夫は5年ほど前に30年近く勤めたIT企業を辞めて、介護業界に転職した。
そこには8年前に亡くなった母親の存在が大きく影響していたのだと思う。
生きていたらそろそろ介護が必要な頃。
亡くなる前にひどいことを言ってしまったとずっと後悔していた。
介護に転職するのは母親の弔いと、やがて自分達がお世話になる世界の仕組を知っておきたいとのことだった。
まったく違う職種に相当苦労していたと思う。
苦労しながらも、ゆくゆくは自分で事業をおこしたいなんて言っていたのに…。
ただ、転職してからは圧倒的に時間的余裕ができた。
前職は片道一時間半、終電で帰ることもしばしば。
転職後は片道10分、夕飯前に帰宅。
一緒にいられる時間がかなり増えたのが嬉しかったな。
早く帰れるからと言って素直にまっすぐ帰ることはあまりなかった。
いつも、途中のコンビニでお酒を買って飲みながら、時には何時間もかけて帰ってくることも。
早く帰ってくればいいものを、なぜ?と気持ちが理解できなかった。
でも…今になって初めて理解できるようになった。
大切な人をなくした悲しみは、仕事の帰り道のホッとしたとき、周りに人のいない夜道で急に襲ってくる。
まっすぐ帰宅してなんでもないふりをするのが辛いんだ。
私も同じ気持ちを味わってみて初めて夫の心の痛みを理解することができた。
色々相談してくれたけど、私のアドバイスなんて重みのない薄っぺらい言葉だったな。
「過去のことをいくら悔やんでも過去を変えることはできないんだから、未来のことを考えよう」
今自分に言ってみたところで全然響かない。
だけど、言い聞かせるしかない。
後悔に焦点を当てないで、良い思い出に感謝しよう。