場面は 娘おまちと、文太郎が新郎新婦として座する部屋

 

子分達一同がそろって居る中、

代貸しの源太がまだだ、おい、誰か見てこい。と

親分。

そこへ正装した源太登場。

 

「源太、お前の席はそこだ」と、親分。

源太の後から留八。

源太は自分の隣に座れと言うが、

それを聞いて、

 

「てめぇ、何しに来やがった。この化け物!」

と、親分はじめ、皆から罵声が飛ぶ。

 

火付けをそそのかした浪人が ふてぶてしく

「お前なんざ、人が三部で化け物七部だ!失せろ!」

 

(※余談だが、昭和時代にしばしば、すごい「おブス」さんの

  事を、「ひとさん、ばけしち」 と、オジサマたちが鹹かったが、

  ここから来ているのだろうか・・・・)

 

ひど過ぎる罵声の中、腹に据えかねたのは留八より

兄貴分の源太だ。

 

事の次第を、始めから話し出す。

 

芝居の内容は、ここで止めておきます。

 

 

 

このシーンでの、長台詞の源太。

タツミ座長の弁舌さわやか、と言うより

見事な「山」を作り上げ、少しも客を退屈させるどころか、

いつまでも、この素晴らしい、心地よいリズミックな・・

(そう、そのリズムとは、大衆演劇ここにあり!!と

言う、昔からのリズムだが。)

その中に、浸っていたい気分にさせてくれる。

 

 

それは、人の気持ちをひっぱり、魅了し

芝居の中へ、引き込み、巻き込む。

あたかも、その場に居合わせて居る気にさせて

くれる、この芸は、そんじょそこらの者には

おいそれとは真似できまい。

 

ここに、改めてタツミ劇団両座長の技量の高さを見た

思いだった。

 

 

シーンの中で、何度か兄弟分の二人の絆を見る。

それが、実際の兄弟で演じるので、そこかしこで

オーバーラップして見えて、芝居だけでない部分での

感動もあったのが、何とも素晴らしい経験だった。

 

 

それと、ハプニングと言って良いのか悪いのかわからないが

場が、グーーーンと緊張で張り詰めたとどめで、

親分が、留八に

「さっき、人が3部に化け物7部と言って居たが、

お前は、人が1部で化け物9部だ」

 

と言うセリフを、逆に言ってしまった。(つまり、人が9部で化け物1部と。)

見て居て「あら?」と

思った瞬間、立って背中を向けて居たタツミ座長が

ゆっくりとした動作で、腕を組み

さり気なく、しかし、抑えた怒りをこめた口調・・・で

「逆ですよ」 と言った。

 

気付いた宝さん、即座にセリフを

言い直したが、ここで、まかり間違っても客からの

笑いを取ったら、これまでの芝居はオジャンだ。

 

セリフをしっかりと、ではない、台本を完全に

頭の中と身体に叩きこんでいる優れた役者。

座長たるもの、こうであらねば・・・の見本だ。

 

そして、どう指摘するか、先ほどの源太のセリフと

心情に乗っ取った口調だったから、

気付かなかった人たちも居たろう。

それほど、自然に注意したタツミ座長に

感服。

 

受けて、即座に言い直した

宝氏も勿論、ベテランならではの事だろう。

 

「はぁ?」なんて、トンチンカンだったら

目も当てられない。

 

 

留八を演じたダイヤ座長の演技も素晴らしかった。

口惜しい!

情けない!

この気持ちをどうしたらいいんだ!!と

心身で訴える留八

 

ダイヤ座長の目からは、本物の涙が

滝のように溢れて居た。

 

こんな芝居を見せられたら、感動と共に

感謝し、惜しみない拍手を贈り、

絶賛するしかないだろう。

 

 

 

口上で、たつみ座長は、

「古くからある芝居で、色んな劇団が上演しています。

色々なパターンがあり、武士の場合もある。

 

コテコテの大衆演劇で、何年振りかで演目にした。

昔、こうしたセリフの盛り上げ方、山場の作り方を

父親から、厳しく指導されたものです。

父親が居ない今、自分が演じたものが

それで良いのかどうなのか、知るすべはないけれど・・・」

 

と言う内容の事をおっしゃっていたけれど、

代々、厳しく指導されて来たからこその今が

あるのでしょうね。

 

 

 

「昔、ある温泉センターで上演したことがあるんですが・・・

 私は、あの文太郎を演じたんですよ。、

 ああいう場所では お客様が、飲みながら見て居るんですね。

 前の方の女性客の目が だんだん、座って来て

 (真似をするので客は大笑い)

 おい、お前、殺すぞ! それで最後に切られると

 大喜び・・・」

 

口上の締めは、笑わせてスッキリ。

これもまた、お見事なり。

 

 

また、言ってしまおう。

 

たつみ演劇BOX 最高!!

だから何度でも見たくなる。

来たくなる。