宿命というものは確かにある

人は場所・時代・環境を選んで生まれることはできない…

ゆえに生まれた瞬間にそれぞれの人間の生きる条件は異なっている

これが宿命です

そして

世界が残酷なのは当たり前のことです

生の始まりは化学反応にすぎず

人間存在はただの記憶情報の影にすぎず

魂は存在せず

精神は神経細胞の火花にすぎず

神のいない無慈悲な世界でたった一人で生きねばならぬとしても…なお…

なお

我は意志の名の元に命じる

「生きよ」と

君はまだ若い

世界のカルマの負荷に膝を屈するのもやむを得ぬかもしれない

悪を目指すも良し

善を目指すも良し

道を探るのもいいでしょう…

しかし生きていなければ

生きていなければどんな才能でも実を結ぶことは決してないのですよ
高校に入って初めてのクリスマス。

付き合い始めて、一週間。

友達を集めてクリスマスパーティーをすることになった。

別にキリシタンなわけじゃない。

ただの飲み会。

途中、2人で抜け出し、自分の部屋へ。

なぜかは忘れてしまったが、2人は布団に居た。

女性と同じ布団に入ることなど、人生初のこと。

心臓はバクバク。

平静を装い、普通な会話をする。

すると、部屋をコンコンと誰かがノックした。

母だ。

僕は顔を布団に沈め、2人とも寝たフリをした。

母はすぐに出て行った。

後で聞いたのだが、母はこのとき、女の子が2人寝ていると思ったらしい。

母が去った後、僕は彼女に『キスしていい?』と尋ねた。

すると彼女は「いいよ。」と言って目を閉じる。

僕はそっと自分の唇を彼女の唇にあてがい、キスをした。

ずっと息を止めていた。

息の音もせず、2人の心臓の鼓動が、どこからともなく互いに伝わった。

しばらくして、飲み会にもどった。

今でも忘れられない、忘れられない夜になった。
初めて付き合ったのは、高校1年の冬。

誕生日の1週間前。

初めての彼女だからか、一番記憶に残っている。

隣のクラスの子。

付き合う前、学園祭で女装するからって、制服を借りた。

でも、恥ずかしくって、すぐ返したっけ。

放課後、一緒に居残り勉強をするようになって…

もちろん、自主的にね。

一緒に帰る日もあった。

駅まで送って行った、電車が来るまでの時間がすごく幸せだった。

ある雪の降る夕方、いつも通り駅で電車を待っていた。

「手、大丈夫?」と彼女が僕の手を握る。

『大丈夫だよ、Iちゃんこそ大丈夫なの?』と僕が言う。

それから彼女はしばらく黙って僕の手を握り、ふと口を開いた。

「私、Tくんが好き。」

『僕もIちゃんが好きだよ。』

「…」『…』

『付き合おっか?』

「うん。」

『明日から、朝迎えに来てもイイ?』

『うん。』

それから電車が来るまで、ずっと手を握り合っていた。

短い人生でこの時ほど、電車が来なければいいのにと思ったことは無い。

1年4ヶ月の想い出。