5 3 5 当期税金と繰延税金の認識

取引その他の事象が当期税金および繰延税金に及ぼす影響の会計処理は、取引その他の事象それ自身の会計処理と首尾一貫したものとする。すなわち、当期税金および繰延税金が、損益の外で認識される取引または事象から生ずる場合、または企業結合から生じる場合を除いて、収益または費用として認識し、当期の純損益に含めなければならない。

5 3 6 表示

(1) 税金負債および税金資産の表示

当期税金負債および当期税金資産は、財政状態計算書において掲記しなければならない。ただし、企業が認識された金額を相殺する法律上強制力のある権利を有し、かつ企業が純額で決済するかまたは資産を実現させると同時に負債を決済することを意図している場合に、かつ、この場合にのみ、当期税金資産と当期税金負債とを相殺しなければならない。繰延税金負債および繰延税金資産も、財政状態計算書において掲記しなければならない。ただし、次の場合のみ、繰延税金資産と繰延税金負債を相殺する法律上強制力のある権利を有し、かつ、繰延税金資産と繰延税金負債とが、同一の税務当局によって次のいずれかに対して課された法人所得税に関するものである。

(i)同じ納税企業体
(ii)重要な金額の繰延税金資産もしくは負債が決済もしくは回収されると予想される将来の各期に、当期税金負債と当期税金資産とを純額決済すること、または資産を実現させると同時に負債を決済することを意図している異なった納税企業体

(2)税金費用の表示

経常的活動からの純損益に関する税金費用は、包括利益計算書に表示しなければならない。ただし、企業が分離損益計算書で純損益の構成要素を表示する場合には、経常的活動による純損益に関係する税金費用は分離損益計算書に表示しなければならない。

5 3 7開示

IASI2は、法人所得税について、広範な開示を要求している。主なものは、次の通りである。

(a)税金費用の主要な内訳

(b)税金費用と会計上の利益との間の数字的調整

(c)財政状態計算書上で繰延税金資産が認識されていない将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金、および繰越税額控除の額

(d)各タイプの一時差異ならびに各タイプの税務上の繰越欠損金および繰越税額控除について、各期の財政状態計算書に計上された金額の変動からは明らかでない場合には包括利益計算書で認識された繰延税金収益または費用の額さらに、企業は、次の場合には、繰延税金資産の金額とその認識を妥当とする根拠の内容を開示しなければならない。
5 3 法人所得税

5 3 1 目的と範囲

IAS12「法人所得税」は、法人所得税の会計処理を定めている。

法人所得税とは、課税所得を課税標準として課される国内および国外のすべての税金をいう。これには、子会社、関連会社またはジョイント・ベンチャーが報告企業に利益分配をする際に納付する源泉税なども含まれる。

課税所得とは、税務当局が定めたルールに従って計算され、それに対して法人所得税が課せられるある期の利益をいう。

以下、会計上の利益とは税金費用を控除する前のある期の純損益をいい、税金費用とはある期の純損益の計算に含まれる当期税金と繰越税金との合計額をいう。

5 3 2 当期税金の認識

当期税金とは、ある期の課税所得について納付すべき税額をいう。すなわち、税務申告書において確定した納付税額であり、日本においては、財務会計上、法人税、住民税および事業税として計上されるが額がこれに該当する。

当期および過去の期間に係わる当期税金は、未納額の範囲で負債として認識しなければならなず、また、当期および過去の期について支払い済みの額がそれらの年度の税額を超える場合は、当該超過額は資産として認識しなければならない。さらに、過去の期の当期税金の還付を受けるために繰戻控除をすることができる税務上の欠損金に関する便益は、資産として認識しなければならない。
5 3 3 繰延税金の認識

(1)繰延税金負債の認識

一時差異とは、ある資産または負債の財政状態計算書上の帳簿価額と税務基準額との差額をいう。資産または負債の税務基準額とは、その資産または負債に税務上帰属するとされた金額をいう。将来加算一時差異とは、ある資産または負債の財政状態計算書上の帳簿価額が将来の期に回収または決済されたときに、その期の課税所得の算定上加算される一時差異をいい、将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額を繰延税金負債という。
財務会計上、資産の認識においては、資産の帳簿価額が、将来の期に企業に流入する経済的便益によって回収されることが必須の要件とされる。資産の帳簿価額が税務基準額を超える場合には、税務上益金となる経済的便益の額は損金として認められる額を超えることになる。この差額が将来加算一時差異であり、その結果将来の期に支払うことになる税金債務が繰延税金負債である。企業が資産の帳簿価額を回収するとともに、将来加算一時差異は解消され課税所得が発生する。これにより経済的便益が納税という形で企業から流出する可能性が高くなることから、上記の特定の限定的な場合を除いて、すべての繰延税金負債を認識しなければならない。

(2) 繰延税金の資産の認識

将来減算一時差異とは、ある資産または負債の財政状態計算書上の帳簿価額が、将来の期に回収または決済されたときに、その期の課税所得の算定上減算される一時差異をいう。繰延税金資産とは、将来減算一時差異、税務上の欠損金の繰越し、および税額控除の繰越しに関連して、将来の期に回収されることとなる税額をいう。

税務上の繰越欠損金および繰越税額控除に対しては、将来その使用対象となる課税所得が稼得される可能性が高い範囲内で、繰延税金資産を認識しなければならない。ただし、税務上の繰越欠損金および繰越税額控除から生ずる繰延税金資産の認識要件は、将来減算一時差異から生ずる繰延税金資産と同じであるが、繰越欠損金の存在は、将来に課税所得が稼得されないという強い根拠になる点に留意が必要である。また、繰延税金資産の帳簿価額は、各報告期間の末日現在で再検討しなければならない。

5 3 4 測定

当期および過去の期の当期税金負債は、報告期間の末日においてしこうされまたは実質的に施行されている法定税率を使用して、算定しなければならない。
繰延税金資産および負債は、報告期間の末日における法定税率または実質的法定税率に基づいて、資産が実現する期または負債が決済される期に適用されると予想される税率で算定しなければならない。