
長らく、その小さな看板は大きさと力強さの象徴でした。しかし、
私が初めてそれを見たにはすでに役目を終えたものばかりで、本当
に実感を込めて生きた現場をみるのは、初めてだったかもしれま
せん。
また、この距離の近さもその実感を強調させるに十分な魅力をもっ
ていました。
日本人は潔さを貴い価値とし、白と黒とを重んじる文化を持って
いますが、白い冬の北の大地に現れる黒い蒸機というのは、何故
か自然と人間との関係やコントラストを表現しているような気が
します。

昨今は、観光の目玉としてSLなる乗り物が人気を集めています
けれども、白銀の釧路湿原のなかを走る蒸機というのは、動物園
で飼育される動物のようなSLではなく、ケニアの大地で獲物を
狙うようなプリミティヴな実態がそこにありました。
蒸気機関車というのは、エネルギー効率からみると5%程度しか
エネルギーを取り出すことができないそうです。また火を燃やす
ため車両の寿命も20~30年程度で廃車になったものが多いそ
うです。
鉄道全体が成長期だった20世紀前半のものですが、こうして10
0年後の現在でも見事に動いていること。また現在現役の機関車
の方が大切に扱われてより寿命が延びるであろうことも、素晴ら
しく生き物のような機械があったことと今後も伝承されることを
多くの方が望んでいることの喜びです。
こうして釧網本線を終点までやって来ました。

苗穂のC62 3をなんとか眠りから覚ませられないだろうか。
感謝!