今夜もこの家に明かりが灯った。
ワタシの飼い主一家の団欒が始まる。
美味しそうな夕食の匂いが漂ってくる。
楽しそうな笑い声が聞こえる。
ワタシはそれを窓の外からじっと眺めてる。
いつもの光景、もうずっと前から。
ワタシがこの家にやって来たのは子供の時で、
その頃はワタシも家の中で暮らしていた。
でも成長してからは、この庭の隅に作られた
狭い犬小屋が、ワタシの住処になった。
そして、いつもここで短い鎖に繋がれている。
1日1回のご飯と、お水は器がカラになって
だいぶ経ってから、やっと気づいてもらえる。
お散歩はいつから行ってないか、
もう覚えていない。
名前を呼んでもらえることも、
ほとんど無くなった。
ワタシがこの一家に忘れられた存在に
なってから、随分時間が流れた。
ワタシは年老いた…。
あんまり歩くこともないから、
足腰も弱くなって体力もなくなった。
体もあちこち痛む…。
一日中寝ているしかない生活。
おそらくこの冬を越し、
春を迎えることはできない。
そんな気がしている…。
ワタシは残された時間も、こうして日が暮れて
この家に明かりが灯るのを、ただ見続けるだけ。
そして、昔のようにワタシがこの一家の団欒に
加えてもらえることは、もうないだろう。
家の灯火は明るくて温かい。
でもワタシの命の灯火は、この寒空の下、
冷たく凍りついていくだけ。
もしかしたら、このままこの家の明かりが消え
一家が寝静まる頃、一緒にワタシの命の灯火も
消えるかもしれない。
誰にも気づかれないまま…。
***********************
ネグレクトという長期間に渡る動物虐待。
彼らの心身をどれだけ傷つける行為なのか、
今一度お考えください。
そして、ネグレクトするくらいなら、
最初から動物は飼わないことです。
飼うならば、最後まで責任を持って
飼育してください。