大阪サッパボイラ社でC61-20のボイラ・オーバーホールが
行われた映像で映っていたのは、黄白色に焼けたリベットでした。

おそらくは生鉄の冷間鍛造と思われるリベットをコークスで焼き、
1100℃(輝黄色)~1200℃(黄白色)に熱して「やっとこ」で取り出
して投げ、円筒形ボイラの中と外でリベットを打つ。

もしこれがどれかひとつなら、そう難しいことではないでしょう。

しかし、これらが全てとなると話はまったく違い、熟練の技術が
なければできないでしょう。

これが、日本で唯一この会社が蒸気機関車のボイラをオーバーホー
ルできるということではないでしょうか。

完成した蒸気機関車の見える場所にはメーカの銘板はありますが、
ボイラをオーバーホールした会社の名前は見当たりません。しか
し、ボイラの状態が良くなければ蒸気機関車は走りません。信越
線の登り勾配も登りません。

だから、リベット打ちは熱間鍛造なのでしょう。

1000度以上に熱した鉄のリベットを打つとき、リベットは塑性変
形してボイラを固定します。これは、鉄は熱いうちに打ての格言
どおり、鉄を鍛えることでボイラを強固に接着しているのです。

鉄がしっかりと鍛えられるためには、リベットの芯まで熱が均一
に入っていないといけない。適当に火の中にいれ表面だけモナカ
のように焼いてはボイラー事故に直結する。それを700本です。

想像を絶する緊張と責任の仕事だと思いました。

大宮の工場から大型特種のトレーラーでボイラが運び出されると
き、トレーラーは関西のクルマでした。だから搬出から納入まで
一式で受けないといけないノウハウがあると思います。

おそらくは、SLイベント列車に乗る乗客も、鉄道ファンの皆さま
も、蒸気OBの皆さまも、ボイラーの熱間鍛造のリベット止めまで
はご存知ないでしょう。

同じように動輪の6本のタイヤ、ピストンに装着された4本のピ
ストンリング、その他補機類のねじやナット、どれがなくとも動
かないのです。もちろん台枠の芯が出なければ、走っても焼きつ
きます。

これら全てが揃って1両の蒸気機関車が復元したこと。本線上を
走ること。

伝承への志があるからこそ、この目で見られるようになったのだ
と思います。

そういえば、C61-20のボイラが運び込まれたとき、蒸気機
関車用と思われるボイラがもう一本映っていたけれど、あれは何
なんだろう?

感謝!