もモノも東京へ集まる作用が
強く働きます。
これを今回の相互乗り入れに当てはめれば、埼玉から
神奈川までといっても、比べてみれば神奈川が極の
パワーを発揮しますので、埼玉から横浜方面へ人と
モノの移動が起こることが予想されます。
そこで、実態はどうだったか?
3月28日に東京メトロが発表した資料によれば、
「池袋、新宿三丁目、明治神宮前の主要3駅の平日の
利用者数が4割増加」「休日では新宿三丁目が8割増、
池袋が6割増、明治神宮前が5割増」となりました。
ここから見えてくるのは、渋谷駅地下化によって
当初唱えられた利便性向上の効果は、渋谷ではなく、
東京メトロの都心各駅だったということです。
間違えてはいけないのは、今回開業したのは渋谷駅で
あって、増加した池袋、新宿三丁目、明治神宮は
従来から西武線・東武線と相互乗り入れしていました
から、今回これらの駅が増加したということは、
これまで渋谷止まりだった東横線利用者が足を
延ばした割合が高いことが推測されます。換言すると、
ダイヤを基準にした極地は、神奈川でも渋谷でも
ありませんでした。
池袋・新宿・渋谷という、かつて新都心と呼ばれた
ターミナルを繋ぐ今回の相互乗り入れでは、渋谷が
一人負けをする結果になりましたが、今回の渋谷駅の
変更は、渋谷駅再開発の一環として今後10年は
続きます。
それでも渋谷を再開発するのは、競合の設定が池袋や
新宿ではなく、これまで青山や六本木の開発に
よって奪われていた人の流れを取り戻すことだから
でしょう。
再開発が終了したときに渋谷の評価を決める要素は、
今般の相互乗り入れで利用者が増加した池袋・新宿・
原宿が強みとした、ファッションやショッピングの
ソフトパワーであることが今後を占う重要な試金石
と言えると思いますし、もしかすると、東京メトロが
鉄道ダイヤを利用して、あえて線から面にしなかった
のかもしれないとも考えられますね。
今後10年間の、渋谷・新宿・池袋、そして青山・
六本木に注目です。
※この記事は、メルマガ記事の加筆・修正版であり、ビジ
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新年度スタートになりますが、2週間ほど前には鉄道の
ダイヤ改正があり、東急東横線の渋谷駅が地下化した
ことはご記憶に新しいと思います。
東横線の地下駅化によって東京メトロの副都心線と相互
乗り入れを行なうようになり、先に相互乗り入れを
行なっていた西武池袋線・東武東上線とも相互乗り入れ
となりましたので、北は森林公園・飯能から、南は元町
中華街まで1本で行かれるようになりました。
運営各鉄道事業者は、この相互乗り入れによる利便性
向上をメリットとしてアピールし、各地方自治体も
相互に観光振興の契機として地域振興に注力することが
アナウンスされ、報道も同じ趣旨で行なわれました。
一方で、春の鉄道ダイヤ改正でおなじみの別れの
儀式として、東横線渋谷駅がターミナルでなくなる
ことへの惜別人気も高まり、地下新駅は乗換面で
利便性が低下するという声もありました。
いざ蓋を開けてみると、東武線森林公園から東横線に
直通する本数はごくわずか、西武線飯能から同じく
東横線に直通する本数も日中毎時に1本で、その他の
終点は池袋止まりです。
一方、南の元町・中華街から北へ直通するのは、
東京メトロ副都心線の終点和光市が大多数となって
いますから、宣伝文句の通りに埼玉から神奈川まで
1本で行かれるというのは、ダイヤベースでみる
限り、1割程度ということになりました。
これの意味することは何を言いたいかと申しますと、
「線から面になったとは言えない」ということです。
鉄道の相互乗り入れは、現代では珍しいことでは
なくなっていますが、実施主体の鉄道会社にとっての
メリットは、双方の路線の利便性が向上することに
よって流動性が向上し、市場規模が拡大することです。
つまり、二本の線が交わることによる面展開が
最大のメリットです。それを今回は5社でやろう
という企画でした。
これを鉄道ダイヤから見ると、中央を担当する東京
メトロの副都心線をいわばハブとして、北や南に
相互運行するエリアを拡大した、というのが実態上の
真実であることが浮き上がってきます。
するとどうなるか?
一般的に、鉄道が開通すると、より大きな起終点が
極としてのパワーを発揮し、経済的な集積が強まり
ます。新幹線を例にたとえれば、東京と他の地域とで
新幹線が開業すれば、人もモノも東京へ集まる作用が
強く働きます。
これを今回の相互乗り入れに当てはめれば、埼玉から
神奈川までといっても、比べてみれば神奈川が極の
パワーを発揮しますので、埼玉から横浜方面へ人と
モノの移動が起こることが予想されます。
そこで、実態はどうだったか?
3月28日に東京メトロが発表した資料によれば、
「池袋、新宿三丁目、明治神宮前の主要3駅の平日の
利用者数が4割増加」「休日では新宿三丁目が8割増、
池袋が6割増、明治神宮前が5割増」となりました。
ここから見えてくるのは、渋谷駅地下化によって
当初唱えられた利便性向上の効果は、渋谷ではなく、
東京メトロの都心各駅だったということです。
間違えてはいけないのは、今回開業したのは渋谷駅で
あって、増加した池袋、新宿三丁目、明治神宮は
従来から西武線・東武線と相互乗り入れしていました
から、今回これらの駅が増加したということは、
これまで渋谷止まりだった東横線利用者が足を
延ばした割合が高いことが推測されます。換言すると、
ダイヤを基準にした極地は、神奈川でも渋谷でも
ありませんでした。
池袋・新宿・渋谷という、かつて新都心と呼ばれた
ターミナルを繋ぐ今回の相互乗り入れでは、渋谷が
一人負けをする結果になりましたが、今回の渋谷駅の
変更は、渋谷駅再開発の一環として今後10年は
続きます。
それでも渋谷を再開発するのは、競合の設定が池袋や
新宿ではなく、これまで青山や六本木の開発に
よって奪われていた人の流れを取り戻すことだから
でしょう。
再開発が終了したときに渋谷の評価を決める要素は、
今般の相互乗り入れで利用者が増加した池袋・新宿・
原宿が強みとした、ファッションやショッピングの
ソフトパワーであることが今後を占う重要な試金石
と言えると思いますし、もしかすると、東京メトロが
鉄道ダイヤを利用して、あえて線から面にしなかった
のかもしれないとも考えられますね。
今後10年間の、渋谷・新宿・池袋、そして青山・
六本木に注目です。
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