5月10日、父の余命が3ヶ月といわれた。
これまで何度か余命宣告を受けてきたけれど、どれも漠然としていた。
これまで、余命宣告を受けても、目の前にいる父がそんなわけがないってどこかで思ってた。
けれど、今回は違う。
目に見えて父がもうそれほど長くないのが分かる。
3年前に祖母を自宅で看取った。
祖母も末期癌だった。
くしくも、今、祖母と同じ状況である父。
黄疸って言う症状が出て、皮膚が黄色い。
そして、目が黄色い。
おしっこは茶色い。
便が白い。
体重も50㌔を割り、尾てい骨がつかめる程やせこけている。
食欲もほとんどなく、固形物を入れると戻してしまう。
オキシコンチンというアヘンアルカロイド系麻薬の痛み止めの服用も1日2回に増えた。
これは、一般的に言うモルヒネ。
余命宣告を受けてこれまでの3週間、毎週日曜日になると我が家には人が集まった。
これが最後になるかもしれないと、毎年暖かくなると我が家でするバーベキューもした。
お墓参りにも家族で行った。
パチンコにも行った。
パチンコに行くと、いろんなことが忘れられると言うから、ついつい時間があると連れて行ってしまう。
私は、末期がんビンボー。
だけど、もう今後父がパチンコに行くことはないだろう。
きっと、もういけないだろう。
長く座ってることすら出来なくなってきた。
先日は親戚が集まって、巻き寿司パーティーなるものもした。
6月10日に、小学校時代からの友達の結婚式がある。
それには両親も呼ばれていて、何とか結婚式には出たい。
それが、父の今の目標。
訪問看護も来てもらっている。
いろんなことがこの1ヶ月で起こった。
現実を受け止めるとかどうとか言っている余裕はなく、ただ過ぎていく毎日の時間の流れがあまりにも速く感じている。
昨日の夜、私は眠れなかった。
これまでそんなことはなかったんだけれど、急に怖くなった。
私が産まれてから当たり前に存在していた父が、いなくなる。
父がいなくなることが急に怖くなった。
今日、仕事をしながらもそのことが頭を離れなかった。
そんなことじゃいけない。ちゃんと切り替えなきゃって思うのに、難しかった。
家に帰ると、今日はいつになく調子が悪い。
昼に冷麺を食べてから具合が悪いらしい。
夕食も食べなかった。
少しして、アイスクリームを半分くらい食べた。
父の皮膚には水分がなくって、きっと脱水症状も起こし始めているんだろう。
もう、父が病院に行くことはない。
父は、最期まで家で過ごすのだから。
さっき、父の体のマッサージをした。
骨と皮だから、これまでのようにツボを押したり、揉んだりは出来ないけれど、血の巡りがよくなるように、マッサージをした。
手のマッサージをしていると、父が言った。
『わしが死んだらこの指輪姉ちゃんにやる』って。
父がずっとしていた18金の指輪。
父は、自分がもう長くないことが分かっている。
だけど、そんな言葉が出るのは初めてだったから、涙が出そうになった。
必死で涙をこらえた。
あとどれくらい父と話が出来るんだろう。
父と過ごせる時間はどれくらいあるんだろう。
そんなことを考えつつ、重たいかもしれないけれど父との日々をつづって行こうと思います。