TIME SNIPER

TIME SNIPER

監視統制コンピューター「ホスト」が支配する世界

完全な自由のない世界を戻すには・・・

Amebaでブログを始めよう!
翌朝、すでに施設内部にあるステルス戦闘機の格納庫に皆集まっていた。時計を見ると7:00。
これから戦闘機に乗り込み、目的地を目指す。既に皆、昨晩支給されたプロテクターと銃を携帯している。
プロテクターは全体的に動き易い作りで、素材はゴムなんだろうか?よく伸びる、伸縮性のある素材だ。
そして凄くシンプルな設計になっている。戦闘機は5台あり、各戦闘機には既に護衛がスタンバイしている。

「いよいよだな。ここからは皆、完全別行動だ。次に会うのはシルバードがいる場所だ。そん時はゆっくりお話ってわけには行かないが、ムリはするなよ。」フェイバーがそう言うと、ブライトは「敵の数も戦力も相当だろうな。気合い入れていかねぇとな。」そう言って、ヘルメットを被る。」
「とにかく、ムリはしないで目的地で会いましょう。」キャリーも腕の様子を確認しながら言った。
「フェイバー大尉、あと1台戦闘機がありますが?」アルバートが言うと後ろから声が聞こえた。
「それは私が搭乗する。」そう言ってジョージが現れた。
「こうやって会うのは始めてかな?君達のバックアップを入り口近くの作戦基地で行う。君達がミッションを完了させたら君達の場所まで行くのでそこで待機してくれ。」そう言って、ジョージはプロテクターの首元を直した。

「諸君、準備は良いかね?間もなく出発の時間だ。ここから先は私たちもここに残り見ている。全員の無事帰還を願っている。十分、警戒して作戦に当たってくれ。」大統領はそう言った。フェイバー達は敬礼する。
大統領も敬礼する。
「それでは皆、各自指定された戦闘機に搭乗してくれ。出発だ。」ベンの声がアナウンスで聞こえる。
「じゃ、次に会うのはドンパチの最中だな。」ブライトがそう言うと皆、笑った。
4人は円陣を組んだ。フェイバーが声をかけようとするとマリアが入ってくる。マリアはニコッと笑って手を差し出す。ブライトはマリアの頭を撫でる。そして皆、手を差し出す。
「ここにいる、今まさに作戦を実行しようとする俺達は皆この時代の人間じゃない。未来の人間だ。
しかし、この時代は俺達が暮らしていた未来に繋がっている。この時代の為に!!未来のために!!そして人類の為に!!」フェイバーがそう声を上げると、ブライト、キャリー、マリア、アルバートも続いて声を上げた。
「人類のために!!」そう言って、手を一旦下げると再び上げた。
そして、5人はそれぞれの戦闘機に向かった。
ブライトはメイと抱き合い、そして戦闘機にむかった。

「ねぇ、緊張してる?」キャリーが笑ってフェイバーに聞く。「そんなキャラに見えるか?」
フェイバーはニッコリ笑って答える。「気をつけてな。」フェイバーはそう言って拳を差し出す。
「お互いに。」キャリーはニッコリ笑ってその拳に自分の拳をぶつけて返事する。
そして、それぞれが戦闘機に乗り込む。護衛はそれを確認すると素早く戦闘機に乗り込んで行く。
「では、諸君。作戦の成功を祈ってる。神のご加護を。」
大統領の声が機内に響く。スタッフがそれぞれの安全チェックをする。

「出発準備に入ります。各自、スタンバイしてください。」女性の声でアナウンスが流れる。
すると戦闘機のエンジンが入り、出撃態勢にはいる。
目の前のゲートがゆっくりと開き出す。ブライトは「なぁ、お前らでも緊張とかするの?」っと護衛に聞く。
しかし、護衛は素っ気ない返事で「その様な感情はありません。」と答え無言になる。
ブライトは「へぇ~それは羨ましい事だ。」そう言って前を見る。そして一言言う。
「でもさ、コミニュケーションって必要だと思うぜ。」そう吐いた。

一方、部隊Aの戦闘機がゲート前まで移動する。そしてブースターが点火される。
「部隊A、出撃します。」そうアナウンスが流れるとギュィーンと言うエンジン音と共に一気に体が後方に向けて
Gがかかり、凄まじいスピードで出撃する。B、C、Dの戦闘機も続いて出撃する。後方ではゲートがゆっくり閉まっている。「目的地までの到着時間15分です。」そうアナウンスが流れた。
そして、しばらくすると再びアナウンスが流れる。ベンだ。
「これより15分で目的地上空に到着する。目的地は山岳地帯の為、着陸ポイントが無い。君達はそれぞれのポイント上空から降下してくれ。着陸したら素早くスタートポイントで待機だ。君達を降ろしたら、その戦闘機は基地に帰還する。そこからの指示はジョージから受けてくれ。検討を祈る。」そう言ってアナウンスは終わった。そして、それぞれの機内ではモニターを見ながらの作戦の最終確認がされた。
陣形の最終確認も同時にされ、各自が万全の態勢に入った。

そして、アナウンスが流れる。

「目的地上空に到着します。各自、降下準備を始めて下さい。降下が完了すると、この戦闘機は基地に帰還します。」
そして、その映像からは自分達があんなに苦労した敵を子供扱いする護衛達の
強さだけが際立って映っていた。
しばらくすると奥に映っていた建物が爆発し、黒煙を上げている。そして、ほどなく
してその場で奮闘していたフォース達が停止していく。すると、会議室にアナウンスが流れた。

”08:23:35、ネロ施設=D、完全制圧完了。フォース、その他軍用ロボット並びにコンピューター系統の停止を確認。これより全破壊ミッションに移行します”

と、アナウンスが流れた。それを聞いたベンが耳のイヤホンを押さえ答える。

「了解。周囲の警戒レベルを1段階引き上げた後に、破壊ミッションに移れ。フォース並びにその他コンピューターは組織破壊ビーム銃を使用し破壊せよ。」
そう言うと再び室内に声が響く。

”了解しました。では、ミッションに取りかかります。”

そして、護衛部隊は施設の破壊ミッションに入った。組織破壊ビームはどんどん辺りを破壊し跡形も無く消して行く。そして辺りは更地になっていく。
ものの1時間ほどで更地になり全てが消え去った。

”ミッション完了。これより帰還します。”そうアナウンスが室内に流れると、ベンが答えそして映像は消えた。

「大統領、作戦予定通りミッション開始から終了までに要した時間は3時間30分です。
こちらの被害はありません。全、護衛部隊の状態も出撃時との誤差もありません。出力レベル3の標準モードでミッションに行かせましたがこちらも予定通りです。次回のシルバード殲滅作戦ではレベル5の戦闘モードでミッションさせても、消耗は10%と考えられます。」そう報告する。

「なんだ!?こいつらこれで手を抜いてたって事か??」ブライトは驚いて聞いた。
「手を抜いたと言うのは語弊があるなブライト。彼らはそのモードにおいて常にベストを尽くす。」そう答えると、今度は大統領が聞いた。
「では、仮に戦闘モードでレベル5なら今回の作戦はどれぐらいで終わっていたと考えられる?」そう聞くとベンは腕に付けている大きな液晶パッドに何かを入力しだす。そして
「レベル5、戦闘モード状態で今回のミッションを行った場合1時間30分です。実質、30分で制圧出来る計算です。」そう答えた。

「なんだ、これじゃあ俺達の出番なんて「なさそうな感じじゃないか。」
ブライトがそう言うとベンが答えた。
「それがそうでもないぞ。ジョージがキャリー達を救出する際に使った電磁波ボールがあるだろう?あれを使われたら一瞬で全滅だ。ネロやシルバードが人間化しているなら使ってこない保証なんてどこにもないんだ。」そう言って、椅子に座った。

「そうか、あれがあったんだったな。」フェイバーがそう言うとキャリーは
「結局、最後はアナログな戦いになるかもってわけね。」そう言って、コーヒーを飲む。

「諸君、座りたまえ。」大統領がそう言うと椅子に座った。全員、近くの椅子に座った。

「シルバード殲滅作戦は明日決行する。これよりそのミッションの説明をする。」
そう言うとテーブル中央の丸い装置が光出し、山々を映し出す。

「これがシルバードが潜伏している場所だ。ここに施設がある。」
ベンがそう言うと映像がズームアップされる。そして施設内部の見取り図が表示される。
「入り口はここだ。」見取り図の一部が赤く点滅する。
「シルバードはこの施設の最深部のポイント7にいる。」そう言うと画面は地下5階までの見取り図に変わる。そして、その赤いポイントからポイント7までの道筋を線で分かり易く表示する。「施設通路の横幅は約5M。高さは5M。正方形の通路だ。であるから、戦闘はそこまで窮屈ではないと考えてくれ。しかし、1つの通路だけで行った場合もしもの事があれば全滅してしまう。その為、部隊を4部隊に分ける。部隊Aと部隊Cがこのポイントから。そして部隊Bと部隊Dがこのポイント。」そう言うと、入り口から離れた箇所が青く光る。
「このポイントはこの施設に一番近い場所だが周りは雑木林になっている箇所だ。部隊Bは作戦開始時、ここを爆破して中に潜入する。まず、部隊Aと部隊Bが作戦を開始する。そして、作戦開始から30分後に部隊Cと部隊Dが突入する。ルートはそれぞれ違うがゴールは一緒だ。部隊Aはフェイバー、部隊Bはアルバート、部隊Cはキャリー、部隊Dはブライトがリーダーだ。それぞれの部隊は5人編成だ。計20名でミッションに当たる。君たちに着く兵士は全て護衛部隊の人間で構成される。さっきも言った通りレベル5の戦闘モードの設定にするからそこまで苦労しないと考えられるが、なにせ第1側近だ。用心はして当たってくれ。そして、シルバードを見つけ次第殺す。殺した後は、施設の完全かつ完璧な破壊だ。ミッション予定時間は4時間30分。このリミットを超えた場合、フラットセキュリティー社からの増援部隊が到着してしまう。そして、君達のバックアップは全てジョージが担当する。作戦の最中でも何かあれば言うと良い。シルバード暗殺後の施設破壊時は指示に従ってくれ。以上だ。今日は、各自明日の準備に入ってくれ。
メディカルチェック等を受けてもらう。」

そうベンが言うと映像は消える。
ブライトが用意された部屋に戻るとすぐにフェイバーが来た。手にはウイスキー。
それを見てブライトは笑った。「別に怒ってねぇよ。」そう言って立ち上がり、
フェイバーを抱きしめた。フェイバーは黙っていた事、それがブライトの動揺を誘い
たくないが為だったと説明した。ブライトは頷いて「俺は恵まれていた。だから何も
孤独ではなかったんだ。ありがとう。」そう言ってフェイバーの手からウイスキーを取ると
コップにそそいでフェイバーにも渡した。フェイバーはそれを受け取り、コップをブライトと軽く合わせるとグイッと飲んだ。そして椅子に座るとフェイバーが話しを始めた。

「明日から一気に戦闘モードになるな。」そう言うとブライトも頷き答えた。

「あぁ、施設の戦いがあれだったからな。いくら新型のビーム銃とプロテクターがあると言え、また死者が出てもおかしくない。命がけだ。」

「今度の敵は側近中の側近だ。相当に激しい戦闘になるな。」

「またあんな化け物が出てくると思うとゲンナリするよ。チャドが命を張っても死ななかったんだ。結果、俺たちは佐藤に助けられたけどさ純粋に敵だったら全滅してた。」

「あぁ、あの圧倒的な戦力差がどれほど埋まるのか。未知数だ。」

そう言ってフェイバーはウイスキーを飲み干した。そしてグラスをブライトに差し出すと
ブライトはウイスキーを注ぎながら答えた。

「あの護衛は相当強いとは思うが、どうなんだろうな。」

「あぁ、しかしお前。怒られたんだったな。」そう言って笑うフェイバー。
ブライトは笑いながら首を捻るとフェイバーに
「後にも先にも護衛に、しかもロボットに怒られたのは俺だけだろうぜ。」
そう言うとフェイバーは
「またマリアに言われるネタが増えたな。」そう言って笑った。
談笑していると、2人がいる部屋の扉がノックされる。「はいよ。」ブライトが
答えると「私だ。」と言ってアイゼンの声がした。すぐさまフェイバーは立ち上がり
敬礼した。「フェイバー君。今はプライベートでここに来た。崩してくれたまえ。」
アイゼンはそう言うと、フェイバーは返事をして崩した。ブライトがウイスキーを差し出すとアイゼンは受け取り飲み干した。「ブライト、ちょっと来てくれ。」
そう言うとアイゼンは部屋を出て歩き始めた。「行ってこいよ。」フェイバーがそう言うとブライトは最後に残ったグラスに入ったウイスキーを飲み干すと後を追った。
長い廊下を歩き、辿り着いた部屋。そこに入るとベンがいた。

「お前!メイをどこにやったんだ!!」ブライトが掴み掛かろうとするとアイゼンが止め
「ブライトそうではないんだ。」そう言って、奥の扉を開いた。
その扉が開くと、豪華な部屋が現れた。バルコニーに誰かいる。
「なんだ?」ブライトがゆっくり部屋に入るとアイゼンが扉を閉めた。
「どう言う事だ?」アイゼンに問いかける。すると、その声を聞いてバルコニーにいた人間が部屋に戻って来る。「メイ!!」「ブライト!!」
2人は走って近づき、抱きしめた。

「良かった!!無事だったんだな!良かった良かった。」ブライトは力強く抱きしめた。
「あなたのお父様が私を保護してくれたの。あなたが出発してすぐよ。」メイはそう言って
ブライトにより強く抱きついた。「パパが?」そう言って振り返る。

「お前が過去に飛び立ったと知った時にな、せめてお前のフィアンセだけは守ろうと保護したんだ。ベンがお前達をその気にさす為に過剰な演出をしたみたいだが。ここにいればお前のフィアンセは無事だからな。」アイゼンはそう言って笑って部屋を出た。

「良かった。心配してたんだ。本当に無事で良かった。」ブライトとメイはソファーに座り向き合って話した。「私だって心配だったのよ?過去に行くと言って本当に目の前からいなくなった時は本当に不安だったわ。でもこうして顔が見れて本当、安心したわ。」
メイもそう答えて微笑んだ。「あなた達が今やってる事も、これから成す事も全部お父様が教えてくれたわ。」続けてメイはそう言うと不安そうな表情を見せた。
「あぁ、コレからドンドン激しくなって行くだろうな。正直、どうなるか分からない。」
ブライトもそう浮かない表情で答えた。そして、メイを見つめて
「せっかく、こうして会ったんだ。そんな話し、今は忘れよう。」そう言うとメイも笑って「そうね。間違いない。」そう言ってブライトを抱きしめた。

翌日、朝から何やら雰囲気は物ものしいものだった。
昨日、会議した部屋に皆が集まり丸い装置から映し出された映像を見ていた。
遅れて入ってきたブライトとメイは状況を掴みきれていなかった。
「何があったんだ?」そう聞くとキャリーが答えた。
「大統領の護衛部隊がネロの拠点でもあるコロラドの施設を攻撃したの。その映像よ。」
そう言って視線をメイに向けると「はーい。」そう言って首を少し曲げる会釈をした。
メイもそれと同じに答えた。フェイバーは椅子に座って見ていた。
「どうだ?ひさしぶりの熱い夜は?」そう笑って言うと、ブライトは照れ笑いして
「この映像と一緒さ、激しい戦闘さ。」そう言うとメイにつま先で蹴られる。
「無事で良かったよメイ。」フェイバーはそう言って立ち上がりメイとハグをした。
メイも「あなたがいたからブライトが無事だと思ってるわ。」そう言うと、そこにいた者は皆、クスクスと笑った。
そしてフェイバーは視線を映像に戻した。そしてブライトに言った。
「さすが大統領の護衛部隊だな。ハンパじゃない強さだ。あの護衛も相当強いハズだぞ。さっきから怪物化した人間や巨大フォースを子供扱いしてる。もうこの施設も早々に陥落するな。」ブライトは聞いた。「何人参加してるんだ?」フェイバーは答えた。
「アンドロイドの護衛が13人だ。相手は無数にいるぞ。」

ブライトは1人、屋上にあるベンチに座っていた。夕日がとても綺麗だ。
世界が混乱しているなんて嘘みたいに綺麗で、そして静かだった。
時折吹く風も心地よかった。そして、その手には手紙が握られていた。
ブライトはその手紙をゆっくりと開いた。
そこにはB5サイズの用紙にビッシリと書かれている母の字があった。

「ブライトへ

この手紙を読んでる頃、あなたはどんな男性になっているんでしょう。
貴方が背負うただならない運命。それを思うと胸が張り裂けそうになります。
孤独ではないですか?健康でいますか?貴方を思い愛してくれる人はいますか?
私はあなたのそばにいて、力になってあげたいけど貴方の顔を見れそうにありません。
貴方の成長をパパと一緒に見たかった。でもそれは叶わない願い。
だから、こうしてママは貴方を愛してるって伝えたいから手紙にしたためたの。
あなたは勇敢で、気高くて自己犠牲を厭わないパパとあなたを一心に愛し続けるママの
間に生まれたの。あなたの顔は見れないけど、こうして手紙を書いてる今も。
時々、お腹を蹴る貴方の命を感じてママは幸せよ。だから、貴方はけっして孤独ではないわ。
パパに甘えてね。私が貴方にあげれない幸せを、愛情を、パパに代わりに与えて貰う様に
ママはシッカリ頼んでるから。ちゃんと受け取ってね。そして、どんな苦難があっても
決して自分を見失わず、絶望せずに力強く生きてね。ママはあなたを常に見守ってるわ。
だからくじけないで。これから貴方が背負う運命。挫けそうになる事も絶望を感じ、
闇を感じる事もあるかもしれない。でも、あなたにはそんな運命を跳ね除けて幸せになる力と
権利があるの。変えられない運命なんてない。どんな事でも必ずそこに幸せは隠れてるの。
だから諦めないで。そして、パパをよろしくね。きっとパパの事だから貴方を助けようと
必死になってるはずよ。自分の人生全てを犠牲にしてるかもしれないわね。
でも、それも全て貴方に対する愛なのよ。理解してあげてね。最後に、あの日私達家族に
運命の手紙を渡した人物。あれは絶望の未来から来たパパだったの。これはパパには内緒よ。
絶望のうちに全てを失ったパパが私達の前に現れて手紙を残したの。後日、現れて教えてくれたわ。
ブライト、ママはずっと貴方を見守ってるわ。そしてずっとあなたのそばにいるわ。

愛するブライトへ永遠の愛を込めて 
            ママより」

ブライトはそれを見て涙を流した。なんて自分勝手に親を恨んで絶望していたのか。
こんなにも愛情を受けて何がそれ以上に不満だったのか。自分自身をブライトは恥じた。
しばらくそこで泣いているとアイゼンが現れた。
「ここにいたのか。」そう言ってブライトの前に立った。

「お前の母、カレンは聡明で優しく勇敢で強い女性だった。お前はそんな素晴らしい女性から
生まれた事を誇りに思って欲しい。」そう背を向けて言った。
ブライトも立ち上がり答えた。
「俺は今の今まで愛情もなく厄介払いに捨てられたと思っていた。どんなに家族を欲したか。
絶望を感じ、俺は親を恨んでいたんだ。でもそれは間違いだった。
決して孤独ではなかったんだ。どれほど愛されていたかパパだって・・・」
そう言うとアイゼンは振り返り涙した。
「パパだって自分の人生を犠牲にして俺を守ろうと・・・」
そう言って言葉が詰まる。アイゼンはその両手でブライトを抱きしめて涙した。
「すまなかった。本当にすまなかったブライト。」アイゼンも言葉を詰まらせる。
「愛してるよパパ。」ブライトはそう言って泣いた。
「私もだブライト。」アイゼンもそう言って泣いた。

その日の夕日は凄く赤く輝き、綺麗だった。

「では、ここまでで質問があれば答えよう。何かあれば」大統領がそう言うと
ジルが手を挙げた。大統領はジルを指した。
「実際その作戦に、まずはシルバード殲滅作戦はここにいる全員で挑むと言う事ですか?」
「いや、まず博士とマリア、君に関してはここに残り我々のサポートについて欲しい。
博士とマリアに至っては保護の観点からもここにいて我々と行動を共にしてもらう。
それ以外の者はジョージを含め、作戦に付いてもらうつもりだ。」
 

次に手を挙げたのはマリアだった。大統領はマリアを指した。
「私もシルバード殲滅作戦に参加した方が良いのではないですか?だって、シルバードを
殲滅してもデータが完全に消去出来たかの確認はどうするの?」
「それに関しては護衛にプログラムしてあるから心配いらないよ。君はここにいて、
ネロを完全に破壊する為のある”プログラム”を構築してもらいたいんだ。もはや
マザーの意思を受け継いでいるのは君しかいないんだ。分かってくれるかい?」
大統領がそう言うとマリアはニコッと笑って答えた。そして最後に手を挙げたのは
ブライトだった。皆、驚いて振り返った。扉にもたれていたブライトが体を起こして歩き出す。

「いつの間に戻ってたんだ?」フェイバーが聞くと、「たった今さ。」そう言って
イスに座った。大統領は「君の質問は大統領にかね?それとも1個人にかね?」
そう聞くとブライトはイスにもたれかかり答えた。
「俺は軍人だ。これでもね。さっきはまぁ、取り乱したが。仮に大統領に質問なら最低限の
礼儀は払うさ。」そう答えた。大統領は少し間を置いてから答えた。

「よし、じゃあ質問を聞こう。」そう言って目を瞑った。
「あぁ、さっきそこのイカつい護衛がよ、無表情で俺の肩を掴んで言うんだ。
”戻れ”ってな。当然、拒否するだろ?そしたらその護衛が言うんだよ、無表情で。
”大統領閣下は苦渋の決断の末に、お前を施設に預けたんだ。真意も知ろうとせずに
逃げるのは卑怯で臆病者だ”ってな。ロボットにいっぱしの説教されたんだ。笑うだろ?
で、質問だ。そこの護衛が言う”真意”ってのは何だ?」

大統領はジッと目を瞑ったままその質問を聞き目を開けると答えた。

「そうか、対した護衛だな。そこまで言うとはな。」そう言って笑った。ブライトも笑った。
それを見て、大統領はどこか許されたとまでは言わないが重い物が和らいだ気がした。

「私は当時はまだ地方議員だった。お前の母親であるカレンと、生まれてくるお前を
心待ちにしていたんだ。毎日が幸せだった。満ち足りた日々だった。しかし、神は私に・・・
いや、私達家族に試練を与えた。お前が生まれる2日前、あれは大雨が降る日だった。
1人の男が私達の家に訪れた。玄関先でズブ濡れになって無言で立っていた。
そして、その男が私に言うんだ。”お前達の間に生まれてくる子はただならぬ運命を背負って
生まれてくる。いずれ世界を巻き込んだ災いが襲うだろう。その子を産んではならない。”
そう言ったんだ。私達はバカらしいと扉を閉めたんだ。しかし、何か落ちる音がしたんで
扉を開けたんだがすでにその男はいなかった。そして、足元に手紙が落ちていた。

その手紙を読んだらそこに、全てが書いてあった。お前を生んだ時にカレンは出血多量で
死んでしまう事も。そしてお前が1人の男と1人の女性、小さな幼子と共に巨大な組織から
狙われる事も。そして、お前が捕らえられ殺された事で世界が破滅する事も。
全てが書いてあったんだ。

私達は悩んだ。しかし、カレンの意思は固かった。例え自分が死んでもお前を生むと。
そして、遠い将来きっとお前がお前達が未来を変えてくれる希望になると。そう信じて
お前を生んだんだ。カレンは手紙に書いてあった通りに出産時の出血多量で死んでしまった・・・。

生まれたばかりのお前を見た時の感動は今でも覚えているよ。しかし、あの手紙通りに
運命が進むならば少なくとも23年間は無事なんだ。そう考えると、なんとか運命を変えられる
かも知れない。いや、お前を死なすわけにはいかない。私が運命を変えてみせると決意したんだ。

そしてお前を施設に預けた。来るべきその時までに力を付け、その組織と対抗するに相応しい
力を持つ為に。そこから私は必死で働いた。何度か生死を彷徨う程の病気になるまで体を酷使した
事もあった。そして、ようやく私は合衆国大統領にまで上り詰めた。そして、お前達が過去に
来たと報告があった時、運命を変えてみせると再度、決意し全ての力を過去に注ぎ込んだ。
未来の大統領にまで助けを請うてな。そして、私より後の時代の合衆国大統領の協力も得て
今日がある。お前が施設に預けられている事を忘れた日なんて一度も、一度だって無い。
毎朝、朝日を見てお前を思い出し、月を見て許しを請うた。」そう涙を流して大統領、いや
アイゼンは言った。そして胸元から一枚の手紙を差し出し、ブライトに渡した。

「これはお前の母親であるカレンから預かった手紙だ。ぜひ読んでやってくれ。」
そう言って立ち上がった。
「私には許しを請う事しかお前には出来ない。」そう言うと歩き出した。
そして、「今日はここでゆっくり休んでくれ。諸君、ご苦労だった。」
そう言うと退室して行った。

部屋にはいると、そこは全面が真っ白く統一された空間。だいたいどこも真っ白だが
ここはもっと無機質な雰囲気がする。部屋はかなり広く、中央にテーブルがありそのテーブルの
中央には転送されてきた丸い装置がある。入り口を背に正面に青いスーツを着た男が座っていたが
フェイバー達が部屋に入ると立ち上がった。

「待っていたよ諸君。早速だがそこにかけたまえ。」その男がそう言って座った。
部屋にはフェイバー達と護衛2人とその男、男の後ろに立つ護衛2人のみで他には誰もいない。
フェイバー達は指示された通り、イスに座った。すると男が話し始めた。
「まずは自己紹介か。私はアメリカ合衆国大統領のアイゼン・ケリーだ。」
そう言うとすぐさまフェイバー、ブライト、アルバートは立ち上がった。しかし、大統領に
手で座れとジャスチャーされると再び座った。
「察しの良い者なら気付いているだろうか?私はそこにいるブライト・ケリーの父親だ。」
その事実に気付いていたフェイバーは別段、驚かなかったがそれ以外の者は驚いた表情でザワついた。
そして冷静なフェイバーを見てブライトが不信感を持った表情で聞いた。
「お前、知ってたのか?」フェイバーは視線を変えずに答えた。「ああ。」
「なんで言わなかった!!っと言うよりも俺の父親だと?俺は赤ん坊の頃に捨てられて
施設で育ったんだ。俺には父親はいない!!第一、今更父親面されても迷惑だ!!」
ブライトは激昂して捲くし立てた。しかし、大統領は動揺する事なく答えた。
「お前が怒るのも無理はない。確かに私はお前を捨てた。だが、今は父親としてではなく
合衆国大統領としてここにいる。個人の感情は置き、話をしたい。」
「ふざけるな!!」そう言ってブライトは立ち上がり、部屋を出ていった。

大統領は何かを考える表情を見せ、後ろにいた護衛に何かを話すと護衛は部屋を出て行った。
ブライトを追いかけたのかもしれない。そして、再び皆に視線を向けて話を続けた。
「1人いないが、話を続けたい。色々言いたい事もあるだろうがそれは後々説明させてくれ。」
「して、ここに集まってくれた諸君には改めて感謝を伝えたい。君達の協力があればこそ
この作戦は実行に移せ、未来の灯火が見えてくる。だいたいの話しも流れも諸君達は承知しているだろう。
ここでは諸君が知り得ていない情報を話し、今後の展開を考えていきたい。」
そう言うとフェイバーが手を挙げた。大統領はフェイバーを指した。
「大統領閣下、ここでの話はどこまで具体的にどれぐらい先を見た作戦ですか?」
「うむ。そこも踏まえて話しをしたい。まず、この作戦のゴールは勿論ネロの完全かつ完璧な破壊だ。
で、これからだがまずはそこにいる細川博士の助手である佐藤助手の協力を得てネロの配下である
第1の忠臣、シルバードの所在を特定した。シルバードは現在、ユタ州のスプリングヒルとプライスの
中間程にある山岳地帯に潜伏している。報告によれば、ここから動いている形跡は無いようだな。
彼はそこで何かを製作しているのではないかと言われている。何かは不明だ。具体的な場所は
そこにいる護衛にインプットしてある。えーっと、」大統領は護衛の説明をしてないのに気付き
説明しようとしたがフェイバーが既にアンドロイドだと確認していると言うと、頷いて話しを続けた。
「で、まずはシルバード殲滅作戦を実行する。ここも諸君がフラットセキュリティー社で経験
した様な壮絶な戦闘が予想される。そこで、そこの護衛も同行させる。諸君の大きな戦力になるだろう。
そして、佐藤助手が命をかけて製作した組織破壊ビームとプロテクターを諸君に配布する。
かつ、兵士も同行させる。かなり危険な任務になるだろう。
そして、無事にシルバードを殲滅したら次はフラットセキュリティー社に乗り込み、施設の破壊だ。
ここまですれば、十中八九ネロは姿を見せる。恐らくだが施設に現れるだろう。
その場でフェイバー、ブライト、キャリーを融合させようと画策してくるハズだ。
我々はそれを利用しネロを破壊する。破壊方法はそこにいる細川博士が熟知しているしこちらには
設計図もある。そしてネロを再生不能にする為、あらゆる痕跡も追跡し処分、破棄する。
そして、我々を含め未来から来た人間は皆、それぞれの時代に転送させる。
そして、各時代の責任者は装置を全て破壊。交流を根絶させる。」

そう言って大統領は水を飲んだ。

そして、約束の17:00になった。
全員、装置の前に集まる。しかし、その表情はまだ晴れなかった。
当然だ。つい先日、あれだけの事がったのだ。この先を思って考えない人間などいないだろう。

「準備は出来たか?」フェイバーが皆に聞く。皆は手で合図したり頷いたり。
「じゃ、装置にのるぞ。」そう言ってまずはフェイバーが装置に乗った。そして皆ゾロゾロと
装置に乗る。するとジョージの声が聞こえてくる。
「よし、今から転送を開始する。転送先に大統領の側近がいるから、そいつの指示に従ってくれ。」
そう聞こえると装置が光りだす。

意識が薄れていき、辺りは光に包まれる。心地良い感覚が身を包む。
そして、しばらく意識が途絶える。

気がつくとそこは広い部屋だった。その部屋の中心に装置が配置されていた。
目の前に大統領の側近が2名立っていた。
黒いスーツに身を包み、手は後ろで組んでいる。細身の男だが、雰囲気は張り詰めている。

「お待ちしておりました。大統領は既にお越しです。皆さんを大統領のいる場所まで
ご案内します。」そのうちの1人の男が言う。低い声。お腹に響くような声だ。
どこか生気の無い佇まいで、まるで機械のようだ。
「付いて来てください。」続けてそう言うと歩き出した。皆、その男の後に続いた。
もう1人の男が皆の後ろから付いてくる。

「これ、案内と言うより護送って雰囲気。」マリアが言う。

「マリア、細川様。不測の事態を想定しての事です。ご理解お願いします。」
すぐさま先頭の案内している男が後ろも振り返らずに答える。
ブライトと手を繋いで歩いていたマリアがブライトを見て舌を出しておどける。
「バカ、くだらん事話すんじゃねぇよ。お子様は。」ブライトはマリアを見てバカにした。
「あー!!バカにした!!」っとマリアが大声を出すと再び男は
「マリア、細川様。静粛にお願いします。」っと注意を促す。これには皆、失笑した。
当然、ブライトは指をさして舌を出してマリアを再びバカにした。
マリアは声には出さないが顔でブライトを威嚇した。
すると前を歩いていたフェイバーが男に聞いた。
「お前達は大統領の側近だと聞いた。しかし、なんだ、お前達からは生気と言うか人間味を感じない。
まるで機械のようだ。お前達はなんだ?」すると男はやはり振り返らずに答えた。
「私達は2082年に製作された人造人間です。人体の80%を機械で構成され、10%は
バイオ技術で構成され、10%は人間の皮膚で構成されています。」
「なに?じゃあ、お前達はアンドロイドなのか?」博士が聞き返すと男は
「はい、細川博士。私達はアンドロイドです。大統領並びにフェイバー様の護衛及び援護の為に
にこの時代に来ました。」淡々と答える。

「しかし、そこまでの技術があればネロ側も注目するだろう。」ジルが聞く。
「はい、ネロ側もこの技術を知ろうとしています。しかし、ネロ側には2082年以降の
未来から来た者はいません。したがってこの技術の取得は不可能です。我々の時代では
すでにネロは過去に消滅しています。」そう答えた。

「なんだか、希望が持てるな。」ブライトがそう言うと男は
「果たしてそうでしょうか?我々がこの過去に飛ばされた時点での事ですよ。
我々が製作された本来の目的は軍事兵器としてです。それがこの時代に来た経緯は
大統領及びあなた方の護衛です。我々がこの時代に来てから状況は常に変化して
います。恐らく我々の2082年とこの先の2082年は全く別物になっています。
現状から推察するとネロが統治する未来の可能性もあるのでは?」男はそう言った。

「しかし、ネロ側はまだ2082年の技術を得ていないのだろう?」ジルが聞く。

「はい。現時点では確認されていません。しかし、その状況が今後も変わらない保証は
ありません。」男はそう言った。

「結局、この時代で始末を付けないと終わらないって事だな。」ブライトが言う。

「その通りです。ブライト、ケリー様。どこかで終わらせないと状況は改善されません。」
男がそう言うと目の前の扉に手をかけた。

「この先に大統領がお待ちです。」そう言って扉を開けた。

そこからジョージに連絡を取ったが、なかなかコンタクトが取れなかった。
ようやくジョージから連絡があったのが、午後の16時すぎだった。
ソファーのある丸い装置に全員が集まり、ジョージを待った。ほどなくして装置が光出し
そこにジョージが現れた。

「すまなかったな。ちょっと忙しかったんだ。で、え~と佐藤から預かった武器とプロテクター
だったな。あれは確かに預かった。しかし、私も彼を信じきっていたわけではないんだ。
しかるべき場所に保管してある。とにかくあれが悪意の無い物なら量産したいんだ。これから未来に
持って言って量産するよ。まぁ、すぐに渡せるだろう。で、チャドと佐藤が死んだと聞いたが事実らしいな。
心から哀悼を捧げる。」そう言って黙祷した。そして「今から君達には大統領に会ってもらう。
ジルが言う様にネロの部下の犬を始末しないといけない。丁度、さっき報告がありその犬の所在が
分かったらしい。それは大統領から聞いてくれ。ここから忙しくなるし、激しくなる。覚悟して
作戦に挑んでくれ。17:00に装置に全員入ってくれ。大統領の場所へ転送する。」
そう言って一息付くとジョージは博士に話し始めた。

「あなたが細川博士ですね。あなたの助手の佐藤から連絡があった時は驚きました。
彼は非常に優秀だった。勇敢で、慈愛に満ちた人だった。彼の事を信じ切れなかった事を悔やみます。」

「仕方ない。彼から話されるまで事実等、誰も知らなかったのだ。」

「しかし、私は彼のメッセージを受け取りました。こうして思えば彼は英雄です。何故なら
我々に世界を救う手立てと、身を守る術を与えてくれたのですから。感謝しなくてはなりません。」

「恐らく、ネロの部下の犬の所在を突き詰めたのは佐藤か?」

「はい、その通りです博士。」

するとブライトが口を挟んだ。

「どう言う事だ?なんで佐藤が見つける事が出来たんだ?」

そう聞くと博士が答えた。

「最初の実験で使われた第1号の犬は佐藤の飼い犬だったんだ。」

「佐藤はかなり時間をかけて探していたみたいです。そして、彼が既に犬の姿を捨て人間になり
潜伏しているのを突き止めた。彼はこの時代にいる。」

「なに!この時代にいるのか?」博士は立ち上がった。

「ええ、今はまだネロと接触していないみたいですね。だからこそ、接触する前に犬を始末したい。」

「分かった。で、後の事は大統領から聞けば良いんだな?」

「はい、博士。検討を祈ります。」


そう言うとジョージとの交信が途絶えた。

「一体、ジョージは何をしているんだ。チャドがいない今、あいつがいれば心強いんだがな。」
ジルがそう言うとフェイバーは
「まだそんな時期じゃないんだろう。いずれ共に戦う事になるんだろう。それまでは俺達で戦おう。」
そう言って皆を鼓舞した。

ジョージのアジトに帰還した一行。しかし、その表情は暗く誰も口を開かなかった。
「大丈夫?何があったの?チャドは?」と言うキャリーの声に誰も答えを返さなかった。
「お客さんも増えたわね。」そう言っているマリアの返事も返さなかった。キャリーは
博士を別室のベットに寝かせるとソファーに座る一行にコーヒーを出して座った。

しばらくして、ようやくフェイバーが話し始めた。フラットセキュリティー社で起こった事、
佐藤の事、そしてアルバート、カルバン、サムも自己紹介をした。
キャリーもしばらくそれを聞いて沈黙していた。ジルは涙を流しチャドの死を悲しんだ。
「しかし、あいつは最後まで戦った。誇りに思う。」そう言って持っていたウイスキーを掲げ
飲み干した。連れて来た兵士3人はカルバン、サムに連れられ自分達の基地に帰っていった。

「あら?あなたは帰らないの?」マリアがアルバートに言った。アルバートは
「自分はフェイバーさんの護衛に付くように命じられました。任務解除の指令が無い限りは
任務につきます。」そう言って、疲れた表情をみせた。

その日は誰も多くを語らず、皆死んだように眠りについた。

翌朝、フェイバー、ブライト、アルバートが起きてくるとそこにはすでに起きていた博士がいた。
「ありがとう。君達のおかげで助かった。」博士はそう言って深々と頭を下げた。
「博士、俺達は・・・。」そう言ってフェイバーは言葉を探した。
「まず、チャドと言う青年が私を助けるせいで犠牲になった事には心を痛めている。なんて
言えば良いのか。言葉も見つからない。そして、佐藤が化物になり君達を襲った事も。最後に
君達を庇って死んだ事も聞いた。彼の名誉の為にも彼の事を話したい。」
博士はそう言って佐藤の事を語り始めた。

佐藤はマサチューセッツ工科大学を主席で卒業したエリートだった。当然、自信もあったし
当時の彼は傲慢だった。しかし、細川博士と出会い。自分よりも遥かに進んだ天才と会い
当然、苦悩もしたが彼は博士を尊敬し敬いその全てを博士と共に研究に捧げると誓った。
それから、彼は博士と共にネロを設計しマザーを設計しホストやフォース等の様々な革新的発明を
成し遂げた。その途中、彼には結婚を意識した小百合と言うフィアンセがいた。
しかし、丁度フェイバー達が過去に行った時ぐらいにネロから連絡があったと言う。
彼のフィアンセである小百合を捕らえたと。アジトの場所を言わなければ小百合を化物にすると。
彼は過去一度その化物を見た事があった。キャリーとマリアが過去に来て沢井に襲われた時、
彼はそこにいたのだ。沢井は彼の親友だった。沢井もネロに利用され死んだ事を彼は知らなかったが
この時、彼は悟った。そして、あんな化物にしないために彼は心を鬼にしてアジトをネロにしゃべった。
しかし、博士やキャリー、マリアを危険に晒すわけにはいかない。彼は自分の全ての技術を使って
ジョージを特定し助けを求めた。博士はその時、助けられなかったが必ずフェイバー達が助けに
来てくれると彼は確信していたようだ。そして、眠らされる前に彼は博士に全ての感謝と
フェイバー達に感謝と「小百合を救ってくれ」と言い残した。フェイバー達が救出にくれば
私は化物にされるだろうと。そうなれば小百合を助ける事が出来なくなると。そういい残したところで
博士は意識を失った。

佐藤も犠牲者だったのだ。それを聞いて涙を流さない者はいなかった。佐藤が化物になっても
最後の最後で自分を取り戻しフェイバー達を助けたのは彼のプライドだったのかもしれない。
皆、ウイスキーを掲げ「勇敢で慈愛に満ちた佐藤に」そう言ってウイスキーを飲み干した。

博士奪回の犠牲はあまりに大きかった。そして、その圧倒的な戦力の差も浮き彫りになった。
このままでは太刀打ち出来ないのは明白だった。何か考えなければ。
悩みフェイバー達に博士が言った。「佐藤が最後に製作していた武器がある。それは組織破壊
ビームを小型化した物と衝撃を10分の1に緩和するプロテクターだ。それを使おう」っと。
フェイバーが「それはどこにあるんだ?」そう聞くと博士は言った。

「どうやらそれはジョージと言う男に言ったらしい。」


煙が落ち着き、視界が開けてきたがそこにはもうチャドの姿は無かった。
「くそぉぉぉ!!!」ブライトが叫ぶ。アルバートも俯き下を見て唇を噛んだ。
フェイバーも言葉にならない様子で呆然とした。しかし、その視界に吹っ飛んで倒れた
佐藤を見た瞬間、正気になった。「おい!すぐにこの部屋を出るぞ!」
そして、すぐさま部屋を出た。佐藤は死んでいないのかも知れない。あれだけの爆発でも
死んでいないのか?フェイバーはだとすれば完全に殺す方法が分からなくなってしまう。
チャドが命をかけて開いた扉をくぐり抜け逃げる中、フェイバーは考えた。あれだけの攻撃でも
相打ちにはなっていないのかも知れない。もし生きてたら、このもう1つの扉の先にいるだろう
巨大フォースと最悪、挟み撃ちになりかねない。そうなったら全滅だ。考えろ。考えろ。

思考を廻らすが、すでに戦力の差は圧倒的だ。すると、目の前の大きなもう1つの扉が開いた。
「フェイバー大尉!!救出に来ました!!」兵隊がそこにいた。
「自分はカルバン2等兵であります!これより転送装置まで誘導します!」
色黒で体格はブライト並みにガッシリとして強そうだ。もう1人、同じような体格の男がいた。
名前をサムと言った。サムが博士をおんぶして抱き上げると一向は転送装置まで走った。
「ここに巨大フォースがいなかったか?」フェイバーが聞くとカルバンは
「自分が到着した時には確認出来ませんでした。恐らく南エリアにいるのでは?先ほどから凄い
被害が出てる区画です!」走りながらそう答えた。
「了解!あと、化物がもしかしたら生きている。全員に警戒する様に伝えろ!」フェイバーは続けて言った。
「了解しました。」そう言うと耳に付けたイヤホンを押さえ報告した。

「このまま無事に行けたら良いがな。」ブライトは負傷した腕を押さえながら言った。
すると突然、前方から大きな爆発音と爆発と共に兵隊5,6人が吹っ飛ばされそこから
巨大フォースが現れた。「くそ!出てきやがった!!」ブライトがそう叫びピストルを手にした。
マガジンを入れ替え、攻撃態勢に入る。カルバンも攻撃態勢に入った。博士を守る様に
フェイバーもアルバートも前方を固めた。
巨大フォースがフェイバー達に気付き、フォースに集合をかける。
そして両手のマシンガンをいきなりブッ放してきた。「うわぁぁぁ!!」そう言って避ける。
フェイバー達も応戦するが、やはり相手にならない。新たに現れた兵隊も参戦して応戦するが
そもそもの攻撃が効いていない。どんどん吹き飛ばされ攻撃されて倒れていく兵士達。
フェイバー達は持っていた爆弾を使って応戦するが対したダメージにもならない。
どんどん殺されていく兵士達。もはやどうする事も出来ない。八方塞りだ。

「こいつを何とかしないと転送装置にも行けない!」フェイバーが叫ぶ。
「どうにか考えないとな・・・。」ブライトがそう言った瞬間、後ろから大きな音が鳴る。
「佐藤だ!!!」凄い勢いで走ってくる佐藤。前方では巨大フォースが兵士をなぎ倒している。
「くそ!!最悪だ!!」ブライトが叫ぶ。佐藤は凄まじいスピードで走ってくると6人の頭上を越えて
巨大フォースに襲いかかる。「ギャオオオオオオオオ!!!!!」佐藤がうなり声を上げ
すさまじい攻撃を巨大フォースに浴びせる。巨大フォースも応戦し、辺りは暴れまわる佐藤とフォースで
ごった返していた。「おい!いまのうちに逃げるぞ!!」フェイバーが叫ぶとそこにいた全員が走り出した。
巨大フォースがそれに気付き、攻撃を加えようとすると佐藤が間に立ち身代わりになった。

「あいつ!俺達を助けてるんじゃないか!?」ブライトが後ろを見ながら言った。
「そうかもしれない。だが、同士討ちしてくれるなら助かる。今は急げ!!」
フェイバーはそう叫ぶと全員が装置に向かって走った。

佐藤とフォースの戦いは激しさを増す。生物VS機械。やはり、痛さの無い、疲れの無いフォースが
徐々に押し始める。そして遂に、フォースの肩から発射されたランチャーが佐藤の肩に直撃し
ふっ飛んでしまう。

「ついた!!」ようやく装置に到着したフェイバー達。そこにはアルバート、カルバン、サムと
他兵士3人もいた。「早く転送しろ!!」叫ぶフェイバー。すると向こうから巨大フォースが
凄い勢いで迫ってくる。「転送を開始します。」そう言って装置が光だす。

どんどん薄れて行く光景。巨大フォースが組織破壊ビームを発射する。すると装置から10M程
離れた箇所で佐藤が再び身代わりになり、佐藤は一瞬で消え去る。
再び組織破壊ビームを出す巨大フォース。
しかし、そのビームは当たる事なく皆、無事に転送された。