⑳より続き…
 
順不同になりましたが…
 
2部 お芝居 旅鴉(夜鴉銀次 行状記)
*配役*
おせい茶屋
主人 おせい*責任者 美月里笑さん
おせいの息子 仲乗り新三*美月姫之助座長
新三の女房 お光*美月ことさん
 
横車大八一家
夜鴉銀次*藤仙太郎座長
松*藤龍都花形
竹*藤優馬さん
 
役人*初代藤ひろしさん
 
 
*あらすじ*
1幕1場:おせい茶屋前
「おっかさんに会いたい。」と男が訪ねて来る。
その男は、おせいの息子の新三だった。
「堅気になって帰って来た。」と言う新三。
新三は、6年前、勝手に祝言を決められ、それが嫌で、嫁の顔も見ずに、家を飛び出していた。
その嫁が、お光で、ずっと、おせい茶屋を手伝っていた。
「こんな綺麗な人だったら、あの時…」と、改めて、挨拶する二人。
「土産の金がなかった。その代わりに、堅気の自分には、用はない。」と、刀を母のおせいに渡す。
夫婦になって、「新三さん」「お光さん」と言う呼び方ではと…
「おまえさん」「お光」、お光の手を引き、茶屋の中へ入る二人。
そこへ、間男成敗と、仲乗り新三を捜して、夜鴉銀次がやって来る。
お茶を頼み、持って来た男こそが、仲乗り新三だったが…
夜鴉銀次は、新三の顔を知らなかった。
銀次の弟分の松と竹がやって来る。
「兄貴が、間男成敗と、新三捜しの旅に出た後、新三がやって来て、自分は手傷を負い、親分は亡くなりました。」言う竹。
「俺は新三の顔を知らない。何か目印は?」と効く銀次に、「右の耳の下に黒子が有ります。」と言う。
右の耳の黒子と聞き、お茶を持って来た男だと分かった銀次は、新三を呼び付ける。
「弟分の浅太郎が、親分の女房を間男したから斬れと言う大八親分の言葉。浅太郎を斬ると、虫の息の中、大八親分が、自分の女房を間男していたと言う。弟分の浅太郎の敵討に大八親分を斬った。」と言う新三。
「事情は何であれ、親の敵に違いはない。」と言う銀次に、「親孝行したい。少し待ってほしい。1年待ってほしい。」と言う新三。
「待ってやる代わりに、十両、用意しろ。」と言う銀次に、「今の俺では無理だ。」と答える。
銀次は、「この店を売れば、十五両か二十両にはなるだろう。」と言う。
中で話を聞いていたお光が、「私が、二度の勤めに出てでも…」と、割って入る。
そして、「ひとつお願いがあるんです。小さい頃別れた兄さんがいるんです。私に代わって、兄さんを捜して下さい。」と言い、新三に、目印のお守りを差し出す。
そのお守りを取り、自分の持っているお守りと見比べる銀次の表情が変わる。
そこへ、横車大八を斬った新三を捕えに、役人がやって来る。
お縄になろうとする新三。
しかし、自分が、仲乗り新三だと名乗る銀次。
「本当の新三はどちらだ?」と尋ねる役人の前で、松と竹を斬る銀次。
そして、自分が新三だと嘘を付く。
「親子の別れをするように、しばし時間をやる。」と言う役人。
銀次は、「おっかさん、おっかさん。」と、おせいを呼ぶ。
店の中から出て来たおせいに、自分が息子の新三の様に、今までの経緯を話す。
そして、本当の新三に、「これからは、おまえさんが、新三として、おっかぁを守って貰いたい。」と言う。
それから、新三の了承を得て、お光に尋ねる。
「名前は?」「お光」「住所は?」「高崎」「年は?」「28」
「一言だけ良い。兄弟名乗の真似事をしてやってくれないか」と頼む銀次。
「お光」「兄さん」
「苦労を掛けてすまない。有難う。もう、何も思い残しはない。これからは、ご亭主に尽くして、おっかさんに親孝行をして、幸せになるんだよ。」
 
 
銀次が、お光の捜している兄だと気が付く新三。
「どちらが仲乗り新三か、分からぬわしじゃないぞ。この冷たい十手にも、温かい血が流れている事をわすれちゃならない。」と言う役人。
引かれて行こうとする銀次に手を合わすおせい。
「お光ちゃん、幸せになれよ。ひとつ見せたい物がある。見せるつもりはなかったが…」
そう言い、お守りをお光の方へ投げる銀次。
お光は、それを拾い、「それじゃ兄さん。」と叫ぶ。
役人のはからいで、合羽を銀次に着せかけたお光は、兄の銀次にしがみ付き号泣する。
 
そんな妹お光を振り切り、引かれて行く兄の夜鴉銀次。
 
 
見せるつもりはなかったお守りを見せた銀次の心の中は、どんな思いだったのか…
見せた方が良かったのか、良くなかったのか…
 
㉒へ続く…