そして抜け殻になって1ヶ月後……

新しい担当を発表されました。

その子は生まれて数日で乳児院にきた赤ちゃんでした。

(この子のことをちびちび王子とします。)

私が担当になった時、ちびちび王子は生後2ヶ月でした。

まだ首も座ってない小さなこの子を担当させてもらえることは、喜びと不安と、この先に迎えるお別れの日のこととで、とても複雑な気持ちでした。


だけど担当になって1ヶ月もしない間に、この子は私を特別な存在だと認識し、他の職員が抱っこしても泣き止まなかったのに、私が抱っこすると泣き止んだりしました。

言葉も通じない赤ちゃんなのに本当に不思議です!!


ちびちび王子はこれといった問題もなく、発達も順調でした。

ただ、ちびちび王子は秘匿ケースで、両親はちびちび王子がどこにいるのかさえ教えてもらえず、ここにいることがバレないようにする必要がありました。

なので、保護者にお手紙もださなければ、運動会や遠足などの行事ももちろん来ない。

ましてや面会にも誰も来ないというケースでした。

ちびちび王子は1歳をすぎ言葉を話せるようになった頃、なぜ自分には、誰も面会に来ないのか、遠足や運動会にも誰も来てくれないのかと、周りの子と比べて職員に尋ねてくるようになりました。

私はこれが1番辛かったです。

必死に言い訳を考えたりして騙していました。


そしてちびちび王子も途中からは聞いてこなくなり、親が来ない分、今まで以上に私に甘えたり、試し行動をするようになりました。

(試し行動とは、いたずらなどをして、どこまでなら自分を受け止めてくれるのか?と試す行動のことを言います。)


そんなこんなで他の子よりも私に依存するちびちび王子でしたが、担当してから2年3ヶ月後、ついにあの日がやってきました。

措置変更です。


もうしっかり会話も出来るようになったちびちび王子でしたので、措置変更とは、どういうことなのかも、きちんと説明しました。

毎日毎日説明して、ついにその日を迎えました。


ちびちび王子は覚悟を決めた顔をして、乳児院をでました。

王子の時とは違い、「また絶対会いにくるからね」と最後の挨拶をすると「絶対やで!!待ってるからね」と言われ、指切りげんまんをしました。

お互いうっすら目に涙をためながら、なんとか泣かずにバイバイすることが出来ました。


そうして私は別れる強さも少し手に入れることが出来ました。

赤ちゃんから見守ってきたちびちび王子は本当に自分の子ではないのか?と思うほど、仕事が休みの日でも今日は何してるかなー?と気になるほど特別な存在になっていました。


でも王子との決定的違いは、保護者と絆を深めることが出来ないちびちび王子には、面会に行けるということでした。

またいつでも会いに行けるからお互い泣かずにバイバイできました。


ちびちび王子は、王子との別れで抜け殻になった私に生きる希望をくれました。

この子がいなかったらきっと本当に退職していたと思います。


そして今でも可愛い可愛いちびちび王子です💕