今日から3月で別れの季節です。先月に入った頃からでしょうか、
毎年恒例の鉄道ダイヤの改正情報がちらほら聞こえてきました。

消え行く列車がダイヤ改正で話題となるのは毎年恒例で、今年は
日本海側を結ぶ寝台列車が廃止となることですが、寝台特急が廃
止になるのは例年の風物詩のようになってきました。

JR各社の本音としては赤字が嵩む、しかも直接費の配分が極め
て高い夜行列車は一度に全て廃止したいところでしょうが、世間
(=乗客)の反応を最小限に和らげるべく、毎年少しずつ減少させ
ているのでしょう。ステンレス帯の24系25形で運行されるべ
きだった「はやぶさ」と「富士」が白ペンキの14系14形で一
本化された過去を振り返れば推量できます。

さて、私の生活圏でJRのダイヤ改正により影響を受けるのは、
さほど大きなものはありませんが、2つばかり惜別になる列車が
あるので、最後の機会として触れておくことにしました。

まずは、小田急新宿から御殿場線を経由して沼津まで足を伸ばす
特急「あさぎり」。連絡準急だった経緯からかロマンスカーを名
乗ることはなく、1編成しかない371系が中央総武線ホームの
隣りまでやってきていました。この車両が廃止だそうです。

JR371-01.jpg

何度か乗ったことはありましたけれども、2階建2階のグリーン
車に乗ったことはありませんでしたので、ちょっと奮発して乗車
体験です。

JR371-02.jpg
▲小田急線のきっぷにJRの車両形式とグリーン車のマークが記
載されるされるのも最後

小田急車両の2階は乗ったことがありましたが、こちらの方がイ
ンテリアのカラーリングの影響でしょうか、シックで落ち着いた
雰囲気です。

ですが、落ち着かないのは乗り心地の方で、側面のあちこちに大
きな穴(窓)のあいたセミモノコックを1階2階と上下にスプリッ
トしているのでボディ剛性感が不足しており、車両中央の席を指
定して乗車していてもヨーとピッチとロールが複合して起こるダ
イナゴナルな揺れに揺さぶられます。

JR371-03.jpg

小田急の2階も大差ありませんが、向こうが揺れと共に音も壮大
で総合的なバランスが高くなかったのに比べ、こちらは車両端か
らの走行音や窓からの透過音が小さく抑えられているため、揺れを
過大に感じてしまうのです。油断すると酔ってしまうか、気分に
も影響がありそうでした。

報道によると、廃止の理由として車両の老朽化が挙げられたよう
でしたが、大井川のC10なんて80年前のものが現役なのです
から、古くてもう使えないという理由は全体のうちの一部なので
はないかと思います。

ロールセンター低く乗り心地が安定した1階席は、ボディ剛性感、
シート固さ、揺れ、騒音等々の総合点において、丁度よいバラン
スをもった優れた車両ですから、今後も大切に使ってもらいたい
と思います。

さてもうひとつの惜別列車は、グリーン車でもなく特急でもない
普通列車の東海道線338Mです。

こちらも長年親しまれた大垣夜行が臨時化されてしまった後も、
どういう訳か急行東海のように静岡駅から東京駅にやってきてい
た列車です。

「普通列車大垣行き」は長距離夜行列車という性格から急行型車
両が投入され、JRから急行が事実上廃止されて用途を失うと特
急型車両に格上げされた出世列車でした。

「特急車両に普通きっぷで乗れる」というのは、鉄道ファンの皆
さまが大好きなテーマですが、発展途上の意識とは別に今どき首
都圏で「旅情」が味わえる普通列車として特別な意味があったと
思います。

それはJR東海の車両がもつ重心低くルーミーで開放的なインテ
リアによるもので、大きく開いた窓から車窓が存分に楽しめるこ
とを、イベント列車でもなく臨時列車でもなく、毎日の日常で体
験できる貴重さに価値がありました。

旅の手段が鉄道や船から自動車や航空機に取って代わられた後も、
クロスシートであることによって残されていた旅情がここからも
消えてなくなります。

見えないものに価値を認める人がいなくなったということでしょ
うか。

JR338M.jpg

感謝!