10秒の世界。
ほぼ、じゃないな。
確実に毎日行くコンビニ。
そして毎晩いる細野さん(仮名)が僕は大好き。
眉毛の剃り具合、肌のツヤ、人生の酸いも甘いも熟知した表情。
推定43歳(青木指標)の細野さんですが、もの凄く好きなんです。
細野さんとは日常会話を一度もしたことがありません。
思わず言ってしまいそうな「毎日お疲れさまです。細野さんめっちゃ好きですよ」それを押し殺して毎日接してます。
僕の予想、売れないミュージシャンOR売れない役者。
ただならぬオーラを感じるんですよね。
並んでいるお客さんのさばき方、レジに入るタイミング、会計とお釣りの受け渡しを見計らいながらの弁当を温めるスピード感、お客さんが小銭を探している僅かな時間をロスせずにレンジからお弁当を取り出すタイミング。
全てがパーフェクト。
僕はそんな中で細野さんに初めて難題を提示しました。
そう、ハンバーグカレードリアです。
皆さんもご存じハンバーグカレードリアですよ。
温めすぎても、冷め過ぎても美味しくない超ハイクオリティーの弁当です。
ベストレンジタイムは1分10秒なんです。(青木体感タイム)
多くの店員は1分ジャストでやっちゃってます。
細野さん「温めますか?」
僕「はい、お願いします、あとアメリカンスピリット(タバコ)の3ミリを」
さぁ、細野さんよ。貴方はこのハンバーグカレードリア弁当を何分で温める?
レンジにタイマーを掛ける細野さん。
僕の視線はその細野さんの人差し指に向けられている。
心臓が脈を打つ。
時空が歪み、僕の景色はスローモーションに変る。
結果。
1分。
細野さん。
やはり貴方も1分なんですね。
幻想。
僕は細野さんを過大評価していた。
絶望と失望の狭間に揺れる僕。
お釣りを僕に手渡し、タバコ、コーヒーを淡々とレジ袋に入れる細野さんを茫然と見下ろしていた。
それと同時にレンジが”ピーピー”と悲しいメロディーを奏でる。
その刹那。
レンジに向かって振り返り、再度10秒を設定。
細野さん「次どうぞ」
僕を右に追いやり、その瞬間次のお客さんをレジに誘導。
そのお客さんが小銭を取りだしている瞬間に僕へハンバーグカレードリアを手渡す。
目線も僕に合わせず、僕にドリアカレーハンバーグを手渡す。
えっと、何弁当だっけ。
そこに無言のメッセージが込められたいたんです。
”青木さん。カレーハンバーグドリアってやっぱ1分10秒だよね”
そんな素敵な10秒の世界。
で、正式名称何弁当だっけ。