渡邉said

志田「すー…すー…」

ここは基地内の総合病院の一室。

あの作戦から帰還中、愛佳は銃創から来る高熱で倒れてしまった。

案外出血がひどく、戻ってすぐに上村二等兵と共に病院に担ぎ込まれ、止血の緊急手術を受けた。

今は落ち着いて寝ていて、そろそろ麻酔が切れることだろう。

渡邉「…」

無意識に愛佳の頭を撫でていた。

さらさらだなー。

渡邉「…馬鹿かよ」


きっと愛佳は後援に私が来ることが分かってて茜を庇った。

そうじゃなかったら得意の剣術で弾を弾いてたはずだから。

でもそれは、後ろにいた小林少佐と上村二等兵の方に飛んでいく危険性もあるということ。

一時期医療部の訓練兵だった私が来ると分かってたから自分が怪我をする事を選んだんだ。

一緒にいたのが梨加ちゃんで本当に良かった。

渡邉「ったく、自分のこともっと大事にしてよ…」

コンコンッ

渡邉「はい」

ガラッ

渡邉「てち」

平手「愛佳、どう?」

渡邉「ウザイぐらいに落ち着いてる」

平手「ふはっ…確かにいつもの愛佳に比べたらすっごい静かだね」

渡邉「茜は?」

平手「友香のところ、でもすぐ来るって」

渡邉「そっか、葵は?」

平手「さっきメールしたよ」

じゃ、すぐ来るか。



平手said

コンコンッ

ガラッ

渡邉「お、来た」

平手「おかえり茜」

守屋「うん…愛佳は?」

渡邉「命には別状無いらしいし今は落ち着いてるよ」

守屋「よかった…」

少し表情が暗い。

不安なんだろうな…

平手「…」

通常報告書、茜に書いてもらおうと思ってたけど退院したら愛佳に書かせようかな。

心理撹乱士のことも聞きたいけどもう少し落ち着いてからの方が良いだろうし。

平手「茜」

守屋「ん?」

平手「愛佳と茜の班は明日から二・三日は休暇ね」

守屋「え、でも…」

平手「ここ最近任務ばっかりだったでしょ?少しは休んで?これは隊長命令ね」

班の任務だけじゃなく、単独の任務だって入ってたはず。

半日で終わる任務も入ってたし、ここ二、三ヶ月丸一日休むことが無かったはずだ。

相当疲れが溜まってるだろうな。

渡邉「愛佳どうする?今日目が覚めたとしても退院来週らしいんだけど」

平手「そうなんだ、んー…」

渡邉「いい機会だし、ねるに機密情報の管理について講話でもしてもらう?」

平手「あーいいね、二つの班合同で」

守屋「でも_」

まだ、渋るか。

心理撹乱士と会ったのなら友香のことを話したはずだし、愛佳も怪我をした。

結構追い込まれてると判断して間違いない。

渡邉「茜、来週の部長会議の議題の一つに心理撹乱士のことがあるの、それまでに今回の任務の特別報告書を出してもらわなきゃいけない」

守屋「え…」

渡邉「通常報告書は愛佳に書かせることにするし、心理撹乱士のことで酷なことを言ってるのは分かってる、でも…いや、だからこそ一回心を落ち着かせてほしいの」

守屋「…」

心理撹乱士は未だに謎が多い。

友香が怪我したあのときから一年経った今でも、やっと報告書の半面が埋まるくらいの事しか分かっていない。

だからこそ今回のような心理撹乱士と直接対峙したことは貴重な情報源になる。

その情報を得るためには茜に色々思い出してもらわなきゃいけない。



志田「ん……」

渡邉「愛佳?大丈夫?」

平手「目覚めた?」

志田「理…っ佐…?平っ…ケホッ」

渡邉「待ってて、先生呼んでくる」

守屋「私が行ってくる」

渡邉「ありがとう茜」

喉が乾燥してるのか、声が掠れてる。

渡邉「水飲む?」

志田「うん…ケホッ…」

渡邉「はい、ゆっくりね」

志田「ぷはっ…ありがと…」

渡辺「失礼します」

平手「あ、梨加ちゃん」

渡邉「梨加ちゃんが主治医?」

渡辺「そうだよー」

平手「じゃ安心だね」

志田「ありがと…茜」

守屋「うんっ…」

必死に耐えてるけど涙目になってる。

安心したんだな…

渡辺「…うん、バイタルは正常だね、愛佳腕見せて」

志田「腕?痛ぁっ!」

渡辺「おっと、気をつけて」

ベットの柵に腕をぶつけた愛佳。

やっぱりバカだ。

志田「梨加ちゃん、上村はどうだった?」

渡辺「無事だよ、手術も成功した」

志田「そっか、よかった…」

渡辺「腕も…大丈夫だね、神経にも異常は見られないし来週には退院して通院に切り替えよう」

渡邉「任務はしばらく駄目ね」

志田「えーそんなー…」

ドタドタドタドタ…

ガラッ

原田「愛佳っ!!」

渡邉「葵、ここ病院」

原田「あっ…ごめんなさい」

志田「葵、おいで」

原田「愛佳っ…」

志田「なんで泣くのよ、言っただろー?死なないって」

原田「だってっ…」

愛佳を気遣ってか、なかなか近づこうとしない葵。

渡邉「ほーら」

理佐に背中を押されてやっと愛佳の目の前に来た。

原田「うわぁぁぁ…」

志田「よしよし」



渡邉said

渡邉「愛佳」

志田「ん?」
葵が一通り泣いて落ち着いたのを見て、思い出した。

渡邉「これ、返すね」

愛佳の階級手帳。

書かれていた暗号は綺麗に消されている。

志田「ああ…」

渡邉「屋上に狙撃手がいるのは見えてたんだけど、持ってた銃じゃ届かなくて、ごめん…」

志田「そこは結果オーライ、小林少佐に助けられた…後でお礼言いに行かなきゃ」

渡邉「一緒に行こうよ、はぁ…自動小銃に変えようかなぁ…」

志田「えー、理佐はそのままリボルバーでいいよ、カッコイイし」

渡邉「えー」

志田「それか中佐の時のスナイパーライフルも良かったなー」

そう、私は中佐の頃狙撃部隊に所属していた。
今でも指導を頼まれるほどには腕が良かった、と思いたい。

大佐階級になってからは全くと言っていいほど使わなくなったけど。

志田「あと、梨加ちゃんもありがとう、来てくれたのが梨加ちゃんで助かった」

渡辺「ふふっ、どういたしまして」

平手「あ、そろそろ面会時間終わるよ、帰ろうか」

渡邉「そうだね、愛佳明日も来るから」

志田「差し入れヨロシク!」

渡邉「…やっぱ来ない」

志田「嘘!嘘だから!お願いだから明日も来てぇー!」

渡邉「分かったから、騒がない!」

守屋「愛佳…色々ごめん…」

志田「その話は…今度ゆっくりしよう?」

守屋「うん…」

原田「愛佳、またね!」

志田「うん!」









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