皆さんは、下の写真を教科書とかで見た覚えがありませんか。これはスペイン北部カンタブリア州の州都サンタンデールから西へ30kmほどにある、サンティヤーナ・デル・マルと言う小さな田舎の村の郊外にあるアルタミラの洞窟内にある、18,000年から10,000年昔の旧石器時代に、クロマニヨン人によって描かれた洞窟壁画の写真です。
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サンタンデールと言う街は、パリに似たヨーロッパの風情がふんだんに残るお洒落な街ですから、また改めてご紹介します。マドリッドやバルセロナから国内線で1時間以内ですから、余裕のあるスペイン旅行なら1泊スケジュールをとれば、簡単に行く事ができます。

さて今日は旧石器時代の歴史の勉強をしましょう。この洞窟のあるサンティヤーナ・デル・マルと言う小さな村も、世界歴史遺産に指定されている14世紀にできた古い石造りの村なのです。しかも村全体が14世紀の出来た当時のままに保存されていて、車は村の入り口までしか入れず、後は徒歩で村内見学をする訳でして、と言うことはつまり現代の村人達は、14世紀に出来た石造りの建物と街並みの中で普通に現代の生活をしている訳でして、それを見学するだけでも楽しい旅になるのです。その村から車で数分の丘の上にアルタミラの洞窟があるのです。

下の写真がサンティヤーナ・デル・マルの村の風景です。
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下の写真はアルタミラの洞窟の丘の上で、後方がサンティヤーナ・デル・マルの村です。
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この洞窟が発見されたのは1879年で、当時の領主サウストォオラが5歳の娘マリアと散歩中に偶然発見しました。洞窟の深さは270mほどあり、中には930点もの壁画が存在します。それらの壁画のほとんどが野牛、イノシシ、馬、トナカイ等の動物の絵で、獣脂、木炭、黄土、人類最古の顔料と言われるベンガラ等で描かれており、壁面の凹凸や、ボカシ手法、色の濃淡等を巧みに使って、立体的でまるで生きているような見事さです。
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しかしこの洞窟が発見されてからもしばらくは、誰もがこれが18,000年以上昔の旧石器時代のものとは認めませんでした。しかしその後ヨーロッパ各地で旧石器時代の洞窟壁画がいくつも発見されるようになり、ついに1920年フランス人の考古学者によって、旧石器時代のものと証明されました。同じ時代のものとしては、フランスのラスコーの洞窟壁画が有名ですが、壁画の完成度では遠くアルタミラには及びません。間違いなく世界一の旧石器時代の洞窟壁画といえます。洞窟の入り口から30mほどのところにある大広間と呼ばれる場所の天井には、長さ18m幅9mにわたって様々な動物の群れが描かれており、見る人に圧倒的な迫力で迫ってきます。
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約13,000年ほど昔に洞窟の入り口が崩落して、長い間封鎖されていました。それで保存状態が良かった為に、美しい壁画はほとんど無傷で残っていました。世界最高水準のデザイン力に色づけが、見る人の心を打ちます。

しかし残念ですが、見学者が多かったので二酸化炭素や照明で壁画の損傷が進んだ為に、1977年以降は一般の見学者の洞窟内への立ち入りは禁止されております。僕は幸運にも当局の特別の許可を得て三回も洞窟の最奥部まで入って見学できましたが、現在では特別の許可も1日20人までと限定されている為に、入れるのは何年先になるか分からない状態だそうです。

でも、上の写真のように洞窟の前には見学者用の博物館が出来ていて、精巧な洞窟のレプリカを体験できます。現地まで行くのが大変な人には、三重県の志摩にあるスペイン村に行くと、同様のレプリカが見られます。

是非、人類最古と言われる洞窟壁画を体験してみてください。18,000年と言う気の遠くなるような昔に、この地球上で暮らしていた人達が、素晴らしい芸術家で有ったと言う事を実感してみてください。人類の悠久の歴史を実感すると、人類の未来、地球の未来に希望が持てるようになりますよ。

前々回のお話で、イギリスからいきなりスペインに飛んでしまいましたので、ついでにスペインのお話をさせて頂きました。

ちなみに以前にお話をした、ガウディーの建てた「エル・カプリチョ」もこの直ぐ近くですから、スペイン北部も見所一杯ですよ。

ではまた次回をお楽しみに。