「ランボルギーニ・ムルシエラゴの給油口はどこにあるの?」

突然、2歳の子どもから質問を受けた父親は返答に窮する。

同じような質問が30年ほど前にもあった。「あの蒸気機関車の
煙突はなんで四角い形をしてるの?」

北海道の追分機関区から貸し出されてきて展示された公園に、蒸気
機関車が来たから見に行こうと連れ出され、初めて見たときだっ
たか二度目のときにだったかと思う。質問された父親は返答に窮
して、なにか答えにならない答えでその急場をしのいだ。

その場を取り繕っても解決されていない問題はそのままで、その
後さまざまは写真で見かけるD51の煙突は通常の丸形、さらに
少々文字が理解できるようになって読む文献には、戦時中に製造
された戦時型は資材不足から装備の省略や資材の変更がなされた
とあったので、鉄の不足から煙突の形状が丸から楕円に変更になっ
たと思い込んでいた。

しかし、資材の不足で煙突の形状を変更するだろうか?

これは少々知恵がついてきた大人になってからも残る疑問で、最
近になってようやくその疑問が解けました。その答えがギーセル
エジェクターだったのです。

この楕円煙突は、ギースルともエゼクターとも呼ばれるので、組
み合わせにより呼び方は様々なようですが、いずれも同じものを
指すようです。

通常円形の煙突が楕円形になっているのは、車体に掛かる空気の
抵抗を最小化するための空力的ニーズではなくて、煙突から排気
される煙の排出効率を高めるための形状なのだとか。煙突内の
ブラスト管を特殊形状にしたことにより煙突の形状も影響を受け
たのだそうです。

蒸気機関車の前頭部にある煙突からの煙の排気効率というのは、
そのままボイラの吸気効率に比例し、火室内の吸気が向上して、
燃焼効率、高温な蒸気の生成、燃料の節約等々、多くのメリッ
トをもたらします。

つまり、蒸気機関車の性能向上に一役買った新型装備だったとい
う訳です。この技術がもう少し早く広まっていればという仮説も
あるそうですが、この最新装備は蒸機最後期に登場したものだっ
たため、マイナー装備としてごく一部の機関車に取り付けられた
のみで終わってしまいました。

子供心に「あの変な煙突は何だ」と思った疑問は、決して大人を
困らせるおかしたものではなく良い質問だったのです。

子どもの無限の可能性を引き出してあげるには、ムルシエラゴの
給油口は右クォーターウィンドウの後ろにある、と教えてあげま
しょう。

さらに、ムルシエラゴは正しくはムルチエラーゴと発音するとい
うことも、きっと将来役立ちます。

ギーセルエジェクター

感謝!