縮まれば離れ、遠ざかったと思えば近づいてくる。

扉を隔てて別の部屋で眠り、お互いに拘束されることなく、時間を過ごしていたとき。
そんなときは、決してからだが触れ合うことはなかったけど、同じ話題で笑い合って、同じ道を散歩して、同じ速さでお互いのことを知ることができた。


いまは?


会うたびにからだを重ねて、キスやハグで相手の存在を確認しあって、同じ布団で眠る。
笑い合うこと、散歩をすること、知っていくこと、
こんな小さなことがどんどん少なくなり、新しいことが なにも増えていないことに気づく。

知ったことといえば、
頬の柔らかさ、
腕の硬さ、
どこを触られるのが嫌で、
どこが気持ちいいのか。
そんなことばかり積み重なる。

からだの距離は遠くても、こころが近くにあると感じられた日々。
からだの距離ばかり縮まり、こころの距離を詰めることができない日々。


小さな約束がほしい。
小さな発見がほしい。
2人だけが笑い合える小さな種がほしい。


こんな風に思うことはおそらくわがままなのだろう。
そう気持ちに蓋をして今日もわたしは好きな人の腕の中で眠る。