いやはや、久しぶり過ぎてもはや誰も見てないと思われる俺のブログ。
独り言程度に書いていきますかい。
長い独り言になりそう。
さてさて、書き始めるんだよおっかさん。そして怖い話ときたもんだ。
あんまり怖くないけどね。
はいはい。では書きますよ
平兼盛が詠んだ
「みちのくの 安達が原の黒塚に
鬼こもれりと聞くはまことか」
という歌で知られる鬼婆のお話
昔、それはもうすごく昔の話
京のとある御屋敷に乳母として奉公していた岩手という女性がおりました
でもその御屋敷の姫様は生まれつきの病でね、5つ数える歳になっても口がきけなかったそうな
屋敷の旦那様と奥様はいろんな医者に診てもらったのだけど、どの医者も「これは生まれつきですね」の一言で終わってしまいます。乳母の岩手も姫様をなんとかして助けてあげたいなーと思いました
きっと自分にも幼い娘がいたから不憫に思ったんだろうね、優しいね岩手
なんとかしてあげたい気持ちでいっぱいの旦那様と奥様は今度はたくさんの占い師に相談したそうな
そして占い師の1人が言いました
「妊婦の腹にいる胎児の生き胆を食わせよ!さすれば病はたちまち治ろうぞ!」
胎児の生き胆?!はて……
どうしたもんか…旦那様と奥様は考えた
「そうだ!岩手がおるではないか!」
さっそく岩手を呼びつけ
「姫のためにどうか、赤子の生き胆を手に入れてはくれんかえ」
ひぃぃ…恐ろしい…なんて恐ろしいコトを言うんだろう
顔が青ざめる岩手
しかし奉公の身である岩手は旦那様と奥様に哀願されて断りきれず、泣く泣く旅立つことに決めました
可愛い我が娘には
形身代わりに御守りを残して…
[母 岩手]と書いた御守袋を首からぶら下げ幼いながらも追いかけてくる娘に頬ずりをして涙を流しながら旅立ちました
行けども行けども、赤子の胆なんてみつかるわけがない。
旅に出て、それはもう長い年月が過ぎて、気づけば京からほど遠い安達ヶ原というところまで来てしまいました
あてもなく歩いても仕方がないので
ここいらで休めるところを見つけて旅の女や妊婦を待つコトにしました。
ちょうどいい岩屋を見つけてそこに住みつきました。
それからまた長い年月が経ち
美しい姿だった岩手も白髪混じりの婆様になっていました
そんなある日、「すみません、旅の者です」という声が外から聞こえました
外を見ると旅装束の若夫婦が立っていて
「この野原で道に迷ってしまいました、妻は身重でもう動けません。どうか一晩泊めてください」
m(_ _)m
岩手は女の方に目をやるとぷっくりと出たお腹を見て心の中で喜びました
それはもう飛び上がりたいほどに
長年待った甲斐があったと
この長い年月がやっと報われるのだと
岩手は高ぶる気持ちを抑えながら
「それは大変だったろうに、ゆっくり休んでいくといい」
と、囲炉裏の横に藁の布団を敷き女を休ませました
しばらくすると女は腹痛を訴えました
岩手は男に親切そうに言いました
「安達ヶ原の峠には薬や安産祈願の御守りなんかが売ってるから買って来て飲ませたら良くなるんでないかい?」
さっそく男を峠の薬屋まで案内したところで
「薬を作るのに少しばかり時間がかかるでな、お前さんの妻も身重一人で心細かろうて。一足先に戻るわ」
といい男を薬屋に残し岩手ひとり一足先に岩屋へ戻りました
岩屋へ戻ると、調子はどうだ?と女に言いました
あまりよくない様子で横たわる女の隙を見て隠し持っていた出刃包丁を取り出しました
背中めがけブスリとひと突きにしました
それから腹を裂いて中から胎児を取り出し胆を手にしました
やっと手に入れた
あぁこれでやっと京に帰れる
長かった…
…男が戻ってくる前にこの女をどうにかしなければ
そう思って女の身体に手を掛けた時首に何かあり それを見て岩手は絶望します
それは可愛い我が娘に旅立つ前に首に掛けてやった御守りなのでした
ああっ、なんとしたことか!
自分の娘を手に掛けてしまった!
あぁ…ああ~…
岩手は頭をかきむしり泣きました
泣いて泣いてとうとう岩手は気がおかしくなってしまいました
旅の人が来る度に殺しては喰らう
それを繰り返し岩手は本当に鬼婆になってしまいました
それから月日が経ったある秋のこと
東光坊祐慶という熊野の高僧が修行僧として安達ヶ原まで遥々やって来ました
安達ヶ原はだだっ広い大草原
それに加え秋の日は短く
日が沈みかけた薄暗い安達ヶ原には宿をとる廃屋さえ見当たりません
長い道のりを歩いた東光坊祐慶の足は一歩も動けないうえにもう何日も物を食べていません
そばにあった岩に寄りかかり絶望する祐慶はお経を唱えました
するとはるか彼方に一点の火が見えました
それはあの岩手の住む岩屋だったのです
祐慶は助かると思い岩屋へ向かい
「旅の者です…どうか一晩だけ泊めてはくださいませんか」
戸を開けた岩手は一目で坊様だとわかりました
「どうぞお上がりなさい、うちには何もないが暖をとるだけなら…」
そう言って岩手は囲炉裏に薪をくべる
しばらくすると薪がなくなったので岩手は言いました
「ちょいと裏の木小屋に薪を取りに行ってくるから、その間、そこの戸を開けないでおくれ!老婆の一人暮らしなもんで、散らかっているから絶対に覗かないでおくれよ!」
と絶対に覗かない様に力強く言うと木小屋に向かい出ていきました
祐慶も人の子、坊様といってもあれだけ見るなと言われたら、気になってしかたがありません
興味津々で戸に近づくとものすごい腐敗臭
南無三!
戸を開けると信じられない光景が目に入りました
壁は血に染まりいくつもの血まみれの四肢やはらわた、白骨が山積みになっていました
「ここがあの安達ヶ原の鬼婆の棲家だったか!」
祐慶は驚き一目散に岩屋から逃げだしました
次に喰われるのは自分だと思いひたすら走りました
しばらくしてから小屋に戻ってきた岩手は戸が開いていることに気づき
「見たな!あの坊主!絶対に見るなと言ったのに!」
と怒りを露わにし、鬼の形相で祐慶の後を追いました
髪を振り乱し
包丁を振りかざし
破衣の小褄を手挟んで
ものすごい速さで追いかけます
…もはやこれまでか
観念した祐慶は笈から如意輪観世音菩薩を取り出してお経を唱えました
すると如意輪観世音菩薩が宙に浮かび手には光の矢が出ました
その光の矢は白羽の破魔矢となり幾千もの矢となり鬼婆 岩手の胸元を貫きました
岩手は自分の娘と孫を手に掛けた生き地獄からようやく解放されたのです
祐慶は救ってくれた観音様を祀り
村人達が岩手を哀れみ葬ったその場所は
今も黒塚と言われています───。
━━━おしまい━━━━
というお話、なんて怖ろしく悲しいお話なんでしょう…
この岩手って女性はきっと生真面目だったんだろうね。なんか岩手の心情を思うと切な過ぎてツライわ…
久々のブログなのにながながと失礼しました笑