⑮より続き…

 

順不同になりましたが…

 

1部 お芝居 遊侠三代

*配役*

川北一家
親分 川北長治*藤仙太郎座長
代貸 長吉*美月姫之助座長
子分 政吉*藤龍都花形

川北一家とせなとせなの一家
親分*藤優馬さん

子分*美月ことさん


おこも*責任者 美月里笑さん
茶店の娘*美月ことさん

 

人斬り仁兵衛*初代 藤ひろしさん


*あらすじ*

1幕:茶店前
川北長治は、生き別れの父親を捜していた。
「年の頃なら50と2、3。津軽訛りのある男」と言う事だけが手がかり。
長吉と政吉は、ひと目、長治親分に会わせてあげたいと、日々父親捜しに、奮闘していた。

茶店で、お茶とにぎりめしを頼む長治親分。

おこもが通りすがりに、長治親分の財布を盗む。
問い詰める長吉と政吉を静め、「おこもは、貰いはするが、盗みはしないと聞いたが…」と、理由を聞く長治親分。


「おこもの中には、小さな子供が沢山います。お腹が空いたよ。食べる物ない?と私にすがるんですよ。」と話すおこも。
それを聞き、長治親分は、

「これ良かったら、子供達にお腹いっぱい何か食べさせてやんな。」と、その財布を差し出す。
そして、お腹が空いているだろうと、にぎりめしも差し出す。

「名前を聞かせて下さい。」と尋ねるおこも。

「名乗るほどでもないが…役人の咎めにあった時には、川北長治から貰ったと、そう伝えてくんな。」と言い帰って行く長治親分。

その後姿に、「あれが川北長治。」と、人斬り仁兵衛に言う川北一家とはせなとせなの一家の親分。

「万事は、任せておきな。」と、後を追う人斬り仁兵衛。

 

2幕:川北一家

「おばさんに頼みがある。良ければ、この家に越して来てくれないか。俺のおっかさん代わりとして来てほしい。子供達も全部連れて来ても良い。俺の弟、妹として面倒をみる。今日から、おっかさんと言うから、長治と呼んでくれ。」と、おこもに頼む長治。


何も手掛かりなしで、長治親分の父親捜しから戻って来た長吉と政吉。

その二人に、「おっかさんが見つかった。」と言う長治親分。

そのおっかさんとは、あのおこもだった。

おっかっさんの為に、飯の仕度、風呂の仕度を頼む長治親分。

それをしぶる長吉と政吉は、長治親分を怒らせてしまう。

川北一家に、「川北の首を獲りに来た。」と、人斬り仁兵衛がやって来る。

長吉は、長治親分は不在だと、嘘を付く。
「嘘をつくと、蚊蜻蛉(カトンボ)やくざになるぞ。八丁堀の土手下で待ってると伝えろ。」と言い帰って行く人斬り仁兵衛。
政吉に、事の仔細を話し、自分が八丁堀の土手下に行くと言う長吉。

「おいらも行くよ。」と言う政吉に、「二人で行ったなら、長治親分の親御さん捜しは、誰がするんだ。」と言う長吉。

政吉は、「少し待っていてくれ。」と言い、長治親分から貰った命より大切な刀を、長吉に差し出す。

「政吉、有難うよ。」と礼を言う長吉に、「必ず生きて帰ってくれよ。」と言う政吉。

そして、長吉は、大切な盃を割り、一人向かおうとする。
その様子を聞いていた長治親分が現れる。

「お前のおっかさんからの早飛脚。そこには明日をも知れぬ重病。

最後の死に水は、堅気になった長吉に看取って欲しいと書いてあった。生きてる間の親子孝行だ。盃は水にしてやる。」と言う。

長吉は、分かった振りをするが、長治親分のみぞおちを突き、気を失わせる。

「親分、勘弁して下さい。血肉を分けた親より、渡世のの親に、命を掛ける。川北一家長吉、長々お世話になりました。」と言い、長治親分の羽織をまとい、一人、八丁堀の土手下へ向かう長吉。

「兄貴!」と叫ぶ政吉。

 

3幕:八丁堀の土手下

長吉は、長治親分の羽織をまとい、長治親分になりすまし、やって来る。

人斬り仁兵衛と刀を交えるが斬られてしまう。


長吉は、被り物を取り、自分は、あの時の代貸であると告げる。


虫の息の中…

「長治親分は、幼い時に生き別れた父親を捜している。その父親に、ひと目、会えるまでは、死なせる訳にはいかねぇ。年の頃なら50と2、3。津軽訛りのある男。それじゃあ、あんたが…」
この人斬り仁兵衛こそがが、その父親かも…と思った瞬間、長吉は止めを刺され、「親分!」と叫び息絶える。


長吉を追って、やって来た長治親分と政吉。

人斬り仁兵衛に斬りかかろうとする政吉を、「お前がかなう相手じゃない。」と制止する。

そして、「棺桶をふたつ買ってきてくれ。ひとつは、長吉。もうひとつは、俺が入るかもしれない。」と言う長治親分。

「俺が帰るまで、生きていて下さい。」と言い、走る政吉。

「長吉の馬鹿野郎。お前の敵は、俺が必ず討ってやる。そこで、良く見てろよ。」

「長吉の敵、討たせてもらうぜ。」

斬りかかる長治親分。

「似てる。年の頃なら、20と8、9。」

「年の頃なら50と2、3。それじゃぁ…」

人斬り仁兵衛は、長治親分に、自分と腹を突かそうとする。

突く事などできるはずもない長治親分。

人斬り仁兵衛は、自ら腹を突かれる。

手を差し出す人斬り仁兵衛と長治親分。

手を握り合う二人。

息を引き取る人斬り仁兵衛。

 

泣き崩れる長治親分。

 


着ていた着物を脱ぎ、人斬り仁兵衛に掛けようとする長治親分だったが…

長吉に掛けてやり、冷たくなった長吉の手をさすり、温める。


そして、長吉が着て来た自分の羽織を温め、人斬りに掛けようとする。


その時、「親分~親分~」と叫び、政吉が戻って来る。

長治親分の着物を見て、「親分~どうしてだ~」と泣き叫ぶ政吉。
その政吉に、足を見せ、生きてると言う長治親分。

長治親分の裸足の足を拭き、下駄を履かせる政吉。


「おっかぁ、俺のおとっつぁん、捜さなくて良いからな。ひとつ頼みがある。

そこに倒れている年老いた旅烏。このままにしちゃぁ、可哀想だ。

そこにある俺の羽織を掛けてやってくれないかな。

そうでもしなきゃ、浮世の義理が立たないだろう。」

 


「街道一の親分さんは、清水次郎長親分と言われるが、それにも勝ると劣らなぬ日の本一の親分さんだね。」と呟くおこも。

「とっつぁん!」と叫び帰って行く長治親分。

その言葉に、ハッと、人斬り仁兵衛と、長治親分を見つめる政吉。

全てを悟った政吉は、長吉の亡骸にすがり付き泣き崩れる。

 

 

口上

藤仙太郎座長

 

⑰へ続く…