原田said

ここは欅軍隊員寮の理佐と私の部屋。

渡邉「葵、お風呂上がったよ」

原田「うん」

お風呂上がり。

タンクトップ姿でミネラルウォーターを飲みに冷蔵庫に直行する姿はもう見慣れた。

それと同時に心が締め付けられる。

原因は理佐の背中にある大きな傷跡。

右肩から左の脇腹にかけて一直線に走る一本の傷。

そして、その傷を作る原因になったのは私。

原田「はぁ…はぁ…」

あれ?

なんか息苦しい…

いつもは思い出すだけでこんなことにはならないのに。

原田「…は……はっ…」

目の前が歪んで真っ直ぐ立てない。

テーブルの端を掴んで耐えようとしたけど上手くいかない。

原田「ぐ…うっ…」

視界が真っ暗になって身体が崩れ落ちるのが分かった。



誰かに抱きしめられる。

道路に横たわる誰かの身体。

何かを握り締めて走る私。

大きな建物に着いてそれを誰かに渡す。

徐々に周りが慌ただしくなる。

何故か自分が泣いている。

誰かにしがみついて_



渡邉「葵!」

理佐に肩を揺さぶられた。

閉じていた目を開いた。

原田「…はぁ…はぁ…」

渡邉「葵、大丈夫?」

なんでこんなに息が切れてるんだろう。

なんで私は床に寝てるんだろう。

なんで、理佐がそんなに心配そうな顔してるんだろう。

原田「理佐…」

渡邉「起きれる?」

原田「うん…」

身体を起こすと、息苦しさは少し残るけどなんともなかった。

原田「最近任務続きだったし、疲れてたのかな?」

渡邉「…明日一日休もうか?」

原田「大丈夫だよ、これくらい」

渡邉「でも…」

原田「一人に、なりたくないの…」

渡邉「…っ…無理しないでね」



渡邉said


守屋「ん?葵?いいけど、何かしたの?」

翌日、やはり心配になり葵の班の教官である茜に葵を見ててと頼みに行った。

渡邉「なんか、その…フラッシュバックしてるみたいで」

守屋「あーなるほど」

渡邉「本人は何のことか分かってないんだけど…」

そこまで言うと茜もなんのことか分かったらしい。

守屋「そっか、もうそんな時期…」

葵が倒れたのはこれが初めてではない。

葵はこの時期になると決まって体調を崩す。

それは数年前に起きたある出来事のせい。

守屋「私たちですらトラウマになりそう出来事だったのに、葵はまだ小さくてしかも間近で見てたからね、こうなるのもしょうがないよ」

渡邉「ごめん…」

守屋「いや、そういう意味で言ったんじゃなくて」

これは絶対、私のせいだ。

守屋「とりあえず、明日から葵は任せて」

そう言ってくれた茜にお礼を言って、明日の任務の準備に取り掛かった。



平手said

平手「帰ってきたらまた皆で話そう」

渡邉「うん」

平手「戦闘にはならないとは思うけど、気をつけてね」

渡邉「大丈夫、三日で戻るから」

平手「まあ理佐だから大丈夫かな」

渡邉「ふふっ、じゃ、いってきます」

皆で集まってから週が明けて、理佐が任務に出た。

今回は少し離れたところにある大国、乃木国に派遣しているスパイと情報交換をするために国境近くまで接近する。

理佐は防衛部員の織田中佐と共に諜報部員を警護する。

平手「…」

理佐がいるから大丈夫。

皆無事で帰ってきてくれる。

なのに、さっきから胸騒ぎが止まらない。

昨日の葵の話を聞いたからだろうか?

あのとき葵は小学生だった。

まだ心の傷が完全に癒えているわけではない。

平手「理佐…」










 
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いつも読んでくださってありがとうございます!
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CPリクエストも進めておりますのでもう少々お待ち下さい。
それでは、次回も是非読んでください!
これからもよろしくお願いします!