先日、オランダへ嫁いだテリィの娘アンジーの幼少の頃のお話です。彼女の初恋の人はこのひとでした。そして彼女は霊感があったようです。
こちらはオフザケ無しですので安心してお読みいただけます
番外編 バラの王子さま
テリィの所属しているRSCのアメリカ公演がニューヨークとシカゴで決まり家族揃ってアメリカに帰ってきた。
そして連日満席で大評判、大成功、大反響で幕を閉じテリィは1ヶ月の休暇を取りシカゴのアードレー本宅に過ごすことになった。
アレクとアンジーにとっては初めてのアメリカである。
シカゴ駅に到着するとジョルジュが待っていた。
「グランチェスター様、キャンディス様お久しぶりでこざいます。皆様お元気で安心致しました。」
と笑顔で出迎えてくれた。
「ジョルジュ久しぶりね。」
「ジョルジュしばらく世話になるよ。」
「ウィリアム様が今か今かとお待ちでございます。それでは参りましょう。」
シカゴの本宅の柵が見えてきたがなかなか門が見えなくて子供達が驚いている。
「何このお家~今まで見たこと無いくらいおっきぃー。」
とアンジーが口をあんぐりと開けている。
「ねぇ、ジョルジュおじちゃんまだ着かないの?僕お腹空いた。」
「アレクシス様あと少しでございますよ。それとわたくしのことはジョルジュでけっこうです。」
「えーダメだよ。大人の人呼び捨てにしちゃいけないってママに言われてるから。ジョルジュおじちゃんで良いよね?ママ。」
「というわけだから許してあげて。」
とキャンディが言った。
「そういうことでしたら…かしこまりました。」
子供達はまだジョルジュの立場がわかってなかった。
遠い昔キャンディがイギリスに向かう時に出会ったテリィといろいろありながらも一緒になり、そしてその子供達におじちゃんと云う呼ばれ方をされて本当はめちゃくちゃ嬉しくてジョルジュは目頭を熱くしていた。
やっと玄関までたどり着き、アルバートのいるサンルームへ4人で挨拶へ行った。
「アルバートさんご無沙汰してます。今日から家族4人しばらくよろしくお願いします。」
と、キャンディ。
「アルバートさんお世話になります。」
とテリィも挨拶した。
「やぁ、テリィ、キャンディよく来てくれたね。疲れただろう。夕食までゆっくり休んで。そちらのかわいいふたりは初めてだね。アレクにアンジーよろしくね。」
とアルバートが微笑んだ。
「僕らもアルバートさんって呼べば良いの?」
とアレクがキャンディに問いかけた。
「何でも良いけどおじいさんだけはやめて欲しいな。」
とアルバートが笑いながら言った。
「じゃあ、バートおじさまって呼ぶことにしましょう。他にもおじさまいるからね。」
とキャンディがふたりに言った。
「アーチーおじさまもいるよ。」
後ろからアーチーの声がしてアニーと子供達も一緒に来た。
「アニー」
「キャンディ会いたかった。」
「私もよ。」
ふたりは感動して泣きながら抱擁した。
アンジーは目の前にいる女の子と目が合い微笑み合った。
「あたし、アリスっていうの。あなたは?」
「あたしアンジー。」
「ねぇママ、アンジーとお庭に行って良いでしょ?」
「仕方ないわね。夕食までに帰ってくるのよ。」
「はーい。」
アリスとアンジーは声を揃えて走って行った。
「お庭広くて迷子になりそう。」
「アハハ。私なったことあるよ。でも見つけてくれるから大丈夫。ねぇ、あそこのバラ園まで競争よ。」
「うん。」
ふたりは全力疾走していた。
「あっ。」
バラ園に入ったところでアンジーがこけてしまった。
起き上がって走ろうとするけど足を痛めて思うように走れない。アリスがだんだん遠くになり小さくなっていく。
「待ってぇ、アリス。痛い。ママ…」
痛いのと誰もいない寂しさで泣いてしまった。すると背後から男性の声がした。
「泣かないで、ベビーちゃん。」
アンジーはキョロキョロしていると目の前にいた。

いがらし先生のイラストお借りしました。
「大丈夫かい。さぁ泣き止んで。僕が起こしてあげるよ。よいしょっと。」
とアンジーの手を取り抱き上げて身体を起こし座らせた。
「あなたは誰?どこかの王子さま?それともここに住んでる人?」
「そうだなー、住んでるような住んでないような。でもここのバラ達はもともと僕が作り上げたんだ。」
「じゃあ、バラの王子さまね。」
「王子さま?そういえば昔もそう言われた事があったな。君みたいにグリーンの目をしていて…。そうだ、こっちにおいでよ。僕の自慢のバラを見せてあげる。」
彼のあとを付いていったアンジーはそのバラたちを見て感動する。
「素敵。白に緑の縁があるみたいな感じ。こんなバラ見たこと無い。」
「これはスウィートキャンディっていうバラなんだ。」
「ママと同じ名前。」
「君のママから名前を取ったんだよ。」
「じゃあ、ママのお友達なの?」
「そうだね。お友達だね。」
「あっ、もう帰らなきゃ夕食前に帰らなきゃなの。そうだ王子さまも一緒に来て食べようよ。」
「僕も帰らなきゃ。また会おう。」
アンジーは王子さまを見送ると無性に眠気がもよおしその場で寝てしまった。
「…ジー、起きなさい、アンジー。」
キャンディの声でハッと目が覚めた。テリィの背中におんぶされていた。
「あれ、ママ…。」
「良かった。アンジー探したのよ。あなたったらバラ園の中で眠りこけていたんだから。」
「寝てないよ。ねぇ、あのバラ園に王子さまがいたの。」
「アンジー、何言ってんだ。ここにはそんな人いないぞ。王子さまが出てくる夢でも見たんだろ。」
「違うもん。めちゃくちゃカッコ良い王子さまだったんだから。」
「パパよりもカッコ良いのか?」
とテリィが過剰に反応した。
「パパと同じくらいカッコ良かった。」
「アンジーそう言うときはパパの方がカッコ良いっていうのよ。」
「でもパパよりも年下だったよ。」
「今度そいつ見かけたら連れてこい。直接パパとカッコ良さの勝負だ。」
「もぉー、テリィったら張り合わなくても。」
3人は笑いながら屋敷の中へ入っていった。
翌日───
アンジーはひとりでバラ園まで来た。すると昨日のバラは1輪も咲いていない。咲いているのは赤のバラだった。
「おかしいなぁ。」
「何がおかしいんだい?」
後ろを振り向くと昨日の少年がいた。
「あっ、王子さま。昨日のあの綺麗なバラが無いんだけど。」
「こっちだよ。おいで。」
奥に行くと昨日と同じバラが咲いていた。
「やっぱりこのバラがいちばん綺麗だね。」
「気に入ってくれたんだ。」
「うん。だってママの名前も入ってるしね。ねぇ、おともだちなのにママにどうして会わないの?」
「会いたいけど会えないんだ。君のパパにママの事をお願いしてるから会えなくても大丈夫だ。アンジーはパパとママは好き?」
「大好き。ママはめちゃくちゃ優しいしパパは何でも買ってくれるの。」
「そっか。じゃあ、大好きなパパとママに悲しい思いをさせちゃダメだよ。いいね、約束だ。」
「うん約束する。守るからアンジーね将来王子さまのお嫁さんになりたい。」
「僕の?ハハハ、アンジーはおませだね。」
「おませってなぁに?」
「アンジー、どこにいるの?」
遠くからキャンディの呼ぶ声が聞こえてた。
「君のママが探している。ここだよって言ってあげて。」
「ママー、ここにいるよー。」
キャンディがはぁはぁ言いながら来た。
「もう、すぐにいなくなっちゃうんだから。みんなでお墓参りに行くからあなたも来なさい。」
「うん。あっ」
アンジーはキャンディに少年のことを言おうと後ろを振り返ると誰もいなかった。
アンソニーとステアの墓参りをして屋敷に帰ってきた。
「ねぇママ、お墓参りした人たちってどんな人。」
「ママの大切な人たちよ。そうだバートおじさま専用のサンルームに肖像画があるから見せてもらおうか。」
アルバートの許可をもらいキャンディとテリィとアンジーとアレクは、アードレー家の代々の肖像画を見せてもらった。
「この人が初代のアードレー総長なんだ…。」
端から順番に見ていき、アンソニーのところにさしかかったところでキャンディは胸が熱くなった。
"アンソニー、久しぶりね"
と感傷に浸っているとアンジーがあーっと大声をあげた。
「アンジーどうしたの?」
「このひと…バラの王子さま。ここのバラ園で一緒にいたよ。」
「アンジー、本当?」
キャンディが声を荒らげる。
「本当だよ。お墓参り行く前まで一緒にお話してたの。スウィートキャンディっていうバラを見せてくれたよ。」
「アンジー、案内して。」
「キャンディ!!」
テリィの叫びも耳に入らずキャンディは全力疾走でバラ園に行った。
アンジーも遅れて走って行った。
バラ園にたどり着くと赤いバラしかない。
「ママこっち。」
アンジーの案内で奥に行くと赤いバラたちとは離れた場所にひっそりと、しかし堂々と静かに綺麗に咲いていた。まるでキャンディにいつ見られても良いように。
「アンソニー…。」
キャンディは泣き崩れてしまった。
「王子さま、ママの事おともだちって言ってた。おともだちだったらなんで会わないの?って聞いたの。そしたらパパにママの事をお願いしてるからいいんだって。」
夕食後、寝室でテリィから昔そう言われたと聞いた。
「俺は直接会ってない、夢でそう言われたんだ。隠しているつもりは無かったが、あくまで夢だったから。言えば良かったな、すまない。」
「ううん、そんな事があったのね。アンソニー、私の前には現れてくれないのね。」
「君が向こうの世界に行ったら会えるさ。それまで恥ずかしくないよう精一杯生きなきゃな。」
「そうね。」
テリィはキャンディを抱き締めて改めてキャンディを守り幸せにすると誓った。
それから年月がたちその後何度もアードレー本宅に行きバラ園に行ったがアンジーはアンソニーには会えなかった。
一度はレイクウッドの別荘を手放したがそのあとすぐにアルバートは買い戻した。
イギリスのテリィたちの自宅の庭には分けてもらったスウィートキャンディが咲いている。
テリィが迎えに行き聖セントポール学院からアンジーとアレクが久しぶりに帰ってきた。
「わぁ、スウィートキャンディが沢山咲いている。」
「ママが一生懸命に手入れして育ててるからな。」
このバラのにおいを嗅ぐと王子さま、アンソニーの事を思い出す。
久しぶりの4人揃ってのディナーの時のアンジーの発言にテリィはショックを受ける。
「実はさ、スウィートキャンディ見て思い出したんだけどね。バラの王子さまことアンソニーおじさまって私の初恋なんだよね。6歳のクセに一目惚れってこれなんだって思った。」
「まぁ、男の俺から見ても超イケメンだよな。父さん王子様が生きてなくて良かったね。ヤバいんじゃない?母さんどころか娘にまで心奪われてるじゃんか。」
とアレクが爆笑している。
テリィは黙って寝室に入っていってしまった。
「アンジーまでアンソニーの事を…まぁ、でもただの初恋だから。」
と自分に言い聞かせていたがショックは図りしれず大きかった。
現在…。ハウステンボス宮殿にアンジーはいる。
宮殿の庭にもスウィートキャンディが咲いている。
あれから何年たったのだろう。毎年スウィートキャンディが咲くとバラの王子さまを思い出す。
"アンソニーおじさまったら私はあなたのお嫁さんになりたいと言ったのに現実は本物の王子様のお嫁さんなんて…違うっちゅーの。"
とクスッと笑った。
内緒でアルバートからもらったアンソニーの写真を大事に誰にも見られない様に宝物の箱にしまっていてはたまに眺めてうっとりしている。
「やっぱ私ママの娘ね。王子さま。パパがあんなにショック受けるなんて思わなかった。だからコニーには絶対ナイショ…ね。」
素敵な笑みを浮かべてこちらを見ているアンソニーの写真に話しかけていた。
天空にて──────
「アンソニー、キャンディの娘に会ってきたのか?」
とステア。
「うん、心が純粋だから会えたよ。僕のお嫁さんになりたいなんて言ってくれてさ、めちゃくちゃ可愛くて思わず抱き締めそうになったよ。良く動くグリーンな目に感激した。キャンディが娘を産んだと聞いたとき絶対会いたいと思って…。やっと会えたよ。でももう次は会えないな。そっちはどうだったんだ、ステア。」
「パティ、今ひとりの男性と良い感じになってる。いい人みたいだから黙って見守ることにした。無理に忘れなくて良いって僕の事も認めてくれているんだ。」
「そうか。お互い安心だな。」
「そうだな。でもアンソニーが自分の娘の初恋なんて言われてテリィは複雑だろうね。」
「まぁ、そのぐらい意地悪しても良いんじゃないか?」
「そうかもな。」
大声で笑いながら今日もキャンディとパティの幸せを見守っている。
終
今回もお読みいただきましてありがとうございます❤もし、アンジーの初恋がアンソニーだったらという妄想が膨らみ書きました。
キャンディは6歳の時にアルバートさんに初恋をしてアンジーは6歳の時にアンソニーに初恋をする。
あんな少年たちに女の子が恋しない訳無いですよね。
過去にアンソニーがテリィにキャンディの事を頼んだお話あります。まさに夢だけに夢の共演、な~んて🤭
まだでしたらこちらも是非。
この機会に少し書き直しました。