あの、恐怖の「おはよう」事件以来

私はTを避けるようになってしまった。


Tへの一時期の熱い思いは嘘のように

すでに私のTへの気持ちは冷めきってしまった。


我ながら、なんて熱しやすく冷めやすい性格

なんだろう!と関心したほどである。



さすがのTも私の態度に気が付き始めた。


相変らずの留守電には


「どうしたの?なんで最近あってくれないの?」


等々・・・・

さみしさをアピールする伝言が残されていた。


こうなってくると、もうそんなメッセージもはっきり言って

めんどくさくなってきた。


はっきり、別れを切り出そうかとも思ったが

別れの理由が


「あんたのメルヘンな態度にうんざりなのよ!!」


なんて言ったら、たぶんTは地の底に

落ちてしまうだろう。

さすがに、友達付き合いも長かった間柄なので、

何とか、最小限のダメージで別れに持っていくため

私は悩んだ。う~ん・・・どうしよう。なんて言おう・・・。



そう、私が考えているうちに

Tも作戦に打って出てきた。


「自分から離れそうな女を再び連れ戻す作戦」だ。



ある日、Tが突然うちに現れた!


「どうしたの?」


「ちょうど近くで友達に会ってたんだ!!

んで、その友達が海外旅行のお土産にこれくれたんだけど

俺使わないから、お前にやるよ!!」


Tの手には、アタシが当時好きだった

ブランドの香水があった。


「あ、ありがとう・・・」


「んじゃ、俺明日早いから今日は帰るね!!んじゃまた!!」


とっとと、Tは帰って行った。


すぐにあたしはピンときた。

友達からもらったなんて絶対嘘だ!!

あたしの気を引くために買ったに違いない!!



なんと平凡な作戦だろう・・・・


こういうのあたしが一番嫌いなの

お前はよくしってるだろーが!!!!

これじゃあ、逆効果だっつーの・・・。


まあ、でももらえるものはもらっておこう。


あたしはなんて悪い女なのだろう・・・


昔はもっと純粋だった気がしたのに・・・

きっと都会の毒にやられたのね。

なんて、とりあえず自分を正当化することにした。



それから、ちょくちょく何かと理由をつけて

Tのプレゼント攻撃が始まった。


香水、ぬいぐるみ、アクセサリー、etc・・・

さすがの私も悪いなぁ~・・・と思いながらも


「あ、そういえばTのうちお金持ちなんだ。

確か自分の部屋の家賃も親が払ってくれてんだよなぁ~。

大して高いものでもないから、ま、いいか!!」


と思うことにして、これでTがいい気分なら

もらってあげよう!

と、変な勘違いをして私はプレゼントを受け取った。


我ながら、だんだん嫌な女になってきたなぁ~。






そして、それからまたしばらくたち

いつの間にか季節は冬になっていた。


Tとは相変わらずまだ正式には

別れず、別れを切り出せないまま

ずるずるとしていた。

仕事が忙しいという理由で

ほとんど会うこともなくなっていた。


そして、クリスマスがやってきた。

クリスマスは私も仕事、

Tもすごく忙しい時なので

Tも会おうとは言ってこなかった。


私は、Tのこともあまり考えなくなり

とにかく仕事に熱中していた。


クリスマスなんてどうでもよかった。

そのくらい仕事に打ち込んでいた。


クリスマスの夜、疲れてうちに帰り

テレビをつけたら、クリスマスの特番がやっていた。

その時までクリスマスに気がつかなかったくらい

その年はクリスマスのことを全く考えていなかった。


クリスマス番組を見ながら


「あ~ぁ、Tがもっといい男で

普通に付き合っていたら、今日は楽しく

過ごしていたりしたのかしら・・・

そろそろ、決着つけなきゃなぁ~。

いつまでも、こんな状況じゃだめだよな~。」


そんなことを思いながら私はうとうとと寝てしまった。


そして、突然!夜中に玄関のチャイムが鳴った!



「ま、まさか・・・・!」


そーっと戸をあけると

案の定Tが立っていた!!


「メリークリスマス!!」


「わ!!どうしたの!仕事すごいいそがしかったんでしょ?」


「うん!でも何とか終わらせてすぐきた!!

クリスマスだもん!どうしても会いたくてさ!

突然来てごめんね!驚かせようとおもって!!」


ホントに驚いたよこりゃ・・・。いろんな意味で。

さすがに、追い返すわけにもいかずとりあえずうちに入れた。


「今日はクリスマスだからこれっ!!」


うちに入るなりTは大きな紙袋を私の前に差し出した。


「えっ?!なにこれ」


「プレゼント!!」


「あ、ありがとう・・・でも私、忙しくって

何にも用意できなくて・・・」


「いいよ!そんなの!とりあえず開けてみて!!」


私は、とりあえず紙袋を開けた・・・


そこには・・・・

私がずっと前からほしがっていたブランド物のバックが入っていた。

まだ、Tとラブラブだったころ雑誌を見ながら、ほしいんだ~と

私が言っていたのを覚えていたようだ・・・。


「え!!なにこれ!!こんな高いものもらえないよ!!」


確かこのバックは20万位するものだった・・・

私の給料約1か月分だ!!!ガーン



「いいの!いいの!!クリスマスなんだから」


「でも・・・」


さすがに私は迷った。

値段が値段だけに簡単にはもらえない。

でも、この状況でいらないといったらTはどん底だろう。


でも、もらったらTから逃げられなくなるかも・・・


どうしよう・・・・・

困ったことになってきたぞ~こりゃあ・・・



続く・・・



あの電話の一軒以来、

私は毎日モヤモヤした気持ちを抱えたままでいた。


私はもうTのことがもう好きじゃないのか?


Tを好きになったのはつらい時に

Tの優しさに勘違いしただけなのか?


それともまだTのことが好きで

でも、私がわがままなだけなのか・・・



考えても考えても答えは出なさそうだったので

私はこうすることにした。


「しばらくTのことを考えるのはよそう!!

Tに会うのもしばらくよそう!!

それで、しばらく時間がたって

好きならきっとさみしくなって自然にTのことを

考えるだろうし、会いたくもなるだろう。

もし、そうならなければ・・・

それまでだ。また、ただの友達に戻るまでだ。」


そう、思ったらなんだか少し気が楽になって

私は、またいつも通りの生活に戻った。


そして、Tには


「今、すごく大事な仕事を与えられて

大事な時だから、しばらく会えなくなると思う。

ごめんね!」


と伝えた。


実際、仕事に慣れ始めて少しづつ

仕事の流れが冷静に読めるようになってきて

そして、だんだんに周りの人たちも私を

認めて来てくれるようになり

少しずつ、ひとりで仕事が

任せられるようになってきていた。



私の仕事が楽しくなっていくのと

比例していくように、

Tの私への態度がさらにエスカレートしていった。


あの一軒以来しばらく電話がなかったのだが

また、電話が来はじめた。


「さみしいよう・・・会いたいよう・・・」


そんなメッセージばかりが留守電に残されていた。


あの、頼もしかったTはどこへ行ってしまったのだろう???


恋をすると男は弱い者になってしまうのだろうか???



そして、わたしのTへの気持ちがどんなものなのか

はっきりとする事件がある日起きたのだ。




あまりにもさみしそうなので、かわいそうになり

久しぶりにTのうちに泊まりに行くことにした。


そして、次の日の朝その事件は起きた。


グーグー寝ていた私は

ふと、何か視線を感じて目を覚ました。

ゆっくりと眼をあけると・・・


Tがにこにこしながらじっと私を見つめていた。

そして、私の鼻を「チョンッ!」と人差し指でつつき


「お・は・よ!!お前の寝顔見るの久し振りだから

ずーっとみてたんだ!!」




さ・む・い・・・!



さむい!!  


さむい!!!



アタシが好きになった男はこんな

三流メルヘンドラマチック男じゃな~~~い!!


なんだ!これは!あたしはまだ夢をみてるのか!!


あの夜の頼もしかったTはひとカケラもなかった。


いつの間にこんなふにゃ男になってしまったのだろう・・・


もしかしてアタシのせい???

それとも元からTはこんなだったのか?

あたしが気がつくのがおそかったのか??


でも、もうダメだ!無理だ。


これ以上Tと付き合っていくのは無理だ!!


私は、男らしい男が好きだ。ちょい悪位が好きだ。

しかも私は基本ドMだ。

こんなに優しくされてはもう精神的に持たない・・・


私は、苦笑いを浮かべながら


「よ、用事思い出したから帰るね・・・

ごめん!」


と言い残し、Tの家からそそくさと立ち去った。



続く・・・・









相変らずTからは毎日電話がかかってきていた。


「おつかれ!!今日はどうだった?

なんかあった?」


あたしの生活はいたって平凡なんだから

そんなに毎日報告するようなことないよ・・・

とほほ・・・



疲れてしまって寝てしまい、電話に気がつかない夜は

朝起きると、Tからの着信履歴が何件もあった。


まだ、その当時はメールもなかったので、

電話に出れないと・・・


「どうしたの?どうして電話でないの?

体の調子でも悪いの??」


と必ず留守電にメッセージが残されていた。



心配してくれるのはすごくありがたい。

でも、眠くてどうしようもない時もあるのだ!

どうか、ほっといてねかしてください!!


大体、こんなに毎日話もしてるし

付き合う前から、ずっと友達同士だったわけなんだから

アタシの性格しってるじゃん!!

私は連絡豆じゃないし、ものすごいめんどくさがり屋なのだ。


小学生のころも、毎日提出しなければならない

日記帳も、よくめんどくさくて書かずに、先生に

怒られていた子なのだ!!



世の中の、彼氏彼女は毎日連絡をとるのが

当たり前なのだろうか???


私が変わり者なのだろうか・・・?!



ぐだぐだ考えていてもしょうがない!!

Tときちんと話し合おう!!

そうだ!!あたしたちは付き合っているのだ!

遠慮は禁物だ!!



ある日、私は思い切ってTに話をした。


「あのさ、心配してくれるのはありがたいんだけど

毎日電話しなくてもいいよ。

なんか、用事があるとか、休みの日の予定を

決めるとかあれば別だけどさ~。

ほら、それにお互い電話代もかかるしさぁ~

休みの日にほとんど一緒にいるんだから

その時にまとめていろんなことはなせばいいじゃん?

今度からそうしない・・・?」


「え?!それって・・・俺からの電話が迷惑ってこと?」


「いやいや!!そんなんじゃないよ~!もうっ!

ただ、あたしも、あんたも仕事で毎日疲れてるんだからさ

夜は早く寝たほうがいいかなって思ってさ。

電話で話すとなんだかんだ長電話になっちゃうし・・・」


「だって・・・。毎日お前の声聞きたいんだもん。

付き合ってるんだから、毎日声聞きたくなるの

しょうがないじゃん・・・。

お前の声聞きかないと、次の日がんばれないんだよ~」


そういわれちゃあなぁ~・・・・



私もつらい時にTに励ましてもらった。

Tのことが好きなら私もTもことを励ましてあげなくちゃ・・・


「うん・・・そうだね・・・

なんか、ごめんね。あたしも迷惑なわけじゃないんだ・・・

ただ、ほら、Tも知っての通りあたし昔っから

めんどくさがり屋じゃん。

だから、疲れてると電話で話すのがめんどくさくなっちゃってさ・・・

でも、Tのことが嫌いになったりしたわけじゃないよ。

ほんとだよ。」


「うん。わかってるよ。俺も毎日電話しちゃってごめんな。

お前が疲れてるわかってたんだけど・・・ついな・・・。

これからは、電話はたまににしよう!」


「ううん。誤らないで!!声聞きたくなったら

いつでも電話していいんだよ!

あたしもそうするから!!ねっ!

んじゃ、とりあえず、きょうは遅いからもう寝よう!!

お休み!!」


「うん。お休み・・・」


その日はそれで電話を切った。




なんだか・・・・




きまづい・・・・・



なんだろ、これ。



あたしは、Tのこと・・・・好きだよねぇ・・・




続く・・・・