初対面での第一声がこの言葉だった。
わたしは泣いた。しゃくりあげて泣いたものだから、質問される事に答えるのに息を整え、また質問されては涙を拭い息を深く吸い込み「ゆっくり答えていいですか?」等と言った記憶しか覚えていない。
わたしと主治医の最初の出合いだ。
お腹が出ていて顔が丸くてつやつやしている。にこやかで一瞬にしてすべてを委ねられる気がした。わたしのとなりには女医先生もぴったりと寄り添って下さった。
約5ヶ月間にわたっての右指から始まった症状で接骨院から始まり、内科、整形外科、そして入院、その後の心療内科での診察。血液検査、レントゲン、CT、MR、痛みは全身に広がり歩く事も困難な状態にまでなっていた。
痛みで眠る事もできず、それに加え原因が解らないという事がより一層不安と恐怖を増幅させていっていたのだ。
誰に何を訴えても理解してもらえなかったわたしの事がこの人はわかるんだ。
それだけでも嬉しかった。

先生は何が原因でこうなってそうなった等とは何も言わず
ただ「絶対によくなるし、痛みもとれるからね。ここには同じような症状の人が沢山来てるし安心して大丈夫だよ」
と少しもごもごとした口調でおっしゃられた。

わかって下さるんだ。
助けてもらえるんだ。


わたしは生涯この日の事は忘れないだろう。
あれから1年、身体の症状は少しずつ少しずつだけれどよくなっているように思う。
だからといってあの日からの薬の量は減るわけでもなく、逆に増えたりではあるが、心は晴れやかで先生に会えた日はいつもなら30m歩くと苦しくなる右足も不思議と痛みを感じず50m歩けたりするから不思議だ。