M-JACK ドラマのようなホントの話
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oaiko

 階段を駆け上ると、真夏の生暖かい夜の風が私を迎える。


地下はゲストDJの時間を向かえ、最高潮の盛り上がりを見せる。


すべてが、ニセモノでカタドラレタ現実だ。私は行きなれた足取りで隣のビルの階段にゆっくりと腰を落ち着かせる。


昨日からの生ぬるい現実は今日の為のものだ。


さっきキャッシャーでもめたことをやっと思い出した。


私はアーティストでもなければ、これで稼いでいるわけでもない。


ただスキなだけ。それだけ。


1時間くらい居ただろうか。


夏の生ぬるい空気も8月の終りには少し寒く感じる。


重い腰を上げ、ゆっくりと階段を下りながら悔し涙を手の甲で拭っていると、下から焦点の合わない網タイツの巻き髪の子が顔を覗き込んでくる。


「ooさん、さっきめっちゃもり上がったのにもう終わっちゃったよ。荷物取りたいんだけど。」


ロッカーではなく控え室に荷物を置いてもらえるのは知り合いが居るからで、きっと彼女たちのステイタスだ。


しかし控え室には関係者しか入れず、お目当ての“知り合い”は忙しいのが普通なので、みんな言いやすい私に頼んでくる。


それが、私の仕事の一つでもあるのだが。


 女の子の荷物は、なぜこんなに多いのだろう。


私はこういうところに遊びに来るときは、マネークリップに挟んだ1万円札とタバコをポケットに入れてくるだけだというのに。


大きなギラギラしたバックと、ジャケットを前が見えないくらい抱え、酔っ払いを潜り抜けながらさっきの階段の踊り場へとたどり着いく。


荷物を渡すとジーンズの裾が汚れて擦り切れた男の子と彼女は階段を上っていく。


きっとスニーカーはちゃんと磨いた方がいいし、ジーンズは裾を折り曲げた方がいい。


というより大切な靴やジーンズはここには身に着けてくるべきではない。


なぜなら、ここは戦場だ。私はトイレに駆け込み、リップグロスを塗りたぐっている女を掻き分けさっきの涙でにじんだ真っ黒な下まぶたを丁寧にふき取った。


「私は、自力でここまできた。いいままでも。これからも。」

バーカンを通り抜け、ブースの前まで来ると見慣れた顔が目を細めて迎えてくれた。


うれしかった。と、同時に爆音で音が聞こえてきた。音が戻ってきた。


メインの時間を終え、少し客の引いたフロアーで揺れる。さっきの悔し涙はもういいから、少しだけ強いお酒を飲まなければ。バーカンに向かうヒトの群れ。


掻き分けるのは安易で、アイコンタクトで知り合いのバーテンダーに伝えた。


カウンターからブースに目をやろうとした瞬間に、視線を捕まえられてしまった。


忘れていた。まだ大好きなジャックコークの黒い液体は飲めない


今日のゲストの接待のかわいい女の子を集めなければならなかった。


猛スピードでオーガナイザーのボス河mを見つけ二人で必死にかわいい子をフロアーからピックアップしていく。


今の子っぽいすらっとした2人組の女の子を見つけ、


「VIPルームでゲストのヒトとシャンパン飲まない?」


と聞くとすんなりついて来た。


そこで金髪の美女を連れたo村と合流した。


目が合った瞬間今日は満足のいく働きをしたと二人で確信した。


「お前はもういいからシャンパンもってこい


といわれ、バーカンに向かう。


さっきのジャックコークを止めて、シャンパンを注文し、VIPルームへと戻った。


ゲストDJは思いのほか不機嫌そうだが、それも演出なのだろうと思いあまり気にならなかった。


シャンパンを人数分グラスに注ぎ、訳の分かっていない女どもと気取ったDJに深々と頭を下げると、私は黒い液体の元へと急いだ。


私への小さなごほうびだ。


これを飲んだら赤ワインを飲むんだ。

 バーカンにたどり着く前に小太りのサングラスにストライプのシャツのボーズに捕まった。


挨拶の握手を笑顔で素早く済まそうとすると、彼は私の手を取り、


「ooちゃんどこいくの?忙しいの?久しぶりだね。$#‘&%」==“###」


と会話を進めようとしたので、一応作り笑いを続けた。


音は全く聞こえなかった。


必死の思いで、近くに居た若い女の子を巻き添えにしてスーッと逃げた。


バーカンへたどり着くと、知り合いのバーテンダーが、そっと内側から黒い液体を出してくれた。


「お疲れ様です。」


私は誰に言うでもなく言葉を発すると同時にそれを喉へ流し込んだ。


本当に疲れていた。うんざりしていた。


と同時にカニエのバースと手を上げてフロアーで叫ぶ知り合いが見えた。


私は人を掻き分けながら横に行った。


するとぼろぼろのみんなが居た。


目を瞑り、上を向いて立ちすくんだ。


音が体に染み渡り、満ちていくのが分かった。


これがあるからやっていける。


これが私がここに居る理由。



突然、o村にVIP ROOMへ呼ばれた。


ゲストDJが呼んでいるらしい。


あんなにかわいい子を集めたのに、なぜ、私が呼ばれる!?


静かに彼の横に腰を下ろすと、彼は笑顔で迎えてくれた。


実際、PLAYの時間はフロアには居なかったのだが、


「今日はありがとうございました。フロアも本当に盛り上がっていて良かったです。」


と話しをもっていった。


もういいだろうと、o村の方を見ると、大丈夫だからと口パクで返した。


笑顔で彼の方へ向き直ると、今回リリースの曲の話をしてみた。


彼は笑顔出で返し、すこし色々なアーティストの話をした。


そして、そっと耳元で、部屋番号を伝えた。


このあとは、言われなくても知っている。


みんなで解散した後に、この番号の部屋をノックすればいいだけなのだから。  


one week





今年の冬は暖かい。


寒い方が好きな私は、何だかペースを乱されていた。



怒涛の一週間。




あなたを連れてきた、あの日と同じ雨が降っている。









全てが後押ししているようだった。


私は雨女。









いつもよりゆっくりシャワーを浴びた。


彼からのメールはなかった。


呼ばれていなくても行くべきか。


後悔するのは目に見えてる。行かないべきか。



しかし、勝手に用意を始めている自分が居た。


意識と身体は少しずれている。






行かないで後悔するくらいなら、行って後悔することにした。


しかし、行くには気が引ける。







思考のループに陥り、時間はどんどん過ぎていった。


そして、淡々と用意を続ける自分が居る。


サングラスをかけ、長い髪を一つに縛り、コートの襟を立てた。







気づくと電車に乗っている。


疲れて家路につく人々。


私はどう映っているのだろうか。


私の運命との戦いは、これから始まるのだ。





私が作り出した私だけのゲーム。


運命は私が作る。


もう、後戻り出来ない。







地下鉄に乗り換え、降り立つ。


人は少なく、薄暗い町並みが迎えてくれる。


この間より、冷たい雨が降っている。


今から二年くらい前、毎月のように、ここに来ていたときのことを思い出す。


あの時の私は、今よりもっと不安定で、荒々しくて、そして美しかった。




歳を負うごとに何かに制圧され、恋愛なんてどこか遠くの出来事だった。


恋愛が出来なくて、自分がおかしいのかとも思った。


全てが通り過ぎていく人だった。










あの雨の日までは。




今日も、あの日と同じ雨が降っている。


違うのは、私の気持ちだった。


そして、雨は少し冷たく感じた。








目的地の前を、4・5回通り過ぎる。


気が付くとグルグル町を彷徨っている。


平日の深夜。


サングラスをかけた女の子ひとり。



怪しすぎる。





バーに入って少し飲んでから行く事にした。


ゆったりとした空間は少し私を落ち着かせる。


ジャックコークが沁み込んでいく。


ここ何日かまともな食事をしていない事に気づいた。


窓に映る私は、何だか疲れ果てていた。


私は一体何をしているんだ?


大暴走がおかしくて切なかった。


メールは毎日待っている。


常に待っている。


鳴らない電話は置いてくればよかった。



あと何時間か後の自分を想像しようとしたが、出来ない。


想像すると怖くてやめた。








もう、1時をすぎてしまった。








一生に何度もはないよ。こんな日。








弱い自分も、嫌いな自分もすべてを連れてキャッシャーに立つ。


名前を告げるとすんなり入れた。


深呼吸をして扉を開ける。


平日とは思えない人の量。


これなら、紛れることも簡単だと見切る。


知り合いも少ないし、まだ、誰にも気づかれては居ない。




遠くからブースを見ると、まだ彼は居なかった。


黒い液体を飲み続ける。


落ち着かない自分を見てみぬフリする。


ブースの横に君は居て、いつもの笑顔を振りまく。



久々に合う女友達にばれてしまった。


お酒を飲みながらしばらく話ていると、いつの間にか君が回していた。


サングラスの下には涙が溜まっていた。


翻弄される。


知り合いにもいいかげんバレ始め、サングラスを上げ、ブースを見つめ立ち尽くしていた。


キラキラ光るライトが眩しくて、目を瞑る。


君がフラッシュバックする。




音とお酒に酔っていた。




揺れる人。


人々は笑顔で、なんだか嫉妬する。


スローで流れるこの何日かが、私を崩す。








トイレに行き、鏡に映る自分と見つめあう。


大丈夫。大丈夫。


とつぶやく。


サングラスをかけなおし、胸を二回叩いた。





フロアに戻ろうとすると、バーカンに君が居た。


サングラス越しに君とバッチリ目が合ったが、動揺を隠し、平然と横を通り過ぎる。


友達と少し踊っては、お酒を飲んだ。




そっとバーカンの端っこで一人で飲んでいた。


遠くで回す知らないDJ。


踊る人。


全てがスローモーションで見える。


一人違う世界でもがいているようだった。


でも何だか落ち着いた。







振り返ると背中越しに君が居て、お互い言葉も交わさずただ飲んでいる。


バレているのは始めからで、そんなことどうでもよかった。


落ち着く。


君は誰かと飲み、言葉を交わす。


私はボーっとブースを見つめる。


しかし、この背中越しの空間だけは重なり合っていた。








クローズの時間が近い。


人はまばら。




君は私に言った。


「なんで、目をそらすの。」









あなたが今までここに来た事があっても知らない。


あなたの知り合いや歴史なんて知らない。















7:11



602



抱き合って眠る。



結局、側に居たかった。



何もしたくない。



君の寝顔がいとおしくて涙が出る。



幸せすぎる時間。



贅沢すぎる時間。



逢って後悔したかもしれない。



それでよかった。

































優しい雨。






そして、あなたを連れて行ってしまった。













ひとりで過ごす時間が何より好きで、大切にしてきた私。


あなたと過ごした、一瞬の静かで柔らかな時間に翻弄された。







また逢えたとしても、もう逢えないとしても、どうでもいい。






神様のいたずらに任せて。。。









whoknows



イベントの雑踏。


朝方の高速道路。


地道に降りると、そこには両側から木々の覆いかぶさってくるような道が続いていた。


その枝たちの隙間から、朝日がやさしく差し込む。


窓を開けると、春の風の匂いがした。


優しい空間。


whoknows が流れていた。





涙が流れてきた。


恋愛なんてしてはいけないと、自分を押し殺して生きることを選ぶ事にしていた。


自分を抑えることに神経を擦り減らした。


しかし、好きになりかけている自分がいた。





その葛藤を全て包み込み、吸収してくれているようだった。


木々たちは優しい。



さっきまでとは、あまりにも違う、ここちよい空間に、涙が勝手に流れ出していた。







3年前の出来事である。



このシーンに4年も居ると、あの時の自分を褒めてあげたくなる。


今の私がここに、こうやって居るのは、たくさんの人たちと、この時の自分自身が居たからのような気がする。



人間不信。  くらいがちょうどイイ。



もう、誰も傷つけたくないし、誰にも傷つけられたくなかった。









微笑みなんていらない。

あなたの歴史なんていらない。

言い訳なんていらない。

遠く離れてなんかいたくない。

でも、かかってこない電話なんかいらない。



今日は友達と少し飲んで、帰った。


あれから3日経つが、あの時の彼と過ごした 柔らかな静かな空間 の余韻が消えない。


苦しい。


苦しい夢を見ているようだ。


友達の話なんか耳をかすめていくばかりだった。


好きになり始めていることを、認めるわけにはいかなかった。




1:41

お元気ですか?




と、だけメールを送る。


またお会いしたいです。や、このあいだは、素敵な時間をありがとうございました。なんて送れなかった。



精一杯の 「お元気ですか?」 だった。




お風呂にゆっくり浸かりながら whoknowsとDiary を聞いた。


人は思い出と共に生きる。


もやもやを消そうと必死でシャワーを浴びた。


何も消えやしなかった。



お風呂を上がってもメールマークは無かった。




顔が見たかった。




レーベルのホームページを見ると、うつむいて微笑むあなたが居た。


満たされない思いは、髪の毛の雫となって手の甲に落ちた。



phot のところに new と表示されていた。


3日前がアップされていた。


たくさんの出来事がフラシュバックする。


苦しい。


しかし、たくさんの写真は少し現実味をなくしていた。


すべては画面を通して見る偽物のように見えた。








何枚もの写真が通り過ぎていった。














すると、最後に2人の写真があった。


とても優しい顔の2人がそこに居た。




びっくりするほど、自分の顔が柔らかかった。




涙が止まらなかった。





あなたと過ごした柔らかな空間が、まだ、胸の奥で燻っている。








メールはまだ来ない。


外が明るくなってきた。




Before Today

I don't want excuses.


I don't want your smiles.


I don't want to feel like we're apart a thousand miles.


I don't want your things.


But I don't want a phone that never rings.


I want your love and I want it now...


I don't want your history.


I don't want that stuff.


I want you to shut your mouth.


That would be enough.


I don't care if you've been here before.


You don't understnd-tonight.


I feel above the law, I'm coming into land.


I want you to love and I want it now.


My heart is that much harder now.


That's want I thought before today.


But I don't want a phone that never rings.


I want your love and I want it now...





言い訳なんていらない


微笑みなんていらない


遠く離れていたくなんかない


あなたの生き方なんていらない


あなたの言い訳なんていらない


でも、かかってこない電話なんていらない


欲しいのは あなたの愛 今すぐ



あなたの歴史なんていらない    そんなものいらない


あなたは黙ってくれたらいい     それでもう十分


あなたがここに以前来た事があっても知らない


あなたはわかっていないのよ 今夜は全てを超越した気分


地上に降りてくるのよ 


欲しいのは あなたの愛 今すぐ



私のハートは 強くなったのよ


そう思ってたの 昨日までは


これからも変わる事はないと思っていたの 昨日までは



でも、かかってこない電話なんていらない


欲しいのは あなたの愛 今すぐ






                                            

Diary




 


スローで流れるのは、10日の夜だった。


楽しいのか、楽しくないのか。 ただ同じ事を繰り返している。





外は思ったより暖かくて、雨が少し降っている。


雨は好きだ。



自分ではないような、自分を連れて、終電に乗る。


土曜にしては少ない電車の中で、窓に映る自分を見る。


ひどい顔だ。


鳴らない電話は置いてくればよかった。


目的の道しるべは見失った。





キャッシャーはお金を出さないで通り抜けれる。


うちのショップが協賛についてるからだ。

 

ジャックコークは頼まないでも出てくる。


なんだか、今日は酔えない。






女の子たちはいつだってかわいい。


そんなかわいい女の子には、私はなれない。


そう、何もしたくないし、誰にも逢いたくなんかない。


一人で飲むのに慣れた。 それが一番楽だ。


大勢の中にひとり。


知り合いとも挨拶程度。


ひとりは誰も傷つけないし、誰にも傷つけられない。


沈黙は大きな音が消してくれる。




突然の雨は、きっと君を連れてきたんだ。


わたしは、雨女。




私と話を続けている。紹介の後も。


全て空気が変わった。この、ゆったりした空気は私を飲み込む。


わたしは、それを隠した。


でも、君は私のお酒を飲み、それからずっと私の側に居た。


落ち着いた。


もう、傷つきたくない。


全てが悪い事の前兆の気がした。






早朝。


6:03


到着した。


2210


ここから見る神戸の夜景は最高だった。


アリシアのDiary


運命なんてないけれど、それっぽいものなら、自分で作ってみようと思った。


優しすぎる空間が怖かった。


カンビールを一カンづつ空け、音楽の話や、PVの話をした。


そして眠った。


ただ二人で寄り添って眠っただけ。




12:00にはホテルを出て現実に戻った。


ただ一人。


仕事には行く気になれなかった。




じゃあ、どれだけ後悔をしたらいい?


何を後悔しているのかは分からないが、すごく苦しくて、自分がイヤだった。




夜景はとても綺麗だった。


2210 アリシアのDiary 心地いい空間。 幸福と後悔の空間。


ため息が止まらない。







ドキドキするような出会いなんていらないもの。


ゆったりとした時間が好き。


何も話さなくても心地いいような。


今の自分は嫌い。


ウンザリする。


ウンザリする。


また、逢いたいような気のする自分にウンザリする。

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