※今回はかんころ編集部の夢トレテーマ
「私が幸せを感じる場所」について書いてます



私の朝はコーヒーから始まる



コーヒープレスに粗挽きの豆を入れ、お湯を注ぐ


膨らむ豆   湯気と共に立ち上る香り

そのまま4分待つ

時間が経ったらお気に入りのカップに注ぐ


友人から誕生日プレゼントにもらったティファニーのカップは、縁が丸みを帯びていて口当たりがいい

何よりティファニーブルーの美しさに心がときめく








数年前   私はコーヒーの味を感じなかった




3年程前まで勤めていた前の職場は、所謂「女性の職場」だった


上司は自分のお気に入りのスタッフを可愛がり、二人で他のスタッフの悪口を言って盛り上がっていた


自分の意見を言うと生意気だと言われ、攻撃の対象になった




息が詰まりそうになる環境




私は自分の身を守るため、職場の歯車になることを決めた



目の前の仕事を淡々とこなす日々

幸い仕事は出来る方だったので、傍目には何の問題もなく過ごせていた




そのはずなのに  
だんだん朝起きるのが辛くなった




鉛のように重い身体を奮い立たせるため、毎朝溶ける最大量で作った泥水のようなインスタントコーヒーを飲んで出勤していた



ふとしたことがきっかけで同僚のパートさんから嫌がらせをうけるようになり、退職を決意するまでこの生活は続いた




退職を申し出た時に上司から色々言われた

「こんな数年働いただけで辞めるなんて根気がない」
「あなたが大人になって我慢すれば解決する問題ではないか」
「他のスタッフに迷惑がかかるとは思わないのか 非常識だ」




環境が合わない事を理由に離れるのは非常識か

こちらの水の方が綺麗だからと、海水魚を真水に入れるのが「常識」なのか

真水に入れられた海水魚は 浸透圧で細胞が膨れ上がる





実際、退職直前の私は真水に放り込まれた海水魚よろしく身体のいたる所に不調が出ていた



味覚や嗅覚が鈍くなっていた



泥水のようなコーヒーも 味を感じないため難なく飲み干せた

同時にカフェインに依存気味になっていたため、しばしば頭痛も起こっていた



退職してから再就職まで1ヶ月あったため、しばらくカフェイン断ちをした

あれほど必要としていた泥水コーヒーなのに 退職してからはあっさり辞められた





しばらく経ったある日、一人用のドリップコーヒーを淹れた


お湯を注いだ時に登りたつ香り、口に含んだときに広がる苦味と仄かな酸味


その時飲んだ豆は、決して高い物ではなかったが心から「美味しい」と感じた




それは   私が心を取り戻した瞬間




今では色んな店のコーヒー豆を試すのが趣味の1つになっている



同じ豆を同じ手順で淹れても  その日によって味わいが違う



淹れたてのコーヒーをキッチンで立ったまま、火傷をしないようにそっとすすって味わう




そこが私が幸せを感じる場所