イチゴの粒々は種ではなく果実!では赤い部分は?
2022/12/22
まずは。一般的な果樹の花のつくりを見ておきましょう
花には「おしべ」と「めしべ」があり、おしべの上には花粉を生産する「葯(やく)」という器官が、めしべの上部には花粉をくっつける「柱頭(ちゅうとう)」という器官が付いています
この柱頭に花粉が付着して受粉すると、めしべの下部の付け根にある「子房(しぼう)」が発達し、デンプンや糖分がたまって膨らみ始めます
こうしてできるのが「果実」です
さらに子房の中には「胚珠(はいしゅ)」があり、これが受精後に成長して「種子」となります
このように、花粉の受精後に子房が発達・成熟し、その中に種子を含む果実を「真果(しんか)」と呼びます
真果において重要なのは「子房のみ」が成長して果実を形成する点です
代表的な真果には、ウメやモモ、ブドウ、カキ、ミカンなどが挙げられます
つまり通常の果物の果実に関しては、子房に注意して見てもらえばいいでしょう
ところが、イチゴでは
成長の仕方がまったく違います
その理由はイチゴの花を見てみるとわかります
普通の花ではめしべは1つで、おしべが沢山ありますが、イチゴの花には中心部に100本以上の小さなめしべが密集しており、その周りを少し大きなおしべが囲んでいるのです
当然、沢山ある個々のめしべの付け根にはいずれ果実に成長する子房があり、子房の中には胚珠が一つずつ入っています
この無数にあるめしべを支えるため、土台の部分に当たる「花托(かたく)」は普段より大きくなっています
通常の植物では、めしべが受粉し、花粉菅を下って子房の中で受精に成功すると、子房が膨らみ果実となります
そしてこの膨らんだ花托は、無数にあるイチゴの子房とくっつき、私たちがよく知るツブツブの付いたイチゴの形に成長していきます
花托が大きくなると徐々にイチゴの形になる
この花托が成熟すると、イチゴの真っ赤で美味しい果肉部分となります
つまり、この赤い部分の正体は、子房が成長した果実ではなく、大きく膨らんだ花托だったのです
このように、子房以外の器官(花托)が膨らんで果実のように見えるものを、子房が発達して果実となる「真果」に対して「偽果(ぎか)」といいます
偽果には他に、イチジクやリンゴ、ナシが含まれます
赤い部分は果実ではなく、花托が大きくなった「偽果」
一方で、一つ一つの小さな子房はちゃんと成長して、中にある胚珠と種子となります
そのため厳密にいうと、イチゴの表面に広がるツブツブの部分こそが、イチゴの本当の果実なのです
よってイチゴとは「赤く膨らんだ花托の表面に沢山の果実がくっついている状態」と考えるのが正しいのです
このようなイチゴの果実は厚い果肉がなく、薄い皮の中に種子が包まれているだけなので、植物学的には「痩果(そうか)」と呼ばれます
痩果とは「果肉がなく、1個の種を持つ果実」を意味します
実はこの粒々こそがイチゴの果実
赤く膨らんだ花托は、ツブツブの痩果を保護するクッションの役割があり、痩果がたくさんある植物ほど花托が大きく成長することかわかっています
イチゴが愛らしく美味しい植物であることに変わりありませんが、こんなこと初めて知ったという人は、今年のクリスマスケーキに乗せられたイチゴを見るとき、ちょっと気分が変わるかもしれません
*画像をお借りしました
ナゾロジー より








