近所から聞こえてくるピアノ…
俺が初めて、いや最初で最後の親に言った
わがままはピアノを習いたいだった
どんなことより1番興味が湧いた
保育園のとき、先生が弾いているのを見て
どこが憧れるような気持ちで聴いていた
初めて人を好きになったとき
ピアノを弾いてる姿を見て一目惚れだった
楽しそうにピアノを弾いてる姿を見て
きっと憧れもあいまって
好きになったのだろう…
よくよく思い出してみると
自分が好きになった人全員が
何かしら楽器を演奏できる子だな
近所から聞こえてくるピアノで
気付かされるのはちょっと複雑な思いだが…
初めてわがまま言った時の
親の顔と言ったらなんとも笑える
俺が唯一覚えてるその顔は
初めて彼女を連れてきたときと同じだったな
どうでもいいか…
毎日のようにピアノを
習いたいとねだったものだ
だが親は決まって同じことをいう
ピアノは女の子が習うもの。
たった一言のそれだけで否定された
このときほど女の子に生まれたかったと
思ったことはないだろうな…
それ以来ほとんどわがままなんて
言わなくなったっけ…
言うだけ無駄。
どこか諦めきったその気持ちは
そのときからこの今の今まで
ずっと変わらないものだ
全く世話がかからなかったと
親は嬉しそうに話してるが
ただ単純に俺が失望して
なにも言わなくなっただけのことだ
必要なことを必要な時だけ言う。
無駄なことは言うだけ無駄なのだから
最初から気にせず言わなければいい。
察することができないのが悪い。
俺の中でそんな定義ができた…
わがまま言わなくなった代償は
自分に大きく返ってきた…最悪の形で…
言わないようにするには
とにかく興味を持たないこと
そんな風に持論を持ち出した頃
様々なことに興味、関心がなくなった
作り笑いな毎日、人への失望
信用・信頼の欠如、感情の欠如…
人として大事なものを押さえ込んで
そして消えていった…
今、大好きな音楽に
興味が失せかけてるように…
「好きだった」はずなのに…
朝起きて気付けば忘れてしまってる
なにか喪失感はあっても何かはわからない
そしてときたまふと思い出すのだ
好きだったはずなのに
もう好きではなくなっている
気づけた時の喜びとは裏腹に
失ったことへの悲しみに支配される
日を重ねる事に消えていく
俺はやはりダメ人間なのだろう
どんなに大切な人であっても
関係を切るときはバッサリ
なにもかも忘れる
写真も思い出の品もなにもかも
捨てて、忘れて存在すら消えていく
ふと思い出しても顔が
うっすら浮かぶくらいで名前はまるでダメ
ほとんどなにも思い出せず
忘れていたのだから
どうでもいいことなのだろうと
まぁいいかで済ましてしまう
悲しい人…寂しい人…孤独な人…
そんな俺にいろいろなことを
思い出させてくれた彼女も…
俺は忘れてしまうのだろうか
必死で振り向かせようと頑張ったことも
初めて好きだと返してくれて喜んだことも
妬いて悲しくなったことも
涙しながら別れの話をしたことも…
忘れちゃうのかな…
好きって気持ちもいつか…
そう思うと寝ることが怖くなる
これがきっと不眠症の原因なのだろう
好きな人に膝枕だとか添い寝、
手を繋ぎながらじゃないと
安心して寝れないのもそのせいなのだろう
今までのことが全て返ってきた…
最悪の形で…。
気持ちの整理ができてしまったとき
きっと恋なんてものも忘れるのだろう
涙を流すなんてこときっとなくなるだろう
まるで人形だなと自分のことを嘲笑う
ただ動くだけ。
人を思うことすら忘れたら
ほんとうに人形劇の始まり…
悲運な俺の人生の中に
どれだけの幸せに気付けるだろうか…
ささいで誰もが当たり前だと思うことを
俺はどれだけ幸せなことだと
感じれるだろうか…
人には人それぞれの幸せがある
幸せの感じ方がある
俺は失いすぎたからこそ
当たり前な幸せを知れたのだろう
意地悪だよな…
死んだとき…どうしてやろうか……
