⑯より続き…
順不同になりましたが…
2部 お芝居 若き日の会津の小鉄
*配役*
上坂仙吉(コウサカセンキチ)*三代目鹿島順一座長
仙吉の女房 お吉*春日舞子さん
お吉の兄 銀次郎*劇責任者 甲斐文太さん
仙吉の弟分 丹後宮津の新太郎*菊章吾さん
名張屋一家
親分 名張屋新造*劇団責任者 甲斐文太さん
子分 安*菊章吾さん
子分 竹*雷鉄命さん
新撰組隊士 青田刈衛門*劇団責任者 甲斐文太さん
*あらすじ*
1幕:妙護院の墓地
花会の席で、「青二才、洟垂れ小僧」と、悪態をつかれ、恥をかかされた上坂仙吉は、弟分の新太郎を助っ人に、名張屋新造を呼び出す。
たった一人でやって来た新造に、新太郎は斬り殺され、自分は、額を割られたうえに、小指を切り落とされてしまう。
帰って行く新造の後ろ姿に、「名張屋、今にどうする。覚えてやがれ!」と叫ぶ仙吉。
2幕:仙吉の家
仙吉が、家に戻ると、女房お吉の兄の銀次郎が来ていた。
目の不自由なお吉に、酒を買いに行かせ、銀次郎と二人になる。
銀次郎は、仙吉の不甲斐無さを非難し、「お吉を連れて帰って欲しくなかったら、名張屋の首を獲れ!」と言い捨て帰って行く。
お吉が帰って来る。
「兄さんは、用を思い出し帰った。」と言う仙吉に、買って来たお酒を勧めるお吉。
「もう一杯お飲みよ。」と言うお吉に、「頭が痛い。風邪を引いたみたいで、もういい。」と断る仙吉。
「風邪は風邪でも、臆病風に吹かれたのかい。」と責めるお吉。
「知っていたのか。」と驚く仙吉に、お吉は、「会津部屋の上坂仙吉の女房だよ。」と答える。
仙吉は、「新太郎の姿を見たら、おめえの事が頭に浮かんだんだ。おめえは目が見えない。そう思うとドスを持つ手が鈍った。」と言うと、「私は、床に掲げた三味線で、身を立てる事が出来る。お前さんは、男になっておくれ。」と言うお吉。
お吉の言葉を聞き、直ぐに、名張屋新造の許へ向かおうとする仙吉を呼び止め、「目界の身で、一針一針縫い上げた白装束を着て行って欲しい。」と言うお吉。
着替え終えた仙吉とお吉は、盃を交わす。
「お吉、行って来るぜ。」言う仙吉に、「後に心が残らぬよう…」と、自らの腹を突くお吉。
3幕:街道
お吉の首を大事に抱え、名張屋一家へ向かう途中、新撰組隊士の青田刈衛門に絡まれていた男を助けた仙吉。
男は、新造の子分の竹だった。
4幕:名張屋一家
一家へ戻った竹は、親分の新造に、仔細を話し、自分を助けてくれた男を、「すぐそこに、お連れしています。」と言う。
呼ばれて入って来た男が、「名張屋!」と叫ぶ。
その男が仙吉と知り驚く新造に、仙吉は、「受取って貰いたい物を持って来たんだ。驚くんじゃないぞ。」と言い、お吉の首を差し出す。
包みを開けた新造が、「こいつは女の生首。」と驚くと、「俺の女房はな、俺を男にさせるため自らの命を絶った。」と、仙吉は言う。
差しの勝負の末、仙吉に斬られた新造。
駆け付けて来た子分たちに、「上坂仙吉に、指一つ触れると、俺が承知しないぞ。」と言うと、仙吉に事の訳を話す新造
「伊勢で花嫁修業中の娘のお京に、良い婿を見つけてやろうと思ったが、帯に短し襷に長し。そんな時、自分が、労咳と分かった。内でいなけりゃ外で探そうと、開いた花会で目に飛び込んできた男が、お前だったんだ。俺の目に叶った。目の見えないお吉と言う恋女房がいると聞いたが…男が男に惚れたのよ。奥の仏間を見てくれ。お前の小指と一緒に、兄弟分をまつっている。この命のあるうちに、早く来い、早く来いと思っていた。突いたおめえも嬉しかろうが、討たれた俺も本望だ」
それを聞き、新吉は、「親分の考えもつゆ知らず、勘弁して下さい。」と詫びる。
「三つの頼みがある。一つは、名張屋一家を束ね、一つは、娘のお京を女房にしてほしい。」と頼む新造に、「女房はお吉だけ。」と言う仙吉。
「一人娘を残していく親心。形はどうであれ、娘の行く末を見守って行ってほしい。」と言う新造に、名張屋一家とお京の事を引き受ける仙吉。
竹には、今、見た一部始終を、伊勢のお京に知らせに行くようにと、安には、和尚に、葬式の用意をするようにと言い付ける新造。
仙吉と二人切りになった新造は、「我が身を粗末にするな。大事にしろよ。残る一つは…近藤先生と同じ長曽祢入道虎徹。これから先は、会津の小鉄で売り出せよ。」と言い、刀を差し出す。
「これから先は、会津の小鉄で売り出しますぜ。」と答える仙吉。
新造は、お吉の首を抱き、「この新造、今から、お前さんを追っかけ、追い付き、きっと、お詫びするんでござんすよ。」と言う。
仙吉は、首に掛けていた数珠を外し、「これにすがってお行きなせえ。」と差し出す。
差し出された数珠にすがり旅立つ新造。
「親分!」と叫ぶ小鉄。
文太さん、名張屋新造→銀次郎→青田刈衛門→名張屋新造と、3役されました。
自分でも、今、何の役をしているのか分からなくなる…と言う様なお話でしたが、それぞれの方言を駆使された流暢な台詞回しは、凄いの一言でした。
口上
会津の小鉄*三代目鹿島順一座長
竹*雷鉄命さん
⑱へ続く…