さくらが飲んでいる特殊ミルクは、家に帰っても
援助していただけることとなった。
これで退院後も安心して飲ませてあげられる。


社会福祉法人 恩賜財団母子愛育会
http://www.boshiaiikukai.jp/


こちらでは主に先天性代謝異常がある赤ちゃんのための
特殊ミルクの援助をしているそうなのだが、問い合わせの結果
胆道閉鎖症でもミルクをいただけるとのこと。


病院から母子愛育会に申込用紙をFAXすると、必要量が
病院まで届くという流れになっている。
(ただ、主治医は胆道閉鎖症では申請できないと思っていたようで
 一度NGを言い渡された経緯有。
 支給対象となる疾患は時によって変わる可能性があるものの、
 希望する方はぜひ直接問い合わせてみられることをお勧めする。)


さくらは胆汁がうまく腸に流れないため、脂肪分が分解できない。
そのため「必須脂肪酸強化MCTフォーミュラ」という大仰な名前の
ミルクを飲んでいた。


※MCT(中鎖トリグリセリド)を主たる脂質成分として必須脂肪酸を
強化した粉ミルク。MCTは膵液や胆汁がなくても加水分解、

吸収される。
吸収が速やかであるうえ、効率よく分解されてエネルギーとなる。
(以下長いのでMCTミルクと略す。)


必殺技の名前みたいだなぁ…小学生男子が喜びそう、

なんて思っていた。

味は…おいしくないらしい。
(私はひと舐めしたことくらいしかなくよくわからないのだが
 他の患児の様子を聞くに味がよくないから飲まない

 なんてこともままあるらしい。)


さくらは味以前にそもそも飲みが良くなかったので
彼女が味をどう思っていたのかはわからずじまい。


主治医からは、吸収の観点からはMCTミルクが望ましいが、
普通乳なら飲むということであればこだわらない、飲んで
体重が増えるなら何でも構わないということだった。


市販されているMCTミルクは、350g入りで税抜3,500円。
ちなみにドラッグストアなどでよく見かける代表的なミルク
和光堂「はいはい」は800g入りで実勢価格1,600円。


なんと約4倍もするのだ。

なお350gは約2日で消費する量。
もし購入すればひと月あたり5万円以上の出費となる。
このミルクを無償で援助していただけるのは、とてもありがたい。
(なお数年前の患者家族は自腹で購入していたとのこと…。)


少しでも栄養を摂って、少しでも身体の状態をよく保って、
少しでも移植までに体重を増やしてあげることが、
今できるせめてものこと。


入院生活終盤では、ミルクは1日8回(3時間ごと)。
1回あたり160㏄用意されており、飲みたいだけ飲んで!という
スタンスだった。


全量飲みきれれば1,280㏄となるが、実際は飲みきれない。
最初はお腹が空いたそぶりを見せるのだが、数口も飲むと
もういらないというような表情。


力を入れなくても吸えるように哺乳瓶の中にうまく空気を

入れこんだり、時間をおいて30分後にまたチャレンジしたりと

試行錯誤を繰り返した。


だが肝硬変でだんだんと胃が圧迫されてきていることもあってか、
親が思うようにはなかなか飲むことができない。
それでも750㏄~850㏄/日の間を行ったり来たり程度の

水準だった。



退院してからはとにかく「ミルクを飲んでもらうこと」に苦しみ、
かなりのトラウマが脳に刻まれることになるが、それはまた別途。