あるパン屋にて~
冷たい風が吹く12月
街の中心部では100年以上前からある時計台が時を刻んでいる
イザベラは両親と3人、その時計台が窓から臨める場所でパン屋「マリーズ」を営んでいた
店を訪れる客といえば、近隣のマダムと、美しいイザベラ目当ての若い男が多かった
確かにイザベラは若く、職人が手をかけて作った中世人形ように整った顔立ちと、髪は艶のあるブロンドの
ショートカットで、まさにマリーズの看板娘であった
ただし彼女はスーツを着て店に現れるような青年実業家には全く興味がなく、パーティーへの誘いも
すべて断る調子である
ある夕刻
街の時計台が夕方6時に6度、歴史を感じる音の鐘を鳴らすと、間もなく1人の若い男がマリーズに入ってくる
その男は常連ではあるが、いつもルンペンの様にぼろぼろのニットを着ており、店で居合わせて他の客たちは
彼がレジに向かう頃には、すでに店の扉から外へ出ているのが常だった
しかしその男に関して、レジに立つイザベラのみが唯一知り得る事があったのだが、勘定を渡すその指先には
いつも紺や灰色といった油絵具が付いているのだった
おそらくこの男は画家ではないかとイザベラは読んでいたが、それに加え、この男に惹かれているのだった
つづく~