ひとりで車を運転中。

何気ない風景に触発されて

自分でも忘れていたような

父の死にまつわる光景が

突然、フラッシュバックしてきた。




瞬間、叫んだ。涙が溢れ出した。




**********




すっかり忘れていたんだけど、

わたしは、病院から葬儀屋さんの車で

父の遺体と一緒に実家に戻ってきたんだ。

遺体には1人しか付き添えなくて。

妊婦の妹に変わり、

私が1人で付き添ったんだった。

数日前まで元気に生きていた父が

私の隣の、棺のなかで静かに眠っていた。

生前からそうだったように、

私は少しの緊張感を持って、父の側にいたんだ。

亡くなった現実感もないまま、

ただただ、静かに父の側にいた。



なぜか忘れていたこの風景が、

突然目の前に広がった。





瞬間、叫んだ。

そして涙がとめどもなく溢れ出した。






あの時だって、泣き叫びたかったんだ。

よく分からないのと

それでも受け入れなくちゃと必死で

静かに付き添っていたけど。




泣き叫びたかったんだ。





そうだよな。

この私がそんなに聞き分けよく

受け入れられる訳がないじゃん。

もっと、もがこう。

まだまだ、泣き叫ぼう。



この感情が、自分の血肉になるまで

味わい尽くそう。

自分のそんな逞しさも、

ちゃんと知っているんだ。



  
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