相変わらず長く続く不景気に飽きてきたのか、昨今では「日本
のデフレを止めよう」という声が聞かれるようになってきまし
た。良いことですね。

デフレは通貨価値の上昇ですが、同時にモノの値段が下がる
ことですので、労働力の値段すなわち給料も下がって購買力
低下、消費の低迷、市場の縮小と悪循環に陥ります。

もうそれを止めよう、という声ですけれども、デフレは供給
過剰が続く限り「止めよう」と言うだけでは止みません。デ
フレ構造を退治しないと止まないのです。

デフレ構造はモノの価格が下落する構造であり、「良い物を
どんどん安く」に代表される、同一商品大量生産の産業スタ
イルが、商品のコモディティ化を進め価格下落を招いていま
す。

今回の表題のリヤドロは、スペインの磁器人形メーカです。
http://www.lladro.co.jp/

スペインといえば、ユーロ圏不景気の引き金となった地中海
沿岸不動産バブル崩壊の震源地であり、ユーロ危機ではギリ
シャ、イタリア等に並んで国債が売られたことはご存知だと
思います。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/cbuilder?T=jp09_&ticker1=GSPG10YR%3AIND

その余波でスペイン経済は不景気風が吹き荒れ、低価格品流
入によるデフレと消費低迷が起こっています。ちなみにファ
ストファッションで有名なZARAはスペイン企業です。

そんなスペインの企業のなかで、リヤドロは商品価値を追求
して、高価なプライシングで攻めに出ています。

例えば、日本市場向けに甲冑姿の五月人形を開発して、端午
の節句市場に参入していますが、これが「いいお値段」なの
です。
http://www.lladro.co.jp/new/wakamusha/01013042.html

リヤドロ社は、スペインではタンゴやフラメンコダンサーの
人形などで有名ですが、それをただ日本市場に持ってくるの
ではなく、日本鎧兜姿の子供人形を作って従来の五月人形と
異なるスタイルの節句の祝いを提案しています。こういう商
品・サービスの開発は多くの日本企業が学ぶべきポイントで
はないでしょうか。

エルピーダメモリの経営行き詰まりや、家電メーカのテレビ
事業不振を眺めていると、とにかく製品の品質だけで勝負し
ようという日本らしい一本気な製品が、プライス比較で敗退
してしまうという共通点が見られます。

これは、品質とブランドネーム(だけ)で勝負しようとする現
地市場を無視したアプローチの限界が表出していると言えな
いでしょうか。

スマートフォンに代表されるように、日用品でありながら高
機能あるいは高付加価値をもった商品でさえ、グローバル経
済下では世界中で売らなければなりません。その市場の最前
線では、顧客の生活文化に”くっ付いて愛好される”粘着力
のある魅力が必要になるということが、グローカル経済下の
マーケティング経営です。

先の五月人形のページをみると、リヤドロの磁器製若武者人
形は、鎧兜姿の人形と花瓶に活けられた菖蒲の飾りと専用ガ
ラスケースがセットで38万4000円です。

スペインから空輸して店頭に並べることを考えても、非常に
強気なプライス設定だと思いませんか? 同じことを日本企
業や製作者の職人さんが行ったら10万円ほど安い価格にし
てしまうのではないでしょうか。

これは、端午の節句という特別なオケージョン向け商品だか
ら「有り」な価格です。もしお金に余裕があったら欲しいな、
という手を伸ばせば届きそう、という優れたプライシングと
さえ感じます。

デフレを止めようというとき、ただ値下げを止めようと言っ
ても止まりません。顧客にとって特別なものに商品やサービ
スが進歩したとき、初めてデフレにブレーキが掛かります。

デフレを止めるブレーキは、イノベーションだけがもたらす
のです。

※この記事は、メルマガ記事の加筆・修正版であり、ビジ
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