⑮より続き…
順不同になりましたが…
2部 お芝居 三浦屋孫次郎
*配役*
笹川一家
親分 繁蔵*三峰達座長
茂蔵の女房*舞鼓美さん
代貸 勢力富五郎*三峰達座長
子分*花島直也さん
子分*金子亮さん
飯岡一家
親分 助五郎*昴斗真花形
三浦屋孫次郎*なおとさん
成田*金子亮さん
料理屋 女中*花島直也さん
*あらすじ*
1幕:飯岡一家
笹川繁蔵が、単身殴り込みにやって来て意見され、「俺の面子は丸潰れだ!」と怒る助五郎に、成田が、「十一屋の会合の帰りを待ち伏せし、闇討ちを。」と持ちかける。
助五郎は、「何処かに、腕の立つ面の割れていない奴はいないか。」と言うと、「孫、お前が行け!」と、白羽の矢が当たった三浦屋孫次郎。
孫次郎は、「この仕事だけは、勘弁なすっておくんなさい。七年前、繁蔵親分に、目の見えないおっかさんと頭の弱い妹を助けて貰った恩がある。」と言い断る。
しかし、「たった一回世話になった恩と、七年の恩とどちらが重いかわかるだろう。」と、助五郎に言われ、孫次郎は、止む無く引き受ける。
そして、「見届役になる。」と言う成田に、「手出しは無用。」と釘を刺す。
2幕:利根川川縁
孫次郎と成田が待ち伏せているところへ、料理屋の女中に送られ、繁蔵親分がやって来る。
女中を帰らせ、一人になった繁蔵親分に襲い掛かる孫次郎は、
「相手になるぜ。」と言う繁蔵親分に、自ら、斬られようとする。
しかし、成田が、繁蔵親分を後から刺してしまう。
成田は、孫次郎に、腕を斬り付けられ去って行く。
「親分勘弁して下さい。七年前、目の見えないおっかさんと、頭の弱い妹を助けてもらった三浦屋孫次郎でございます。あっしが、斬られるつもりで来たのですが、あの成田が…」と、打ち明ける孫次郎。
「俺の首を、獲らゃ良いじゃないか。あの成田ごときに殺されたとあっちゃ、死に切れない。俺の首を獲って、助五郎の所へ持って行き、義理が果たせたなら、俺の首を、笹川一家に持って行ってくれ。首がなければ、女房や身内が可哀想だ。」と言う繁蔵親分。
「俺には出来ない。」と言う孫次郎に、繁蔵親分は、「お前に、散り際ってやつを見せてやる。これが、笹川の繁蔵だ。」と、自らの腹を刺す。
3幕:飯岡一家
腕を斬られ帰ってきた成田に、「役立たずが。」と罵る助五郎。
そこへ、繁蔵親分の首を抱えた孫次郎が戻って来る。
助五郎は、繁蔵親分の首に、「末期の水を飲んでいないか。飲ませてやる。」と、タン唾を吐く。
孫次郎が咎めると、「親と子の盃は水だ。出て行け。」と、怒る助五郎。
孫次郎は、「ひとつ頼みがあります。繁蔵親分のその首を、あっしに渡してもらえませんか。」と頼み、助五郎に足蹴にされた繁蔵親分の首を大事に抱え、飯岡一家を後にする。
4幕:笹川一家
繁蔵親分の首捜しに躍起になっている子分達。
そこへ、代貸の勢力富五郎が、旅から戻って来る。
「首がなけりゃ、弔いを出す事も出来ない。」と言う姐さん。
「早く、親分の敵を討ちましょう。」と言う子分たち。
はやる子分たちを静め、積る話に、姐さんと部屋を出る富五郎。
「大変だ!大変だ!三浦屋孫次郎が、単身乗り込んで来やがった。」と慌てふためく子分。
黒紋付に仙台平姿で、筋を通してやって来た孫次郎を、部屋に通す富五郎。
「繁蔵親分にご焼香を。その前に、お供物を。」と、繁蔵親分の首を差し出す孫次郎。
その中を確認した富五郎は、「姐さん、親分がけえって参りました。」と、繁蔵親分の首を、姐さんに差し出す。
富五郎に、孫次郎の焼香部屋での様子を耳打ちする子分。
焼香を済ませた孫次郎を、子分が確かめると、孫次郎は、陰腹を突いていた。
「代貸さん、姐さん、あっしの話、聞いてやって下さい。」と、訳を話す孫次郎。
銚子の文蔵親分の所へ行ったなら、「俺の兄弟分で、今では飛ぶ鳥を落とす勢いの飯岡助五郎の許で、男を上げて来い。」と言われました。
目の見えないお袋と、頭の弱い妹を連れ、通りがかった大利根川の川縁で、お袋が持病の癪を起こし、お袋と妹をその場に残し、薬を買いに走りました。
戻って来ると、二人の姿がなく、人に聞いて捜したなら、笹川一家にいると…
お袋は、ふかふかの布団に寝かしてもらい、妹には、美味しい物を食べさせてもらい、小遣い銭まで与えてくれました。
その繁蔵親分に、「世話になりやした。」と礼を言いに行けば、「おめえ、一体どこに行きなさる?」と尋ねられ、「飯岡助五郎親分に世話になります。」と言ったら、「おめえ、悪い所へ…」と。
そして、繁蔵親分の首を持参したまでの経緯を話し、「陰腹ひとつ突いて来なけりゃ、親分を一家に帰す事が出来なかったこの俺の気持ちを分かってやって下さい。」と言う孫次郎。
それから、「こんなこと、頼めた義理じゃないけれど、ひとつ頼みがござんす。助五郎の所を出て、家に帰ると、お袋があっしの話を聞いてくれました。目の見えないお袋が、勝手場に行き、出刃包丁を持ち、「私がいたら、足手まといになる。立派に男のけじめを付けなさい。」と腹を突きました。
気掛かりなのは、妹のお花。
「なぁ、お花。おっかぁと俺と三人で仲良く暮らしたいか?」と聞いたなら、「うん、私、おっかぁと兄ちゃんといたい。」と。
「西の方を向き、手を合わせるんだ。」と言うと、「兄ちゃん、西ってどっち?」と。
西も東も分からねぇ18の妹を、この手で絞めて殺しましてござんす。二人の亡骸そのままに、ここまでやって来ました。
代貸さん、姐さん、二人には、何の罪もございません。二人の供養だけはしてやっておくんなさい。」と頼む孫次郎。
「義理と義理との板挟み。辛い思いをしたね。お袋さん、妹さん、それに、お前さんは、この笹川一家あげて、弔わせてもらうからね。」と答える姐さん。
その言葉を聞き、「お花!おっかぁ!」と叫び、息を引き取る孫次郎。
手を合せる笹川一家。
終演後、「なおとさん、お芝居、上手になったなぁ。」と思いましが…
元々上手だけれど、爪を出す機会がなかっただけの事かもしれないとも思えました。
陰腹突いて現れた孫次郎役のなおとさんの繊細な所作には、驚かされ、舞台を凝視しつつ、あらすじをメモしつつ、涙を拭きつつ…
他劇団では、長年の経験を積んだ座長・総座長が演じられているのを、幾度となく見ています。
引けを取らないなおとさんの三浦屋孫次郎だと思いました。
口上
勢力富五郎*三峰達座長
笹川一家子分*花島直也さん
飯岡助五郎*昴斗真花形
⑰へ続く…