最近はもっぱらカスク・ストレングスばかり飲んでいて、本来の
オフィシャルボトルはすっかりご無沙汰をしてしまっているニッ
カウヰスキーの余市ですが、そんなことを口に出してみたりす
ると「それなら次回は」という話になるもので、ときどき友人
知人にシングルカスクを試してもらったりする機会があります。


シングルモルト余市12年

すると、そういうものを求める御仁だからといいますか、なら
ではといいますか、「タリスカーに似ているね」なんてご感想を
いただいたりします。


タリスカー

確かに積丹半島付け根の余市と、スコットランドはスカイ島西
端のタリスカーは、ピーティーで焦げ臭く「爆発するような」と
表現される力強さが身上のモルト・ウィスキーです。

また面白いことに、エントリー製品で比べてみると、日本産の
余市よりも輸入品のタリスカーの方が販売価格が安く、通のな
かでは「オイラはもっぱらタリスカー」という方も多くいらっ
しゃるようです。

しかし、よく似てはいるものの、やはり似て非なるものでもあ
り、同じ10t爆弾のような両者でも若干タリスカーの方が甘
い味がして、はて何故だろうと考えてきました。

余市は、現在蒸溜所でのフロアモルティングを行っていないの
で、モルトを輸入しているそうです。タリスカーはディアジオ
系列の蒸溜所ですが、ディアジオはアイラ島ポートエレンに巨
大なモルト製造工場を持ち、連日ものすごい煙と臭いでモルト
製造を行っています。

両者はポットスチルもよく似ています。

余市のポットスチル
▲余市のポットスチル

分かりにくい写真で申し訳ないですが、余市のポットスチルは
ストレートアーム型。

タリスカーのポットスチル
▲タリスカーのポットスチル

タリスカーの再溜釜も、大きさは小さめですがほとんど同じ形
なんです。

それで、出来上がるウィスキーに甘みが強く感じられるかどう
か分かれるのが興味深いところ。何故でしょう?

答えは水ではないかと思います。余市蒸溜所の近くには余市川
という川が流れていますが、川の水は皆さまご想像の通り無色
透明で、あえて言えば雪解けの匂いがするくらい(笑)です。

対して、タリスカー蒸溜所の敷地内にも川が流れていまして、
この川の水がピートに色づけされて茶色いんです。

タリスカー川

タリスカーでは、少し離れた湖の水を引いているそうですが、
やはりピーティな水であることは変わりないでしょう。

蒸留する水がピーティならば、モルト製造の段階でピートを焚
く量はより少なくてよいという判断ができそうです。

つまり、他条件一定ならばタリスカーの方がピート濃度が低く、
麦がもつ甘みを残したまま粉砕と発酵に移れる、ということに
なっているのではないでしょうか。その違いが10年以上熟成
させたウィスキーに顕著な差となって現れる。

こんなところにもモノ作りの神様がいます。
一口飲むのは簡単ですが、奥が深いものですね。


感謝!