あ、今、けっこう響くカミナリが聞こえました。光るのは見なかったけど近いのかな?


中原俊監督の手がけた『櫻の園』は新旧ふたつあるそうで、このたび両方レンタルしてきたのですが、まず1990年のほうを観ました。容姿が昭和っぽい、けど確実に私にもあった「女子校の鈍痛」と「自分がらくに呼吸できる空間がほしいという切実な欲求」がまざまざと。


伝統ある女子校、創立記念日、演劇部は毎年チェーホフの『櫻の園』を公演する、のだが今年はあろうことか創立記念日前夜に部員の杉山紀子(つみきみほ)が喫煙の疑いで補導だかなんだか。学校としては大騒ぎです。そんな生徒を出演させてまでその芝居やるべきなのかと緊急の職員会議がひらかれ、部員たちは公演中止の可能性に翻弄されながらも、毎年おんなじ演目でも演じる生徒は次々に卒業していき今年の『櫻の園』は今年3年生の先輩の、代えの利かない「1度きり」なんだと知っている。それは顧問の若い先生も知っていることで、彼女がこの学園の生徒であったころに担任だった横柄なジジイ先生(失礼w)が中止を主張するのに対し、泣きながらでも決して折れずに「来年もあるなんて理由にならない」と頑張ってくれる……


いっぽう、部員の中にも中止を淡く望んでいる生徒がいて。


公演のゆくえがわからないうちに、生徒たちの心模様、痛み、憧れ、それらが交錯してラストへとなだれこむ構成は、さすが原作が吉田秋生っていう感じです。つっかからず流れ私を飲みこんで、いとしい、なんてひと言でまとめてしまうといろいろと零れ落ちてるんだけど本当に貴重なものを観たなあと思います。


ちなみにこの作品、舞台監督役の2年生に『苺の欠片』(→感想 )の宮沢美保さんが出ています。あいかわらず愛くるしい容姿でリンゴはイチコロでした。



□追記□

午後、2008年版を観ました。特別出演にすごい俳優を迎えていたり主題歌がスピッツだったり、豪華ではあったけどスポットを当てたそうなエピソードが多すぎてかえってどれも目立たず、散漫な印象を覚えました。こんなにも手ごたえの違う作品が撮れるってどういうしかけ? 脚本の力? ちなみに私好みのほうの1990年版は「じんのひろあき」さんによるものみたいです。これからウィ○ペディアで検索かけます。