あまりの後味の悪さに呆然。


数年前にたいへん話題になっていた記憶があり、近所のレンタル店に偶然あったので借りてきました。主役はビョーク。初めて顔を見たのですが、子供みたいにあどけない印象の女性ですねぇ。


しかし彼女の演じるセルマがチェコからアメリカに移住した理由、それは「息子に遺伝している、やがて失明にいたる目を、息子だけは手術してずっと晴眼でいられるように」というシリアスな一念のため。息子のために働いて働いて、節約して暮らしているのです。そしてもうすぐ手術代が目標に達するというある日、家主が彼女を訪ねてきて……


そうするしかなかったとはいえその選択をしたのはセルマ自身、だけど、なんていったらいいのかなあ家主の夫婦あのひとたちの虚栄心のしわよせが社会的弱者であるセルマにおっかぶさってしまったような気がして。しかもあの妻は自分のために周囲が人生を狂わされたなんて気づかずに生きていくんでしょう。それが現実の理不尽な部分だという風刺にしても、気分が悪いです。陪審員も表面をなでただけで評決を下してしまうし、ひとがひとを裁くなんてちゃんちゃらおかしいなと反発心をあおられるばかり。


息子を愛し、彼のために海を渡ったセルマ。そりゃあね、安易な同情なんてうっとうしいでしょうけれども、ひとの行いに「尊い」から「卑しい」までのランク付けをしたときに「卑しい」行為で「尊い」行為を妨げることだけはさ。せめて自制しようよと。具体的には家主こんちくしょーと。


ああ、感情的になってしまった。