⑲より続き…

 

順不同になりましたが…

 

2部 お芝居 特別狂言 初蕾

*配役*

茶屋「ふじむら」

茶屋女 お民*藤乃かな座長

茶屋女 お里*華乃せりなさん

茶屋女 お力*星乃ななみさん

客 大黒屋*劇団正道 司春香副座長

客*京乃そらさん

 

梶井家

主人 良左衛門*都京弥座長

良左衛門の妻 はま*光乃みな花形

息子 半之助*城麗斗副座長

半之助の乳母 お梅(お民)*藤乃かな座長

 

半之助の同僚 森田*京乃健次郎さん

お民と半之助の子 小太郎*都新太さん

 

 

*あらすじ*

1幕:茶屋「ふじむら」の座敷

大黒屋たち客が帰った後、お民の様子を見たお力は、「私も、子供を産んだ事があるから分かる。」と、お民の相手を尋ねる。

半之助が、その相手と答えたお民は、「身分が違うが、側に居れるだけで、それで良いと思った。幸せにはなれない定めなんだよ。私、大丈夫だから、私の事は放っておいて。泣く時が来ても辛抱できるから。」と言う。

血相を変えた半之助がやって来て、「同僚の森田を斬ったが、命までも取っていない。酒を飲むうちに、意見の食い違いで、いさかいになった。お民との事も、『好きなうちは会う。飽きたら別れる。』では、犬畜生呼ばわりされた。俺は、これから江戸へ行く。何年かかるか分からないが、必ず生まれ変わって帰って来る。」と言う。

だが、その言葉は、「約束ではない。」とも。

そして、「今のお前にやれる餞別だ。」と、懐の財布を、お民に差し出す。

「嫌!嫌!」と、半之助の背中にしがみつくお民。

「民、達者で暮らしてくれよ。」と、去って行く半之助。

お民は、身籠った事を言えずじまいだった。

 

2幕:茶屋「ふじむら」の一室

階段から飛び降りたお民の意識が戻る。

「私、何ともなかったの?お腹の赤ちゃん、まだ、生きてるの?死んで生まれて来るまで、何度でも、飛び降りてやる。」と言うお民を止めるお力。

「待っていろとは言えないけど、人間らしくなって戻ってきたら、一緒になろうなんて…」と言うお民に、お力は、「その子は、あんたの中で、生きてるんだよ。」と言う。

お民は、「父親の顔も知らない子なんて、産んだって可哀想だろ。」と言うと、「後の事は、私に任せてくれないか。」と言うお力。

お民は、「もう懲り懲り。二度と、人は好きにならない。とっとと、あんな男の子供なんか産んで、稼いでやる。稼いでやるんだ。」と泣き崩れる。

 

3幕:梶井家

半之助の一件以来、慎ましやかに暮らす半之助の両親。

「赤子の声がする。」と、様子を見に行くはまは、「表に、赤子が。」と抱いて戻って来る。

側に置いてあった風呂敷包みには、着替えとおむつが、2.、3枚。

へその緒書きには、名前は記されていなかった。

「貰い乳が出来るなら、この子を育ててみようと思います。」と言うはまに、「氏素性も分からぬ者を。」と反対する良左衛門だったが、その赤子を抱くと、「可愛い子じゃ。」と、顔をほころばせる。

 

4幕:梶井家

呼ばれてやって来たお力に、「素性はどうであれ、関係ありません。」と言い、小太郎と名付けた赤子の乳母捜しを頼む。

お力は、「梅と言い、歳は22。子供を置いたまま、婚家を出て…

お乳も、よく出ます。体も丈夫。」と、お民を、乳母にと連れて来る。

泣き出した小太郎に、乳を与えるお梅。

「乳をやる時は、正しい姿勢で、清らかにあげるのですよ。」と注意するはま。

 

5幕:梶井家

「うちの家風に合わせて下さい。小太ちゃんじゃありません。小太郎です。」と、厳しくお梅を躾けるはまだが、中々、馴染めない梅。

はまは、「小太郎の面倒は、今日から、私が見ます。乳をあげる時だけ、あなたにお願いします。」と、小太郎を取り上げてしまう。

 

6幕:梶井家

お梅が姿を消してしまったところに、小太郎が熱を出す。

「梅とは、きっと、心を通い合わせる事が出来ると思っていましたが…」と肩を落とすはま。

ばつが悪そうに、お梅が戻って来る。

小太郎が熱を出している事を伝え、「誰から貰い乳をしても、吐いてしまうんです。あなたに、貰い乳してかまいませんか。」と言うはま。

驚き、小太郎を抱き、乳を与えるお梅。

「小太郎、良かったですね。梅が帰って来て。小太郎には、梅がいないと駄目ですね。」と言うはまに、勝手に家を飛び出した事を詫び、「もう一度、小太郎様のお側に置いて下さい。」と頼むお梅。

「また、小太郎の面倒を見てほしい。」と頼む良左衛門とはま。

 

7幕:梶井家

「読み書きを覚えても損はない。」と、お梅に習字を教えるはま。

その手習いの手引きも半年続き、感心する良左衛門に、「乳をやる時は、清らかな正しい心で。」と、はまに言われた言葉が、分かってきたと言うお梅。

良左衛門は、お梅に、「素読を教えよう。」と言うが、それには、時間がかかる。

乳母としての役目が終わろうとしているお梅に、「もう少しここに居ませんか。せめて、小太郎が、お立ち歩きする位までは、小太郎の為に居てほしいのですよ。私たちの為にも、あなたに居てもらいたいと思っているのですよ。」と頼むはま。

お梅は、「小太郎様、これから先も、小太郎様のお側に居られるのです。」と、喜んで了承する。

 

8幕:七年後の梶井家

袴着の祝の日、「じじ様、ばば様、梅。」と呼ぶ小太郎。

袴姿の小太郎に、目を細める三人。

はまに、「梅に感謝するのですよ。」と言われた小太郎は、「梅、有難う。」と声を掛ける。

良左衛門と小太郎が、八幡神社へお参りに行こうとする。

「森田殿が来られた。」と、良左衛門が戻って来る。

それを聞き、身を隠すお梅。

「半之助殿の消息が分かりました。江戸で儒学者として活躍しておられます。今、城内にお出ででございます。半之助殿を、笑って迎えて下さい。」と頼む森田。

半之助が森田を斬った事への負い目から、首を縦に振らなかった良左衛門だったが、森田の熱心な願いに、「よう、知らせて下された。」と、頭を下げる。

森田が、吉報を知らせに戻って行く。

「はま。」「あなた。」と、良左衛門とはまは、半之助が帰って来ることを喜ぶ。

 

9幕:日和山の一本の梅の木の前

凧を、梅の木にひっかけてしまった小太郎。

「梅を待っていたんだ。」と言う小太郎に、「梅が、おんぶして差し上げます。お爺様から頂いた大事な凧ですものね。」と言うお梅。

無事に凧を、梅の木から外した小太郎は、「海の向こうには、何があるんだい?」と聞く。

「海の向こうは、お江戸でございます。」と答えるお梅。

「梅、俺と一緒に行こう。」

「梅は、今日を以って、お暇を頂く事になりました。」

「どうして?」

「お父様が、帰っていらっしゃいました。」

「嫌だ。嫌だ。梅と一緒に行く。」

「おじじ様も、おばば様も、待っておられます。ここまで、一人でこれたのですから、一人で帰られますよね。」

「嫌だ。嫌だ。梅と一緒に行く。」

抱き合う梅と小太郎。

その小太郎の耳元に話をするお梅。

小太郎は、凧を上げる。凧の糸を持ち、どんどん離れて行く小太郎。

「これで、良いのですよね。半之助さま。」と、声を押し殺し泣くお梅。

「いつも、ここから、お話しました。坊が、初めて、お立ち歩きした時、しゃべった時…私の様な者が、七年も、あの子の側に居れる事が出来ましたが、旦那様や、奥様を欺いていた事が心苦しかった。

旦那様、奥様、半之助様、幸せにお暮し下さい。」と泣くお梅。

はまがやって来て、「何を泣いているのですか。半之助が帰って来るのです。喜んで下さい。お民さん。」と言う。

驚くお梅に、最初から、小太郎の母親ではないかと感じていた事を伝え、「どうして、私が、あなたに厳しくしたのか、もう分かってくれたでしょう。」と言う。

「私の様な者が…」と言うお民に、「今まで頑張ってきたのは、半之助を思う気持ちからではないのですか。この梅にも、また蕾が膨らみかけています。どの蕾も、去年散った事を忘れさすように、生き生きとしているじゃありませんか。民さん、よく辛抱なさいましたね。」と言うはま。

「お母様。」と言うお民。

「祝いの準備に、先に帰っています。」と帰って行くはまの声が…「民さん、半之助が!」

お民は、はやる心を落ち着かせ、静かに半之助の許へ向かう。

 

 

初めて観るお芝居でした。

お民の身の上を心配し、尽力するお力。

普通なら、梶井家には迎え入れる事などないお民を、半之助の妻として、小太郎の母として、梶井家の嫁として、厳しく躾けるはま。

半之助に、我が身を斬られながらも、半之助が、梶井家に戻れるように願う森田。

我が子の側に居たいと思う気持ちで、はまの厳しい躾けに耐えるお民。

見終わった後、半之助とお民と小太郎の親子三人と、じじ様、ばば様の五人が仲良く幸せに暮らして行くのだろうと想像出来、ほっとし、気持ちが和む良いお芝居だなぁと思いました。

 

 

口上

都京弥座長

都新太さん

 

 

 

㉑へ続く…