それは雪解けの崖の奥。大きな大きなルシファーの館での物語。崖は切り立ち、その奥は荒れ地。大きな青銅の門があり、その門の中は、冬の終わりとは思えぬほど、季節の緑が咲き誇っていました。


 中庭の管理を任せられたブヒ太郎とその母ブヒ・トマト。小さな身体のブヒ親子は今朝も温かい食事から始まりました。暖炉の火は光々と燃え、ブヒ・トマト母さんは、ベーコンエッグ、黒パン、ミニトマト、ホットミルクを準備しました。

 朝食中、ブヒ太郎は今日の予定を中庭のお散歩にすると言いました。


 今日からは3月。泉の宝石が変わると、執事さんが言ってたブヒ。妖精さんにもお花の管理を言われたブヒ。



 そうね。お泉とお花ね。ルシファー様は今朝はご留守。執事の羊さんに、挨拶するのよ。


 はいだブヒ。



 そう言って、ブヒ太郎は勢い良く、朝のご飯を食べた。




 午前8時。ブヒ太郎は

中庭の泉を見に行った。


 花は、桜に変わり、泉は相変わらずコンコンと湧き出ててる。宝石は、ルビーになり、結晶していた。執事の羊が、朝の挨拶に来た。



 ブヒ太郎君。今朝も元気良いね。今日、桜の蜜を捕るから、手伝ってくれるかい?



 蜜だブヒか。はいだブヒ。




 ブヒ太郎は小瓶を片手に桜の花を巡った。蜜は少しづつ捕れ、瓶いっぱいに、10本も集まった。


 これで、お雛祭りのケーキが作れる。



 明後日、楽しみにね。



執事の羊は、瓶を抱え、奥の台所に引っ込んで行った。



 桃色の妖精達は、

ブヒ太郎、蜜でベトついた身体を、ルビーの泉で洗いなさい


と、告げた。



 日はお昼。パチャパチャと、泉でブヒ太郎は泳いだ。



 花々は、そっと、甘い匂いでブヒ太郎を包み込んでいた。



 end