皆さんにスペインの旅をあちこち紹介して来ましたが、今日はまとめてスペイン北部の見所を紹介しましょう。

スペインと言う国はヨーロッパ大陸の南西部に飛び出したような形のイベリア半島の大部分を占める大きな国です。北はフランス、南西部でポルトガルと国境を接する大陸国家です。北部では北大西洋のビスケー湾に沿って開け、南部はジブラルタル海峡をはさんでアフリカ大陸に面し、東部では地中海のバレアス海に面しています。北部の主要都市は前回紹介したサンタンデール、南部の主要都市はジブラルタル海峡に近いマラガやカディス、東部の主要都市は地中海に面したバルセロナ、そして中部高地に首都マドリッドがあります。三方を海に囲まれた国ですから、昔から多くの勇者が海洋民族として大洋に乗り出して、数々の冒険談を生み出しました。しかし同じスペインでも南と北と東では、気候も風土も生活慣習も食べ物も全く違い、これが同じ民族かと疑いたくなるほどです。

北部の北大西洋のビスケー湾に面した海岸線は、荒々しい大洋に永い年月かけて削り取られた奇岩奇勝が次から次と現れ、海岸線をドライブしているだけでも風景を充分に楽しめます。

まずはカンタブリア州の州都サンタンデールから西に向かうと、最初の見所はアルタミラの洞窟が郊外にある、サンティヤーナデルマルに着きます。

前回にちらりと触れたように、14世紀に出来た全村石造りの村です。

現代の村人も、この石作りの建物を昔と同じ生活様式で利用しながら暮らしています。上の写真は村役場の建物です。村の自治を担う大切な建物ですが、中には議場やホールもあります、立派なものでしょう。

村内の道路はびっしりと石畳が敷き詰められていて、馬車や牛車は通行可ですが、重量の重い自動車は通る事が出来ません。村の中にはたくさんのお土産店やレストランがあり、珍しい民芸品やスペイン北部の田舎料理を楽しめますから、2時間ぐらいは村内をぶらぶらと歩いてみるのも楽しいですよ。

更に海岸線を西に向かうと、以前「エルカプリチョ」でご紹介したコミージャスに着きます。

改めてスペインが生んだ天才建築家ガウディーの建てた「エルカプリチョ」の写真をご紹介しましょう。この庭には世界でただ１つのガウディーの銅像がありますから、是非銅像の脇に座ってツーショットの記念写真を撮りましょう。この建物の外壁を飾っているのが下の写真の「ひまわりとその葉」をモチーフとしたデザイン煉瓦です。

私がこの「エルカプリチョ」を買収したときには、このデザイン煉瓦の多くが剥がれ落ちてしまっていて、再現に苦労しました。往時にこの煉瓦を焼いた釜がある地方に行き、同じ粘土を使って同じ物を焼いてもらうのに、何度も実験をさせました。でも苦労の甲斐があり、やっと出来上がった再現煉瓦は当時と寸分違わず、どちらが本物か区別がつかないくらいの出来栄えでした。この煉瓦は私の日本の自宅の庭の、池の脇の煉瓦花壇に埋め込まれていますが、今もって誰もそれがガウディーのデザインだとは気が付きません。

コミージャスから更に西に進むと、古い歴史を誇る港町、サンビセンテに着きます。この辺りでは有数の漁港があり、レストランに改装をした「エルカプリチョ」で使う魚介類はほとんどこの街で仕入れをしておりました。以前に別の方のブログで「エルカプリチョ」を訪れた日本の方が、料理の味はいまいちと書いてあるのを読みましたが、私も同感。かつての経営者である私が料理の味はいまいちと言うのも変ですが、実は日本人の舌には合わないと言う意味で言っているのであって、決して地元のスペイン人から敬遠されているのではありません。日本人の味覚から言うと全てが塩辛く感じるのです。何度もシェフと話をして、味付けを変えてみようと試みたのですが、私の好みの塩加減にすると、スペイン人のお客様からは評判が悪くなってしまうのです。民族性の違いによって味付けの好みが全く違う事を改めて実感をしました。日本から皇太子殿下をお迎えした時には日本人の味覚に合うように苦労して調整してもらいました。ちなみにアメリカ人の好む甘いケーキの味付けは、日本人の私たちには、甘さがきつくてべっとりした食感に我慢が出来ませんが、同じような事だと思いました。まあ一度ご自身で確かめてみてください。

スペインの町を訪ねれば、どこに行っても写真のような「バール」と呼ばれる飲み屋兼食事どころがありますから、そんなお店に飛び込んで地元の人と一緒に地酒を味わいながら、田舎料理を楽しむのも１つの旅の楽しみ方かも知れません。またお祭り好きで陽気なスペイン人ですから、写真のようにたまたま訪れた街でお祭りに出くわした時には、飲めよ食べろのご馳走攻めで参ってしまった経験があります。

スペイン北部は海岸線も長く、広大な地域ですからとても今日のブログだけでは紹介し切れませんが、ヨーロッパの人達、特に北欧の人達は夏休みになると燦々と輝く太陽を求めて、地続きのスペインに大勢押しかけてきます。そんな人達が感動する風景写真を紹介して今日の旅を終わりましょう。

スペイン北部は海と山と河と言う大自然が豊かに残る景勝地が数多く残り、あまり都市化や工業地化していません。豊かで情緒あるスペイン北部の旅を企画してみましょう。上の写真はスペイン北西部の街、オビエドの郊外の風景です。

では次は、スペイン南部や東部の旅をご紹介しましょう。