ヒトやモノ・カネ、情報の移動などのグローバル化に伴い、犯罪も国際化してきている。犯罪組織が多国籍化し、被害者の国籍もまちまちだ。

 もはや、一国だけでは犯罪の防止もできないし、捜査も極めて困難となる。

 このため警察庁は、このほど国際組織犯罪の捜査力を高め、海外の捜査機関との連携を強化して、グローバル犯罪に対応できる捜査網を構築した。“日本版FBI(米連邦捜査局)”ともいえる。

 ロシア・マフィアや中国マフィアなどが日本に進出し、最近では国際強盗団の暗躍などが目立つ。さらに、犯罪は首都圏や近畿圏などの大都市から地方へと拡散する傾向にある。

 日本の警察組織は自治体警察のため、都道府県単位に警察本部があり犯罪を取り締まっている。また、組織も刑事、公安、生活安全というように完全な縦割りである。このため、事件発生時になかなか緊密な連携がとりにくく、情報の共有にも欠けるきらいがあった。

 そこで、危機感を強めた警察庁は全国の警察本部に国際事件の捜査を専門に扱う「対策室」を設置し刑事、公安、生活安全の3部門を一本化して、ここが国際事件を担当することにした。当然のことだろう。

 対策室では犯罪情勢を分析したり、状況によっては捜査員が他県へ越境して捜査もできたりするという。警察庁では、各警察本部が情報を閲覧できるようにデータベースをつくり、犯行グループの写真や支援組織などの情報を共有させることで、国際組織犯罪に対処する。

 また、海外の捜査機関の情報も重要であるため、国際刑事警察機構(ICPO)との連携をより一層深めるとともに、東南アジア諸国連合警察長官会合(アセアナポール)と中国、韓国との協力拡大によって、東アジアの捜査協力の枠組みの構築も目指す。

 外国の捜査機関と情報や証拠を直接交換する捜査共助条約の締結も精力的に進めている。

 現在、米国、韓国、中国、香港と条約を結び、順次発効している。さらに、ロシアや欧州連合(EU)とも条約を締結した。国際犯罪に対応するには、各国との共助条約の締結は欠かせない。

 犯罪人引き渡し条約も米国、韓国と結び、今年2月からは中国との交渉も始まった。日中間の犯罪が多いだけに、早期の締結を期待したい。

 そこで、提言したい。警察も思い切って大胆な組織改革に踏み切ってはどうか。今回の“日本版FBI”方式導入を契機に、日本もテロ対策やスパイ捜査を専門に捜査する本格的で独立した捜査、情報機関を設置する時にきている。

 米国にはFBIがあり、州にまたがる犯罪を捜査している。英国は国内のテロやスパイを摘発するMI5という強力な捜査機関を抱えている。もう、自治体単位の警察組織では対応できない時代にきているのではないか。

 FBIのような機関を警察庁とは独立させて創設するか、内閣官房内に設置するかは、慎重に議論したらよい。

 国家の安全保障や治安維持の観点からも、グローバル化時代の警察組織をどうするか、喫緊の重要課題である。(論説委員)

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