むかしむかしのおはなし備忘録

むかしむかしのおはなし備忘録

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搜神記卷四(風・雨・水の神の話)

 

82. 郭璞⑤  驢鼠(ろそ)

 

  郭璞過江,宣城太守殷佑,引為參軍。時有一物,大如水牛,灰色,卑腳,腳類象,胸前尾上皆白,大力而遲鈍,來到城下,眾咸怪焉。

郭璞(かくはく)が揚子江を渡り南へとやってきた際、宣城郡の太守、殷佑(いんゆう)が、参軍(武官の職名)として招いた。

その時期、1体の化け物が現れ問題になっていた。

大きさは水牛ほどで、灰色、足は短く象のようで、胸の前と尾の上が白く、力が強いが動きは鈍く、城下町までやってきたので、町の者は皆驚き畏れて騒ぎになった。

 

佑使人伏而取之。令璞作卦,遇遯之蠱,名曰「驢鼠。」卜適了,伏者以戟刺,深尺餘。郡紀綱上祠請殺之。巫云:「廟神不悅。此是䢼亭驢山君使。至荊山,暫來過我,不須觸之。」遂去,不復見。

殷佑が部下に待ち伏せさせて捕らえようと、郭璞に易経で占いをさせた。

卦により「遯(とん)より蠱(こ)へ」、そして化け物の名前が『驢鼠(ろそ)』というものだということが解った。

占いが終わると、待ち伏せされていた者が化け物を鉾で刺し、一尺近くの深い傷を負わせ、

郡の役人が土地の神の祠に、化け物の死を願った。

巫女は「廟の神様はたいそう不快だそうです。その生き物は、䢼亭(安徽省の地名)の驢山神の使いです。荊山まで行くさいに通りかかったので、私の元へ暫く立ち寄ったまでとのこと。手を出してはなりません。」

するとその生き物は去って行き、二度と姿を見せなかった。

 


 

雑記

郭璞さんは3巻に立て続けに出ていたけれど、まさか4巻にも出るとは。

・紀綱(キコウ)…国を治める規則や法律、制度。またそれを行うお役人。

 

・この話「マンモス()じゃね?」みたいなタイトルで、(うろ覚え)やつむかーし読んだことある気がする…と思って探してみたら見つかった。

 

>『晋書』に驢鼠の記あり。驢山の君なり。大いさ水牛のごとく、「灰色にして卑(ひく)き脚をし、脚は象に類す、胸前尾上みな白く、大力にして遅鈍」、来たって宣城下に到りしを、太守殷浩人をして生け擒りせしめ、郭璞(かくはく)に卜わしむ、と。

南方熊楠選集 第五巻 マンモスに関する旧説』でした。

 

時期的記録的にさ!マンモスじゃないけどマンモス的なものがさ!たしかに古代居たんだろうね!記録がね!あっちやこっちや!日本にも!ね!みたいな話としか記憶してなかったから読み直せてよかった(大分記憶と違った)。読書は好きだけど記憶力がないのが致命傷。

 

くまぐす先生の本は知識の物量でぶん殴られるみたいなのがステキなので世の中の設定厨の皆様に是非読んでいただきたい。
あと多分同じような文章を参考に日本語に直しただろうに、当然だけれども翻訳上手いんでびっくりするよね。自分の語彙の無さに。

 

・原文を引用したサイト。
開放文學 捜神記4巻

搜神記卷四(風・雨・水の神の話)

 

81. 宮亭廟の神

 

 南州人有遣吏獻犀簪於孫權者,舟過宮亭廟而乞靈焉。神忽下教曰:「須汝犀簪。」吏惶遽不敢應。俄而犀簪已前列矣。神復下教曰:「俟汝至石頭城,返汝簪。」吏不得已,遂行,自分失簪,且得死罪。比達石頭,忽有大鯉魚,長三尺,躍入舟。剖之,得簪。

南州人(四川)の者が、孫権(皇帝)にサイの角で作った簪を献上するため、遣いにやってきた使者に持たせた。

使者は船で宮亭廟を通りかかったのでお参りをした。すると突然神の声がした。

「あなたの持つサイの簪が欲しい」使者は畏れと混乱から何も行動を起こせずにいると、勝手にサイの簪が目の前に出てきてしまった。再び神の声がして、こう教えた。

「お前が石頭城に辿りついたら、おまえの簪を返そう」

使者は簪を返してもらうことができないまま、先へと向かうことにした。

自分は貴重な簪を失ったので、その罪によりまもなく死刑に処されるだろうと考えていた。

やがて石頭城に辿りつくと、突然大きな鯉が現れた。長さは三尺(100cm以上)あり、躍り上がる様に船の中に飛び込んできた。捌いてみると、その簪が出て来て再び得ることができた。

 


 

雑記

・神様が迷惑だったという話し。

・宮亭廟…宮亭湖(中国最大の淡水湖)の神を祀る廟。・犀角(さいかく)、サイのツノは『神農本草経』にも載っている高貴薬(希少価値が高くものすごく高価な薬)。

・なお現代医学で調べたところ、ケラチン(人間の爪と同じ)で効能はほとんどナイらしい。珍しいモノだから効くだろう、っていうプラセボだろうか。

・須…「必要」「すぐ」「留まる」「お願いする」「大事」という色んな意味があるらしいが多分ちゃんと理解できてない。

・矣は「置き字」と言って読まない文字。日本語に書き下す場合は~かな、と読む場合もある。

・絵文字の使い方を覚えた猫しっぽ猫からだ猫あたま(すごくどうでもいい) 

 

・原文を引用したサイト。
開放文學 捜神記4巻

搜神記卷四(風・雨・水の神の話)

 

80. 孤石廟の2人の娘

 

 宮亭湖孤石廟,嘗有估客下都,經其廟下,見二女子,云:「可為買兩量絲履,自相厚報。」估客至都,市好絲履,并箱盛之,自市書刀,亦內箱中。既還,以箱及香置廟中而去,忘取書刀。至河中流,忽有鯉魚跳入船內,破魚腹,得書刀焉。

 宮亭湖(江西省の湖)の側に孤石廟という廟があった。

あるとき一人の行商人が都へと向かう途中、廟の下を通りかかると、二人の娘が立っているのが見えた。

娘たちは「私たちに刺繍の靴を買って来てくれませんか。きっと厚意に報いますから」と言う。

行商人は都に辿りつくと、市場で良い刺繍の履物を見つけたので、箱も併せて購入した。

自分のために小さな刀も買い求め、同じ箱の中にしまった。

帰りの道すがら、その箱を廟の中に置き、香を焚いてから去ったが、箱の中から書刀を取りだすのを忘れてしまっていた。

それから川を渡ったが、流れの真ん中あたりにくると、突然鯉が船の中に跳ねて飛び込んできた

。魚の腹を裂いてみると、忘れたはずの書刀がでて来たのだった。

 


 

雑記という名の知らなかったことメモ

・不思議な娘2人のお願いを聞いてあげたら、不思議な方法で忘れ物を届けてくれたよ、と言うお話。忘れ物したのも娘っ子のおつかいのせいな気がするけど、ちゃんと言ったことは守ってくれるのは偉いよね。

・宮亭湖(きゅうていこ)…江西省鄱陽湖(はようこ/中国最大の淡水湖@ヨウスコウイルカの生息地)の南の部分。廬山の西。古代は雲夢沢(うんぼうたく)と呼ばれる大湿原地帯だったらしく、周囲の淡水湖は元が同じ(地下の洞穴でつながっている)伝説があるらしい。

估客(こきゃく)…あきんど。行商人。

・書刀(しょとう)…一般的に竹簡が使用されていたので、竹を削るためのナイフ。翻訳によってはペーパーナイフと書かれていることもある。

 

・原文を引用したサイト。
開放文學 捜神記4巻