広島での少年時代に感じた"戦後"の匂いは歳を取るにつれて少しずつ減っていった。この少しずつ"はなかなか巧妙で、まるで波が岩を削るように、気をつけていないと減ったことにさえ気づかない。それは裏返せば、日本人の努力の賜物で、ちょうど良い言葉が見つからないけど、誇っていいことなのかもしれない。

高校の時に湾岸戦争が起こった。戦争になってもしょうがないかと何の気なしに言った僕に、原爆で家族を失った祖母がぽつんと「戦争はええもんじゃないで。」と言ったのを思い出す。初めて見た表情だった。ドキンとした。自分の言葉を恥じた。広島にいてわかったつもりの僕でさえそうなのだから今の若い世代に実感が伴わないのは想像できる。

今日だけは、広島人として、日本人として、地球人として、今の幸せが沢山の人の魂のおかげであることを再び心に刻みたい。

黙祷